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何も誇るものはないというのに夏と
誇らしげに肩を組みまた来年と囁いた

飽きれるように笑って夏が歩みさって
中央通りの真ん中に蝉を落としていった
入道雲を墓に見立てて空に還してやれば
雲た ....
一握の砂ひとつぶの水
すべての生命が埋まる
井戸は枯れ空は満ちて
からぐるまが空を廻す
ひとつぶの星一握の月
滴りまた井戸が満ちて
掌におさまるひとつぶ
如何様にも煌めく澪標
一握の砂 ....
ひとつの風景の動きが
瓶に詰められてゆるやかに
はっこう、していく

風景は酵母となり詩情とざわめき
月明かりが窓から注がれて神々の手が
攪拌を始めれば乳白色の神話の海になる

言葉に ....
すべての川は流れている
すべての故郷の川は流れている
耳を傾けるならその川の流れを
聴くことができるだろう

乾ききった風と砂しか入らない
窓からせせらぎが流れてくる
台所の床をひたして ....
窓から
射しこむ
ひかりに揺れる
小さな寝顔のうえで
未来がうず巻いている

シエスタ
君は宝島を見つけたのか
シルバー船長や
オウムのフリント
うず巻く海原を越えて
高らかに ....
おまえの手には
もう半ば潰れた
折鶴が死んでいた

折鶴がまた羽ばたくことを信じようとする
瞳に縋りつきたい誘惑、がある
だけど、告げなくては
いけないのだ、小さな手よ

おまえの手 ....
枇杷の実、たわわ、たわわ、と
ふくれた腹をかかえて転がりそうな
夕陽に照らされ景色をゆすって風を
くすぐり、たわわ、たわわ、と

悲しげな
その実に
歯を立て

しごきとる、なぜにこ ....
遠い火をみつめている
どこにいても遥か彼方で
ゆらぐこともなく燃えている

あそこを目指していたはずなのだ
臍の下あたりで、眼球のうしろで
わたしのいつ果てるかわからない
火が求めている ....
たくちゃんやアーくんはとても
綺麗なフォームでクロールするんだ

彼らのように泳ぎたいわけじゃない
水と愛撫し合う幸せを知りたいだけ

包帯が水を吸って絡みつく
誰もお前は認めない、とい ....
ミイラ男だったころ
身体は包帯を巻いてひっかけるための
ものでしかありませんでした

歩けば犬が吠え、親は子どもを隠します
皮膚が引き攣るのでよたよた、していると
見知らぬ人たちが不幸だ、 ....
さよなら、が瞬いては消えて

こころに小々波もおきない
からだの輪郭はどこかに消えて
狭い部屋でちいさな湖になって

水源へ染み入ってゆく
くらいくらいばしょ
ひかりしかないばしょ
 ....
忘れ去られ、蔦が這い
色褪せくすみ、ねむったまま
死んでいく、そんな佇まい
そんな救いのような光景を
横目に朝夕を、行き帰る
遠くのタバコ屋の廃屋まえ
どんどんとカメラが引いて行き
エン ....
もう
陽がくれる

とつとつと
西へ西へと歩んでいくと
孤影は東へ歩み去り

すれちがうのは

ひとつ、ふたつの足音と
みっつ、よっつの息づかい
いつつ、むっつのさみしさよ

 ....
丸い小窓を抜けたなら
まぁるい形になるだろか
四角い小窓を抜けたなら
しかくい形になるだろか

まぁるくしかくくなりながら
眠る赤児のくちをぬければ
どんな形になるだろか

そこにい ....
誰かが正しいという循環から外れても
心臓は打ち、もの思わぬことはない
放たれない言葉の流れが澱み

わたしはわたしから溢れ
低きに流れて見上げるのも
疲れるから地底湖になっている

と ....
枯れてゆく冬に名前はなく
キャベツ畑の片隅で枯れてゆく草花を
墓標にしても誰もみるものはいない

ただ今日一日を生き抜くことが
大切なんだと、うつむきがちに言う人に
ぼくは沈黙でこたえる、 ....
小窓から月明かり
納屋のなかでは笑い声
明日は畑に植えられる
種イモたちがくすくす
錆びても鋭い鎌に鉈は
ときおりカタカタ笑い

