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長方形のコンクリート枠を重ねた上から
等間隔に鉄板を差し込んだだけの
チープな巣箱のために
サラリーマンは給料をつぎ込む
妻と目の開かない赤ん坊と
南向き五階のフロアを借りて
楓の巨木 ....
発泡スチロールの上にカニの羅列
軽ゆでされた朱色の甲羅
白い皮膜に覆われた瞳
蛍光灯が囁きかけても光映さず
真ん中の一匹が買い物客に浚われる
手足は凍り無抵抗
投げ込まれるかごの奥
....
超高層の120階に呼び出された
社長室までの道のりは
美人の秘書と共に在る
淡い恋とは別種の鼓動
「明日から来なくていいよ」
最悪のビジネスパターン
妻と子の笑顔が遠ざかる空想
「落ち込むことはない ....
凍結した配水管から垂れ流される
泥土のように
感情が流露する
やがて小さな川を足元に描き
虚しさに乾いた土へと吸い込まれる
誰の胸を潤すことはなく
一時的な慈愛は消えて
残るのは空振 ....
透明な障壁に守られた
箱庭の世界で
自由は素晴らしいと君は言う
なんて悲しいんだ
僕等の享受するエントロピーは
全部借り物なのに
感覚は両親から譲られた血肉
思惟は神様の従僕の言 ....
神様が創ったからくり時計
人間を鋼索しこさえた鎖と
プレスされた平たく硬い歯車が動力
地球の形をしたからくり時計
組み込まれた僕らは
自転の度に心臓がきりきり痛む
魂が上げる悲鳴に ....
雨晴れの街路を背広姿の男が歩いていた
身体の半分だけが墨汁を被ったように色濃い
彼は傘を持っていない
横脇に並ぶデパートのショーウインドー
アーチ型の小さな雨除けは
全身を雨滴から守るには不 ....