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どうしても言い出せずに
降り積もってしまった言葉の灰を
掻き出す術もないまま
人気も疎らな遊歩道をそぞろ歩く

いつまでも辿り着けずに
色を失くした街を漂う吐息の白を
飲み込む術もな ....
すべらかな曲線の感触を
薬指は覚えている
残り香は闇にほどけて
薄らいでいくというのに

互いのささやかな湿度を
夜ごと貪り合った
決して同じではない温度が
夜ごと擦れ違った

 ....
「怒」


怒れ
とりあえず怒れ

開けろ
風穴を開けろ

亀裂でもいい
そこから侵入しろ

浸透でもいい
じっとり考えながら浸透しろ

正義ではない
生活だ

 ....
夏の盛りの
透明な記憶の破片

縁側のよしずの陰の
幼すぎた沈黙

君のちっちゃい手が
大人びた仕草で
泡立つコップを
気まずさの真ん中に
ふたつ置いた

言葉の結び目が
 ....
生温いラブソング
みたいな雨が
無骨な傘を叩く

手頃なセンチメンタル
みたいな歌が
鳥肌にまといつく

南風に押されるままに
よろよろ歩き出す
曖昧な記憶

傷つけたこと ....
少し大げさに
五月の朝を吸い込んだら
つまらない不純物など
軽々と許せてしまうくらい
気管が心地好くせせらいだ

少し控え目に
五月の朝を吐き出したら
ためらいや秘め事を
うっか ....
わだかまりの小石を
ランゲルハンス島の砂浜に
捨てたところで
塩辛いもやもやは
寄せては返す

しがらみから逃れようと
前頭連合野の深い森を
彷徨ったところで
粘っこいもやもやは ....
そこに
握り締めていたものが
怒りだったのか
憎しみだったのか
恐れだったのか
あるいは優しさだったのか
まるで思い出せない

たとえ
プライドの端を踏んづけられても
握らない ....
バスタブからあがった
ブロッコリーが塩と胡椒で
身支度を整えている頃

次から次へと切り出された
キュウリの楕円形の
車輪は朝日を照り返して

クロゼットからはがされた
レタスが ....
ひとつ先のコンビニまで
遠回りする
ガムの味がしなくなるまで
遠回りする

はにかむ放置自転車
居眠りするガードレール
さえずり合う人の影
能天気に踊る前髪

温んだ街の喧騒が ....

ある日の深夜

僕をじっと見る
餌の器をじっと見る
再び僕をじっと見る

知らんぷりして
パソコンに向かっていると
いつの間にか後ろに回り込んで
爪が出ていない肉球で
僕 ....
たとえば僕が
宇宙人にさらわれたとして
僕の不在に
気がつかない人は多いだろうが
僕の不在を
嘆く人は片手で充分数えられる

別に怨みごとを言うつもりはない
そんなものだといつも思 ....
生真面目な絆の国の小市民の仮面

の下には

逃げ足だけが速いご立派な大人の仮面

の下には

空気より希薄な辛うじて世帯主の仮面

の下には

コップ1杯でクダを巻ける安 ....
<1>

これがなければ
生きることができなかった

これがなくても
たぶん死ねなかったけれど

これがあったほうが
人様に迷惑をかけない
はずだった

これがあったほうが ....
詩は素

素敵と言わせたくて
素っ気ない素振りで
言葉をまさぐる


詩は素

素直じゃないから
素知らぬ素振りで
言葉をこねくる


詩は素

素顔に辿り着けない ....
猫を撫でたあとで
優しさは書かない

返信を待ち焦がれても
淋しさは書かない

軍鶏鍋を食ったからといって
美味しさは書かない

マニュアルをなぞったつもりで
愚かしさは書かな ....
見つめられると目が泳ぐ 点

嘘をつくとき唇が溺れる 点

滅多に好きなんて言わない 点

温かすぎると慌てて逃げ出す フーテン

笑おうとすると頬が寒がる 点

お世辞を言う ....
僕は異物だから
君の悲しみの中で
溶けてあげられない

僕は異物だから
君の喜びの中で
泡立ってあげられない

僕は異物だけど
とても脆いから
もたれた君の肩を支え切れない
 ....
冷たい雨粒が
傘をノックする
居留守をつかう僕を
執拗にノックし続ける

開けてはいけない
部屋を覗かせてはいけない

開けたら最後
あいつはズカズカと
上がり込んできて
胸 ....
たった1年で
大人になった猫は

春には泡立つ光の匂いを
丹念に嗅ぎ回りながら
ひとつ歳をとり

夏には風呂場のタイルの上に
長々と寝そべりながら
ひとつ歳をとり

秋にはふ ....
青黒い皮膚の下で
躍動する肩甲骨に
未熟なサーファーが乗り上げて
水飛沫を上げて砕け散る

白い泡立ちとなって
打ち寄せる指先は
永遠に砂浜を掴み損ねて
桜貝の汗を置き忘れていく
 ....
土曜日のお昼ゴロ
テレビの前でゴロゴロ

珍しくないから
昆虫図鑑にも載せてもらえず
面白くないから
観察日記にも書いてもらえず

疲れやすいお年ゴロ
リモコン片手にゴロゴロ
 ....
逃げ場をなくした熱気が
重く澱んでいる夜の底で
線香花火に火をつけると
涼やかな光の飛沫が
覚めやらぬ地面にほとばしる

しつこく素肌に絡みつく
湿り気を含んだ風の端に
弾き出され ....
ジグソーパズルの
欠けた1ピースが
見つからない

左目をなくした
モナリザが恨めしそうに
見上げている

完全であることに
恋焦がれる病が
再発したらしい

散らかった机 ....
頼りなげな黒い煙は
空に還ることもなく
密閉された風景の中へ
呆気なく取り込まれていった

昨日の端から一刀両断に
切り離された時空に
冬物の黒い服を着せ
ひたすら透明な汗をかいて ....
昨日の今頃は
熱帯魚の水槽の底で
揺れていた

赤色と紫色と肌色の
尾びれをひしゃげて
これ見よがしに泳ぎ去る魚達

置き場所に困った
僕の視線は水泡となって
溶けかけた空が浮 ....
なんでもない休日の
中間点からおよそ50歩ほど
家に近づいたあたりで
やっぱり雨は降り出した

ありきたりの舗道を
無邪気に塗り潰していく雨粒
いつだって間が悪い僕は
もちろん傘な ....
なぜ詩なのか



面倒臭くて つい
手軽な言葉を投擲してしまった
口淋しくて つい
甘ったるい言葉を咀嚼してしまった

<優しさ>の優しくないアクや
& ....
ギザギザの
気温の折れ線グラフの
端がほつれて
光の縦糸が
眠たそうな家並に
垂れ下がる

カチカチに
凝り固まった表情筋の
端がほつれて
微笑の横糸が
路地裏の野良猫を
追い ....
ゾロリ
色のない
貧血の頬を
滑るカミソリ

ピリリ
痛みのような
微弱電流

プクリ
鼻の左下
盛り上がる
赤い液体

チッ!
煩わしいだけの
日常茶飯

ゾ ....
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タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
雪になればいいのに- nonya自由詩28*12-12-22
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ふんわりとした接点- nonya自由詩23*11-9-24
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