鉋は葦の笛をふく
春一番が待ち遠しく
女羊飼いが待ち ....
老いた虎がいる
四肢は痩せ、臥せっている
しかし、その眼からは咆哮がのぞく

虎よ、虎よ
わたしはおまえになりたかった

虎よ、虎よ、おまえは
無駄や無理や、と吠え
わたしの頭をね ....
命を頂いて生きている
だから頂きます、というらしい
けれどそれはそんなにありがたく
罪深いのだろうか
鶏が産み落とした精の無い
卵をいくつも使ったケーキは
悪徳の味がするのか
命を失った ....
丹後富士の頂へ
うろこ雲が巻き上げられていくと
明日は雨が来るといつか聴いた
あれはだれの言葉だったのか

町を歩く人びとは明日の雨を思い
空を見上げることはないようで
誰もが今を足早に ....
一羽の鳩は飛びゆき
一羽の鳩は堕ちゆく

空を見上げる子らは
羽ばたきしか知らず
星のかがやきに浮かれ

草葉の陰に横たわるものは
人知れず退場するだろう

さめざめと僕はたたずみ ....
常夏の陽が波にとけ
波の子生まれ遥々と
この島国へ流れ流れて
夏を運んで、春を流して

波の子ゆすら
ゆすら、すら
鰯の群れや鯨の髭を
気ままにゆらし
ゆすらすら

浜辺に埋め ....
白鷺が
橋の欄干に立つ
切り取られた
わたしの
瞳のひかり

羽ばたきが心を
さらいゆく

橋の上の肉体は
ただわたしを見上げて
心ここに在らず
遠く遠く浮遊する
時すらも置 ....
埋もれた一粒の麦のことを
考えている

踏み固められた大地から
顔も出せず
根をはることもなく
暗澹とした深い眠りのなかで
郷愁の念を抱いているのか
夏天に輝く手を伸ばし
希望の歌が ....
AB(なかほど)さんの帆場蔵人さんおすすめリスト(24)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
夏を慰撫する歌- 帆場蔵人自由詩3*20-9-18
看取りの道- 帆場蔵人自由詩220-7-30
風景を食む- 帆場蔵人自由詩8*20-1-20
それぞれに川は流れている- 帆場蔵人自由詩15*19-5-30
午睡の刻- 帆場蔵人自由詩519-5-28
鶴を折るとき- 帆場蔵人自由詩719-5-27
枇杷の実ゆれて- 帆場蔵人自由詩1019-5-22
遠い火をみつめて- 帆場蔵人自由詩11*19-5-19
ミイラ男は泳げない_- 帆場蔵人自由詩4*19-4-27
わたしがミイラ男だったころ- 帆場蔵人自由詩519-4-12
ゆきてはかえり- 帆場蔵人自由詩319-4-10
唯一の友だち- 帆場蔵人自由詩10*19-4-9
日暮れをゆく- 帆場蔵人自由詩11*19-4-8
風、風、風よ- 帆場蔵人自由詩12*19-3-30
循環- 帆場蔵人自由詩5*19-3-23
冬の墓- 帆場蔵人自由詩11*19-2-24
羊飼いの踊り- 帆場蔵人自由詩319-2-13
虎よ、虎よ- 帆場蔵人自由詩4*18-11-17
シュガー・ブルース- 帆場蔵人自由詩818-11-16
伝えられてきた言葉- 帆場蔵人自由詩5*18-11-11
- 帆場蔵人自由詩418-11-11
波の子- 帆場蔵人自由詩7*18-11-8
生命- 帆場蔵人自由詩618-11-7
一粒の麦よ- 帆場蔵人自由詩16*18-10-31

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