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真夜中のため息は
やがて
真っ白い湖になって
少女と猫が
弾む足取りで渡っていった
その水面の足跡は
白い蓮の花に生まれ変わり
ひめやかに
ひめやかに
ささめ ....
猫のミーが
窓から初雪を見ている
たんぽぽの綿毛よりも
静かで美しいそれは
いつか別れた母親の
しっぽの色だった
ミー
君の耳も
同じ色をしているよ
夜は閉まらないと思っていたのに
今日は 夜が閉まっている
道の片隅で耳を澄ましても
夜が 聞こえない
夜なんて初めから無かったのかも知れない
夜なんて無い
そんなことを言ってる間に
本当 ....
僕らには何らかの足と
時間があるのに
階段はいつも
非常口の奥で
しんとしている
「何階ですか?」
機械のゆみこが訪ねると
「トナカイです」と
どこか遠くか ....
公園へと続く夜道の街灯に照らされて
{ルビ百日紅=さるすべり}の木は裸で独り立っていた
枝々に咲かせた無数の桃色の花びらを
過ぎ去った夏に{ルビ葬=ほうむ}り
樹皮を磨く北風に じっと口を ....
空腹に堪えかねて
絵葉書を呑み込んだ。
青く浮き出た静脈の中を
函館の夜景が漂っている。
とりかごをね
夜にむかってかざしたら
まぬけな星がいくつかね
僕のかごに入ったよ
凍えた町。シャーベットの雪が降ってきた。
暗記の得意な少女が泣いていたから。
「大丈夫。ケルベロスは虫歯よ。」と、
スキンヘッドの女が笑った。
幽霊が迷子を家まで送り届ける話。をした
男の皮 ....
さらさらと
足場は流れている
友達は楽しそうに
波を掛け合い
笑ったり
こづき合ったり
僕は
濡れるの
好きじゃない
こづくのも
好きじゃない
笑うのは・・いいけど
....
バタークッキーと紅茶
で
夜のティータイム
星が紅茶に
ゆらりと落ちて
ちょっと熱いじゃないのと
文句を言う
それを無視して
あなたが
さくさくっと
クッキーをかじって ....
いじめられているように
閉じ込められているように
何も出来ない雨の夜
誰かが見ている
誰もが見ている
白い目
赤い目
三日月の目
いじめられているように
打ちつけられるように ....
小さい頃から
ぼんやりと思っていたの
クロアゲハをたくさん集めて
全部スカートにしてしまおうと
クロアゲハはレースのようにひらめいて
そして透かされて
小さい頃はただそれだけだ ....
ふと遠いところへ行きたくなる
通過電車に手をのばせば届きそうで届かない
本気で身を乗り出すと本当に連れ去られてしまうから
「危険ですから、黄色い線の内側までお下がりください」
というアナウ ....
真夜中 駅のホームでは
たまにカレーの臭いがする
それは風みたいにすぐに流れて消え去って
僕がもう一度白い息を吐いたときには
その形すら思い出せなかった
そういう夜は電車に揺られながら
....
愛という字の、{ルビ憂=うれい}に似るは、
インクのにじんだせいかしら。
それとも、酒のせいかしら。
ビリイホリデの声聴いて、
今日は少し、酔ったのかしら。
今日 ....
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