西野が平原を歩いていると、前方に小さな小屋が見えた。小屋には東西南北に四つのドアがあった。

西野は南側のドアから入ろうとしたが、小屋の中には入ることができず、そのまま東側のドアから出て ....
(静かなるもののかげりに
文字は ばらばらになって
ぎこちない句読点をうつのをやめた)

とぎれとぎれ斜陽誓詞をよみあかす
 きょうゆう の後の
接続を どこにも連ねることが
できない
 ....
そのころ、と言っても今でもそうなんだけど
僕の遊ぶベースは六本木で
ヒマがあるといつも
終電でやってきて始発で帰る日々を送っていて
仕事の知り合いよりもこの街の知り合いのほうが多いとい ....
おはようございます。
(みつとみ)は晴れた日が続かないと元気がなくなるようです。
そこで。

道ばたで(みつとみ)を見かけたら、
鉢にいれて、水をあげて、
晴れの日はテラスやベランダに置い ....
アスファルトにいて、
わからない、
夏、激しい群青で遊び過ぎ、その果てに、
すっ、と発狂するようにしてひどく青く、
遠ざかる空、その秋の為なのか、
或いは ....
木の蝶
歩道橋の手摺りに置いた

棒に のっかってた
口元 陽に さわり

生真面目な終わりから始まる
朝に 応えるはず

腕の中で 木に戻り
変えられた 前の顔

幾度も 聴 ....
孤独を繕う句読点を無造作に並べて
線でつなぎとめただけの街
意味のない言葉は
空白を満たし
ちからなく溢れた
(思いのほか冷たい。)
それから
未消化の確執のように
近づいて
近づい ....
夜のほつれ ほとつのあいだ
横に走るいなびかり
音もかたちもないいなびかり


森に隠れた生きものの息
道にあふれ 坂を流れ
滝のように崖から落ちる


すぎるもの す ....
ちらつかず
そ、と留まっている、あれは
振り払えぬ外灯を振り払わず
硝子に帯びたままの、あれは
蛾だよ
その在り処では
既にひとつの夏が締めくくられている
夏ではない今となっ ....
あ、あ、あ、剥がれ落ちる、私の細胞(たち)。
表面から落ちて、汚物(のようなもの)とし
て扱われて、泥の只中に乾いた破片として落
ちる。夏は天動説。私をめぐるうつし世がぐ
るぐると回る。醤油じ ....
指先で爪
らしい
爪 らしく
きちり

、血のうずく)。不安定な水晶時計(、
の公転にはなじまないけれど
今日のような雨天では
暗雲にさらされて
爪を)紅くぬる

さっと泳ぐのは ....
カズラが花をおとし
森に住む蝶が
深々と死にゆこうとする八月
砂地から
こころないひとが訪れる
こころないひとは
分銅の肩を持っており
踏み入ると
腐葉土からは
ムクゲの細かいし ....
一.

戦争を俺は知らないんだと はじめて思い知ったのは
キプロス島に ある朝突然逃げ帰った妻が いつか話した
占領の話 地下室の話 息を殺して
あいつが真似た マシンガンの ....


西野は佐川透あてに手紙を書いていた。佐川は西野の年来の友人である。

「……先日はお招きいただきありがとうございました。佐川君の知的刺激にあふれた話を聞けてとても楽しかったです……私はと ....
たとえば
地下鉄のホームにゆらめく陽炎を見ることができたり
たとえば
街中の吸い殻捨ての汚れが気になったり
そういう人だけが
私と出会えるのよ
そういう人だけが
私といても大丈夫で
そ ....
溢水の、細胞ははがれやすさに 
幾度となく   さざ波は
ついて はなれ 
たい
鶴がいなくなった
あとと、折紙

錯綜するりんかい線が と 
自由自在に満たされた溢水の頭上
絵 帆 ....
あわく光の閉じられた
空のもとを
一羽の紋白蝶が舞っていた
しばしそれは
重い熱風のあわいを
ちらりちらりと映えて
切れ切れに風を読んでいたが
霊園の奥深くへ とけていった

さて
 ....
壁には緑十字。
せわしなく響く電子音、明滅するランプ。
工場で人を動かすものは。言葉以前の。

  *

あぶらぎったシニフィエが
タンクになみなみと揺れ。
それは銀色の極太チューブに ....
そして、

めまぐるしい呼吸に
ふさがれる 漂白された個室 
あなたは白と孤独を分けいる 
つながりは水平線のほつれを装って
回廊の花びらを屋内に引き延ばし
いちまい 一枚

見た  ....
草合歓の葉陰から
かすかにもえる月を見た
藍青の波間にひかるものは
あれは はるかな昔
指から落ちた曹長石のかけら
青みをおびた涙の石の粒


もしも
月の淵から水音がしても
蠍が ....
火と踊る 少女
薄い幕の向こう側で
遊ぶシルエット

僕は触れることができない
この薄い幕さえ引き剥がすことはできないのだ
音もなく
熱もなく
おそろしく暗いゆめで
見ている
火と ....
引越をした日は、
青空だった。
近所の空き地の、
壁に、ボールをぶつけ、
グローブで受けとる。
ひとりで遊ぶわたしに、
アキラとリョウが、
笑みを浮かべ、声をかけてきた。

初登校の ....
ナルコプレシーというのは簡単に言えばどこででも突然眠ってしまうもので
私がそうなんですがこれはたとえば
アフリカのツェツェバエから伝染する眠り病なんかとは違って
ウイルスみたいなものが原因じゃな ....
海を眺望するために
首筋の汗をタオルで拭き、
どこまでも蝉の声に染まる山道を、
ふたり まだすこし歩く。

水気を含んだ草の色にさわぐ虫たち
土の匂いの蒸す、マテバシイの並木がつづくと
 ....
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=73125&from=listdoc.php%3Fstart%3D30%26cat%3D5
 気にはなっていたのですが、文 ....
 詩のことについて考える。自分が詩を書いているということについて、その意味を考える。詩を書くことに意味はあるのか? あるといえば、ある。ないといえば、ない。はっきり言えばよくわからない。だが、自分が詩 .... 「機械ってね」
「ああそうですか」
「小動物の骨の無数の結合からできていると思っていたんです」
「ほうらやっぱり……」
「易しい感じがしませんか、ほら、こう……」
「むしろなまぬるいと」
 ....
私たちはとても弱いので
ときどき何かを殺めたりもする
ぬばたまの真夜中に潜む
声を持たない涙のように

私たちはとても怖くて
目を瞑って過ちを繰り返す
陽光のまぶしさが作る
白い闇を前 ....
満月が近づくと空気が変わる
だから空を見なくてもそれがわかる
うつむいて歩くと足音が遠のき
夜はいつのまにか
重くなっている

みやみや
絵葉書の風景のように
闇が美しく固定さ ....
沈む深海の星は
{ルビ蠢=うごめ}く
ただ{ルビ蠢=うごめ}く

お前も星ならば
夜の星たちと同じように
輝やこうとはしないのか

ぐにゃり


{ルビ海星=ヒトデ}は{ルビ蠢= ....
tomoaki.tさんのおすすめリスト(102)
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