先住民の心を思い出せ
kw

長方形のコンクリート枠を重ねた上から
等間隔に鉄板を差し込んだだけの
チープな巣箱のために
サラリーマンは給料をつぎ込む

妻と目の開かない赤ん坊と
南向き五階のフロアを借りて
楓の巨木を家族だんらん見下ろす

ベランダからカラスが飛び去る
口ばしには盗品ハンガー
幹と枝の間に降り立ち
施工開始

人間の巣箱は拡張しないものの
カラスの巣はみるみる改装されてゆく

先住民の心を思い出せ 人類よ
台風 津波 地震
生存者が嘆くのは家のこと

先住民の心を思い出せ 人類よ
日干しレンガを積み 倒木を削り
その手で居場所を産めばいい


自由詩 先住民の心を思い出せ Copyright kw 2005-09-08 14:14:43
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