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かなしくてないているのか
さびしくてないているのか
雲の切れ間に青空
風に小さな羽根をふるわせて
うれしくてないているのか
いとしくてないているのか
透きとおった雪が流れて
目の ....
鳥が啼いてゆく
いつか、いつか、いつか、
赤い夕陽がしたたり落ちて
心を焦がす イタイホドニ
{引用=近づけばまた遠ざかり
遠ざかるとまた近づく
蜃気楼 日々は}
そしてまた ....
駆けて来る
駆けて来る
薄氷を割るように
静かなギャロップで
はるかの足並みで
銀のたてがみをひるがえし
地上へと駆けて来る
お前の目の中で火が燃えている
お前が見つめると
....
祭りの夜は渦巻く貝殻
空はずっと青かった
水の流れをずっと聞いていた
草を噛むとたちまち苦みが
口なかに広がって 星が銀河が
水のように押し寄せて来る
あれは
ケンタウルスのきら ....
裏木戸を開けると
ひぐらしがないている
あの木の下
薄暗い桜の木の下で
闇間に鼻緒が見えている
そり返った白い足の指が
細い脛が折れそうにのびて
あの時もひぐらしがないていた
....
ホリデイ
青空にはためく白い洗濯物
私は音の出ない口笛を吹きながら
遠くに走る車のきらめきを見ていた
いつか見た潮騒のようだとふと思う
あなたはまだ帰って来ない
風が気持ちいいわ 春のよう ....
誰も知らないその庭に咲く薔薇
朝一番の雨に濡れた赤い薔薇を求めて
僕はたどり着いた 足をひきずりながら
かぐわしいその香りを嗅げば幸せになると
ただひとつの愛を得られるとずっと信じていた
....
恋をするなら
声の素敵な子猫を飼って
恋しい 恋しいと啼かせます
一人の夜に膝に抱いて
小さな頭をやさしく撫でて
恋をするなら
おろしたての靴を履き
街をあてもなく歩いてみます
....
蜘蛛の巣──繊細に張りめぐらせたレースの装飾
怖いもの知らずの蝶が飛び込んで
ゆれる ゆれる
蝶の羽も絡まる糸も光っている
ゆるやかな午後の陽に なお光を保ち
目を閉じて
そっと目を閉じて欲しいのです
まぶたの裏に感じるものは
やわらかな陽の光り
それとも七色の虹のきらめき
じっとしていると
風のささやきも聞こえるでしょう
あなたの美し ....
ミランダ やさしい亜麻色の髪
青い瞳で微笑みかける
ボッティチェリの絵から抜け出た天使
裸足で草原を歩くのが似合う
ミランダ 白鳥の細い首筋
もうすぐ居なくなると告げた
はかなげな ....
霜葉ふむ皮のブーツの小気味よさこのままいつか見知らぬ冬に
窓ガラスくもる吐息にだまりこむ人のしぐさのその残酷さ
冬{ルビ薔薇=そうび}あかい棘さす指先の血のにじむ{ルビ孤悲=こい} ....
銀を光らせて
少年は輪をなげいれた
輪は的中した
{ルビ傍=かたわ}らに立つ年上の少年は
おだやかな黒い{ルビ眸=め}は
輪をとびこえて
はるかな向こうをみていた
そして
今初めて遇っ ....
押入に夕闇はつと隠れてる
「もういいかい」と「まあだだよ」とで
庭先にブランコだけがゆれていて
昼のサイレン明日はとおく
陽のひかり障子にさせば心痛み
....
{引用=───それは全宇宙での
些細な惑星衝突なのだ
おまえとわたし
という星の}
角を曲がったとたんに
猫と目があった
どこにでもいるような
ありふれた灰色猫 ....
わたしの中に棲む猫は
夜の闇のように黒い
{ルビ天鵞絨=ビロード}の艶やかな毛皮をもっている
そして
悩ましい緑の目をしている
人に媚びたりしない
いつも物陰から{ルビ窺=うかが}うように ....
水が
光のように満ちる
その上に折鶴を浮かべ
はるかなその波紋を数える