すべてのおすすめ
{引用=何十年か一度
季節が歪むと
東西の桜前線が逆転し
北から桜が咲きます

これを
紫桜前線と呼ぶのです}


{ルビ『紫桜前線』=しざくらぜんせん}

そんな記述を
小学 ....
それは
ほんの気まぐれ



『贋作 手袋を買いに』



真夜中に差し込んだ月光を
唇ですくって
指編みし
小さな誰かに合う
手袋を編んだ

私の指は
夜霧の摩擦に赤 ....
八月十五日になると
毎年訪れる浜辺があって
太平洋に面したそこへ
母を連れていくのが
夏の慣例だった


『砂上の手紙』



空襲で
顔面に火傷を負った母は
ひどい弱視で
 ....
台風一過の夕焼けには
いつだって
涙を浮かべて

手を振ってしまう


『台風のクジラ』


僕は台風の前日には
落ち着かない子供だった

ずんずんと迫ってくる
雲の足音や ....
いっそ
この身も
空に焼かれてしまえば善いのに



『夜光雲の{ルビ翅=はね}』


こう毎日毎日暑いと
夜明けの空には
夜光雲が
欠かすこと無く空を彩るのです

 ....
木蓮の花は
{ルビ宇宙=そら}を見上げる



『木蓮の咲く丘で』



花木好きの彼は
木蓮の花が一番好きで
白く甘い芳香が
中途半端にひらいた花びらから立ち上るのを
まる ....
一度で良いから
真珠の館に住んでみたい

というのは
我が家の小さな家蜘蛛が
梅雨時になると決まって呟く言葉だ


『真珠の館』

 
   漂白された空から降ってくる雨粒は
 ....
あの女房殿は

鶴なんかじゃ無かったのですよ


『夕鶴異聞』


そうですね
去年の秋からだったですかね
巷で有名な
『鶴女房』が来たのは
ええ
見事な反物でございましたよ ....
{引用=
久方の            (日の光がのどかな春の日だ)
光のどけき春の日に       (それなのにどうして桜は忙しく散っていくのだろう)
静心なく      ....
この街が奇病に犯され始めたのは
冬が明ける前だった


『蒸発王』



最初の目撃は
髪の毛だったらしいが
全ての症状は同じだった


蒸発する


感 ....
帰省の列車の中で
こんな夢を見た


『蜻蛉の夢』


満月の夜
月下美人のつぼみの下で
細身の女性が横たわっている


彼女の肌は
食べ物が喉を通ったら
透けてしまうくら ....
最近の紙ってのは
紙じゃないね
ケント紙だとかルーズリーフだとか
下らない
にじまない紙の何処が紙だというんだ

紙はね

にじんでこそ紙の価値が問われるのさ
とく ....
我が家には
幼馴染の家蜘蛛がいる
子供の頃から一緒なので
年齢は私よりも年上なのだろうが
1.5cmの小さな蜘蛛だ
気が向けば晩酌くらいはする
私と蜘蛛はそんな仲だ


『夜雪酒』
 ....
それでも止めないのは
あの一言のおかげだと思っている


『最期の写真家』


気付いたのは
老夫婦の写真を撮った時だった


仲の良い夫婦で
金婚式の記念にと
シャッターを ....
{ルビ梔子=くちなし}の満開の下へは
決して近寄ってはいけない



『クチナシの木の満開の下』




子が出来ぬ
という理由で離縁された女は
梔子の花しか食べられなくなった ....
貴方ともう一度だけ

最後に



ワルツを




『最後にワルツを』


教師生活で
一番長く努めた
其の学校の廃校が決まったのは
年の瀬を過ぎてすぐだった

 ....
其の純白が
花嫁衣装の様だった


『純白般若』


祖母は
小さい頃に
骨を食べたという


焼け野原になった当時
ろくな薬も無いなか
人間の骨は万病の薬だ
という噂が ....
今夜は酷い夜霧だ
むやみやたらに出歩くと
街の真中で遭難してしまいますよ
旦那
今日の所は

