雨にかすんだ街を見ながら
少し寂しくなったので
あなたの言葉を思い出しました。
水溜りの中に
小さな小さな雨色の町があって
その町では
どんな事でも虹色に綺麗なんだ
あなたはどん ....
わたしとしては早く終わって欲しいのに
あなたはまるで厳粛な儀式に望む
いんちきくさい司祭のような面持ちで
わたしのかたちを確めてみたり
わたしの知らないかたちで動こうとする
ふだんと違う表情 ....
回転系に置ける摩擦係数の
やがて磨り減らされた軸の中心の角度によって
そのブレを増大させ
自身の遠心力により
消耗して行く事となる
廻る
換気扇がガタガタと音を立てている
油の匂 ....
時の船に揺られ
昼と夜を行き来する
神は女に出産の苦しみを
男に労働の苦しみをお与えになった
苦しむために生まれてきたのか
生きていることが苦しいのか
人の作っ ....
狭い部屋を行ったり来たり
繰り返し歩む
足音
空白の時間を埋める
思い出の時間の歪み
繰り返し泳ぐ
水音
水面を撫で廻す
花弁の空中浮遊
三秒の夢心地
四音
鳴り響くこと ....
裏通りの石畳の坂を つたう雨
硝子窓をくもらせるのは、ふたりの熱い息、
まどろみに奪われてゆく 美しい君のカラダ
枕はひとつ。
ピンクの縁取りをしたシーツとカバー
シングルベッドしか ....
大きなガラス扉
日焼けしたブラインド
貸店舗、の白い貼り紙
コンビニになりきれなかった
角の、たなか屋
殺風景な店先のコンクリートには
ただひとつ
小さな郵便ポストが生えたまま
舌 ....
真夜中には出掛けましょう
「抜け出す」後ろめたさはありません
それを叱る人もいません
昼間グランドを駆け回っていた
少年少女は今頃健全な夢の中
グランドが闇に染まったら入 ....
初夏の陽射しは 便りを運ぶ
宛名も消印も
差出人も
見当たらないけれど
懐かしさという
こころもとない手触りに
わたしは ゆっくり目を閉じて
紫陽花のさざなみに
いだかれる
....
世界のありったけの明かりに負けず
その人の背中越しに三日月が見えた
一瞬で長い腕がそれを遮る
活路を見出さなくてはね
しっとりした声で
それはそろりと湖底を撫でるよう ....
放った言葉は
宇宙葬
想われた言葉は
さようなら
糸の切れた凧のように
僕は自由ですね
されど
日々は変わらず続き
空の色さえ失っていません
その普遍性に
安堵し
途 ....
「えくぼ」
六月の風にゆれる
さくらの葉っぱ。
よく見たら
ぽつぽつ 穴があいている。
虫に食べられてしまったのだろうか?
穴は どこかの虫の命を みたして
穴は みずみずし ....
空は虹色に溶け
得体の知れない甘さが
いちめんに薫り立つ夏のゆうぐれだ
長い夏のゆうぐれだ
君の記憶が
水のように透明に
けれど水よりも濃い密度で滴ってきて
それは容易く
私の現在を侵 ....
突然、閉所恐怖症ですか、
と聞かれ
慌ててそうじゃありませんと
笑顔を見せる
笑顔を見せたって
MRI撮影室の
空洞の中に居る私の顔は
見えやしない
ただ、
むっつりした顔で答えたら ....
夜の静けさは
時折無償にわたしを切なくして
どこか遠く遠くへとわたしを急かす
その衝動に抗わずに
流されるままふらふらと
月夜の夜道をパジャマ姿で歩いたら
どこかどこかへ辿り着 ....
弱いわたしは
記憶を心の奥底深くに仕舞い込み
雁字搦めの無茶苦茶に
厳重に厳重に鎖を巻いて鍵をかけた
時折壊れた個所から漏れてくる
記憶の欠片を見ない振りして
ただ強がって茶化 ....
まぶたを突き抜けるような明るさに
耐え切れずに目を開けた
先に起きたらしいあなたは窓際にいて
煙草のけむりをほそく吐き出しながら
晴れたな、と少しうれしそうにつぶやく
目を向けた窓には ....
途切れた夏の感触
暑さにのぼせて
不意打ちをくらう
手を伸ばした先に
何があるのか
届かない光が
闇なのかどうかも
揺らぐ想いが
邪魔になる
誤魔化しただけの
答えの
蓋を開けた ....
風が吹く
僕はなびく
雲の切れ間から日の光が射し込むと
休日の街は輝きを増す
今朝は遅くまで眠りすぎた
午後の喫茶店のテラスで
コーヒーを飲みまどろむ
空を賑 ....
自殺した 友の魂が
あちらこちらで まだ 蠢いている
その
死
を
喰ってでも 生きていかねばならぬ
この
修羅
で
青天が
両手を広げたまま
立ちすくんでいる
どうし ....
ただひとり 生き延びた僕に、
残された海。
激しく、荒れ狂った夜は 引き潮に連れ去られ、
空と海とをわかつべく 曖昧な区切りは
さも穏やかに微笑んでいる。
磯際を覗くと、ウミスズメたちが ....
晴れわたっていた
ページをめくるたびに
空はその青みをまして
澄んだ悲しみのように
雲ひとつ見つからない
その向こう側から
誰かが僕の名を呼んでいる
今朝旅立つことは
すでに決めていた ....
あのころの僕たちの会話は
みんなシュールレアリスムだった
僕の家は金星なのだった
ここから車で片道十一時間かかるので寮に入っているのだった
数学の小テストで図中の線分ABに太さがあったら減 ....
真夏の夕陽に染まるさざなみは
あなたの肩越しに遠のいてゆくばかり
深めに倒したナヴィシートで
あなたの好きなラヴバラードに酔いしれて
日焼けしてしまった首筋に心地よくて
小さなため息をひとつ ....
初夢がふすまを隔てて乱されて一月宴は始まったばかり
夕方と夜の結び目を削ぐ月が野犬の声にゆらめく二月
三月にあまた破線を描きだす雨よぼくらを引き離さないで
新天地 桜が咲いて綺麗 ....
劣情 かき乱す
辛い暗い部屋の奥底で
鬱味鬱色の飴玉ひと粒
嘗め回す 鼓動が一つ遅れる
存在を否定して
存在しようかと思ってる
六弦、後ろで鳴り響く、ドラム、
バス音…失くしてもいい ....
思い出だけで終わらないために
日々は刻まれて
小さく、はらりと落ちていきそうなものが
私の中で対流している
一番最後の麦藁帽子が
夏の見える丘の、少し西の辺りを
沈んでいった日のことを ....
あした
忘れてしまうのならば
濡れて帰ろう
あした
思い出せないものを
濡らしておこう
あしたも
忘れてしまえないものと
濡れて帰ろう
また
思い出してし ....
木漏れびる
影をかざして
雲のびる
来るごとくさざめき
咲くものと
信じるかはさて
先駆けるものの
真じつへの導き
芽ぶき
花ふぶき
青葉もクルルと
いのち
花のの ....
ぼくは詩人
同じ位置に立ったとしても
同じものが見えるわけではない
今日もまた
夜の散歩をしていると
夜空に出会いました
朝に同じ場所に立ったその場所で
瞬く星々に彩られ ....
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