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若いときに つくった
地図の上の 砂の都に
いのち からがら
逃げこんだ そのとたん
がらがらと トシをとった
おくさん わたしね
まいにち あぶられ
むされて もはや
なまもので ないから
あんしんして たべて
こわれるまで かかねば
ならぬ いいわけもなく
ひたすら くちびるかんで
わたしの わたしが
ほんとうに なくなるまで
星を なくして
みすぼらしいまま
たおれるたびに 砂をつかんで
たちあがる はてしのない
夢のなかに いるとしたら
こわれた たましいの
かけらが 寄り合って
ぼんやり ひとの
かたちを つくっている
影がないので それとわかる
このじきにだけ あらわれるから
春の妖精ともよばれます
すぐにおわるけど ちゃんと悩んで
泣いたりしないと 花ひらきません
ゆっくり急げ きみたち
麦藁帽子の匂いがする
古ぼけた写真のなかで
あしあとが波にさらわれている
すてられた古時計のように
何かが少しずつ狂っている
こんがらがった平和の
リングを ひとつはずして
のぞきこむと 青空のした
コロシアムで こどもたちが
ペットを たたかわせていた
王冠で すくおうとして
おびただしく こぼれる
純血のひとの うしろのほう
丘のうえに 月が
座礁している
権威をたおせ なんて
うたいながら いじらしく
虫たちが むらがっている
大樹に
おしっこを かけた
虹の彫刻に
あこがれて 雲を
きざんでいるが
美はいつだって ぼくらを
さげすむ
月のおもてを みがいたのは
ウサギではありません
神さまに供える詩を たべてしまい
途方にくれているのも
ウサギではありません
なにもないところから
無造作に とりだされる
刺されたひとは
いかなる傷もなく
こともなげに死ぬ
明日をうたがい おそれながら
大審問の つらい夢からさめる
また朝の
灼金のひかりのなかに立ち
荒野のひつじのむれを見る
ちからのかぎり
なやんで ないて
さけんで たたかい
やぶれさった すがたのまま
なつがおわるまで たっている
荒野では道がわかりません
ヒースの丘にのぼっても
海はみえません けれど
匂いたつ まぼろしをたどって
かならず行きます きみの家に
谷の底に静かな村がある
昼の光が色あせて
働く人たちが 夢もみず
疲労のなかに眠ると
月と星が そこから昇る
われらの旅についてかたろう
われらとは わたしであってわたしでなく
すべての旅を ひきついでありつづける
おおいなるひろがり そのなかへ わたしもきえるが
われらの旅にはおわりがない
スペースシャトルの打ち上げが映っていた
アトムや鉄人28号の時代から ずいぶん経っているのに
いまどきロケット噴射とは なんて野蛮なイメージだろう
ぼくは未来からきた人のように かんがいぶかく
....
うすい月が窓までおりてきて
わたしの絶望を笑うのだった
からっぽになったところで出発だ
ほんとうの旅は いまからはじまる
なんて こともなげに言うのだった
1988年の秋に、私はそれまでの詩のかき方を精算すべく、個人詩誌「風羅坊」を創刊しました。コンセプトは、短く、平明で、身辺的であること。そこにはそれ以前に親しんできた現代詩的な構文への反発がありました ....
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