この常夜灯の下で
霧宿りいたしましょうよ



『常夜灯の下で』 ―銀の夜を溶かして ....
{引用=リトル・ミスに出会った}

*********************************************************************


{引用=彼 ....
金色の海で
私は上手く笑えていただろうか


『金色の海で』


郵便受けに
見なれない封筒が入っていた
差出人は
失踪した親友からだった


彼は
一年前に妻子を亡くし
 ....
【睫毛の先】

もう
恋なんぞしない
と思って泣き続けたら
はらはらと
睫毛が残らず抜けてしまった

恋は
睫毛の先に止まるという


以来恋をしたことは無い


【 ....
『未亡人』
という呼ばれ方を嫌った叔母は
高飛車な懐古主義のロマンチストで
まだ幼かった私に

{ルビ刀自=とじ}

と呼ぶように教え込んだ


『{ルビ刀自=とじ}の刃』

 ....
6歳の頃
初めてりんご飴を買ってもらった
食べるまで
りんご飴は
ケン玉の赤玉でできている と思ってたので
甘くて柔らかいから吃驚した


7歳の頃
初めて金魚すくいに成功した
ふ ....
旅先で
必ず訪れる旅館があって
其の庭には
花をつけない
見事な桜が佇んでいた



  花をつけないのは
  私のせいなんですよ



其処の女将は笑う


彼女は ....
夏休みにしか帰らない
実家の銭湯には
青い富士山の変わりに
緑のペンキが色あせ
ボロボロに古びた
一匹の龍の壁画が
どん と
風呂場一面を支配している



田舎のせいか
夏場 ....
重くなる背に
無鉄砲の銃声がこだましていた
いつまでもいつまでも

彼の銃声はこだましていた


『無鉄砲の銃声』


僕と彼は幼馴染だった
自己紹介カードの趣味の欄に
『無鉄 ....
空気は夏色に染まり
空の青さにも透明が混じると

今年も
『カミナリ玉』
がハシリの時期になった


深緑に走る
黒い稲妻が

球体になって
八百屋に並ぶ

値段は詐欺 ....
プラネット・ラダー12番地へようこそ
新しい入居者の方ですね
本アパートの管理人です
お部屋まで見送りと
各部屋のご案内をさせて頂きます
こちらへどうぞ

廊下入りまして直ぐ手前から ....
今宵満月春疾風
梅には遅いが
桜にゃ早い
名乗れ
名折れの
名残雪
袖触れ合うのも多少の縁
一寸御付き合い下さいませ
もう頃合だ
耳を済ませて
きちんと嗅いで
飲み込まれない様に ....
“死にませんよ”


春の夜明け
川ぞいの土手を歩いていると
魔王と出遭いました
鼻水をずるずるとすすっています
まだ寒い中僕を待っていたようです
とりあえずティッシュを渡すと
魔王 ....
佐野権太さんの蒸発王さんおすすめリスト(40)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
紫桜前線- 蒸発王自由詩4*08-3-30
贋作_手袋を買いに- 蒸発王自由詩4*07-11-11
砂上の手紙- 蒸発王自由詩9*07-8-14
台風のクジラ- 蒸発王自由詩907-8-7
夜光雲の翅- 蒸発王自由詩4*07-7-5
木蓮の咲く丘で- 蒸発王自由詩7*07-7-2
真珠の館- 蒸発王自由詩807-6-12
夕鶴異聞- 蒸発王自由詩14*07-3-28
静心なく- 蒸発王自由詩8*07-3-11
蒸発王- 蒸発王自由詩13*07-2-25
蜻蛉の夢- 蒸発王自由詩8*07-2-17
或る紙すき職人の遺言- 蒸発王自由詩10*07-2-1
夜雪酒- 蒸発王自由詩8*07-1-23
最期の写真家- 蒸発王自由詩8*07-1-16
クチナシの木の満開の下- 蒸発王自由詩11*07-1-15
最後にワルツを- 蒸発王自由詩12*07-1-10
純白般若- 蒸発王自由詩14*07-1-7
常夜灯の下で__銀の夜を溶かして- 蒸発王自由詩7*06-12-26
グッバイ_ミセス- 蒸発王自由詩4*06-12-18
金色の海で- 蒸発王自由詩8*06-12-16
もうしません- 蒸発王自由詩5*06-10-16
刀自の刃- 蒸発王自由詩7*06-8-30
夜店談話- 蒸発王自由詩9*06-8-6
何度目かの遺言- 蒸発王自由詩10*06-7-17
湯殿の龍- 蒸発王自由詩8*06-6-19
無鉄砲の銃声- 蒸発王自由詩4*06-6-18
カミナリ玉- 蒸発王自由詩9*06-6-15
プラネット・ラダー12番地の管理人- 蒸発王自由詩5*06-3-8
パレード__百姫夜行- 蒸発王自由詩5*06-3-5
死神と魔王−魔王と出逢った−- 蒸発王自由詩9+*06-3-5

Home 次へ
1 2 
すべてのおすすめを表示する
推薦者と被推薦者を反転する