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夜は記憶の始まりから来たのだと
慰めるように紡いでいた物語を
君が聞くことをやめてから
どれだけ経ったのだろう

昨日から
世界にひびが入りはじめている

そこからあふれる酸素 ....
少女が腰をかける
やわらかき光が
屈折して
一人二人三人

1時20分
私はスケッチをしている

桃色の土はしめりて
昼間の太陽はなし
忘れた景色のことは
もう、分からないから
私を追うのなら
出発は
最終列車がいい

戻るつもりのない時間帯に
その街を出てきたことだけは
今もまだ
覚えているから
どう ....
一秒ごとに
とどまる
時間が
抜殻として
輪郭を残し
なだらかに
連なる

呼吸と
思考
いくつかは保たれ
いくつかは置かれたまま

ふりむけば
うすい
半透明の
殻が ....
ひしゃげた表情の老人が空き家の前で座っている
迷惑そうに振り払った女が古い歌を口ずさむ
明け方の街路灯にカラスが物言わず腰掛ける
壁に手をあてながら歩いている

嗄れた声でかき鳴らし ....
おはよう と言うよりも先に
十二歳になったよ と
報告をする朝
きみはまだ翼の下
生まれてきて良かった? の問いに
素直に微笑む
きみのまだ知らない
悲しみと苦しみ 
平坦な道のりを願 ....
はんがわきのスカートのつめたいひだがぶらさがりゆれてるのがみえる
道端にぶた草がさかんに咲き誇りきいろくあかるく
きめのこまかい空気を満タンに吸い込んで肺がふくらんだ
ガラス窓にぽっかり灯るアド ....
明け方過ぎの国道で
辛うじて歩いている
あたしの足は優しくなれているのか
国境を探している
 
壮大なサウンドの中
口ずさんだ蛍光灯
静かな空気が痛みに変わる
地平線はどこにある
  ....
テストの端に付けた
小さな丸の中だけが
やけにリアルに見えて
目を逸らした、あの日
 
飛び交うチョークの粉と
女子高生の猥談の側で
僕は、サナギになる準備を
早々に始めていた
 
 ....
静かなままの
冷たい身体が寂しいと鳴いた
お気に入りのシーツ
このままひとりで汚したくはない
記憶が飛び散るそのまえに
きみに、して欲しいことがあるの


ひろげた手のひらに
 ....
未だに命を引きずる街で
静かすぎる呼吸を繰り返す子供達
おとな は
既に死滅して
水滴がぽちゃりと世界を彩った
 
(このてのなまえを
(おしえてほしい
 
 
片隅でぼそりぼそり ....
{引用=ぼくがうたをわすれても
みつけだしてくれるかい
シンバルのオモチャでも
つかんでいてくれるかい}


死体を晒さぬカラス
月にかくれた月蝕に問おう
倒錯しないか

好きだっ ....
  白い肌 黒い髪 紅い唇

  細い腕 長い指 甘いくちづけ  


全部奪いたい 独り占めにしちゃいたい 
全部奪いたい 独り占めにしちゃいたい 
幼そうに聞 ....
やわらかくて
あたたかくて
ちょっぴり
かなしくなる

 

それをひとは
(あい)とよぶから
ぼくもならって
(あい)とよばせてもらおう

 

やわらかくて
あたたか ....
極端に淀む視界の端に映った灰色ブラインド
希望の青 侵食されて
 
重くのしかかったそれ
全身で受け止めて
人間スクラップス
今日も頭痛が酷い
 
 
微かな音で始まった雨粒オーケス ....
濡れそぼつ手で
旋律を撫ぜるかのやうに
彼は私の
両の乳房に、そつと
指を這わせてゆき
 
それはあたかも
神聖な儀式であるかの如く
誰も目にすることのない
真つ暗な室内で
執り行 ....
睡魔が
風に乗って
教室へしのびこみ
誰かをいねむりさせる頃
遠い国では
核ボタンを押す
大統領が
睡魔におそわれて
世界は救われる
かみつこうとする
ライオンの疾走は
あえなく ....
シオリちゃんは わたしを見つけるといつも
はじめまして、と言う
わたしも はじめまして、と言う

たくさんいっしょに遊んでも
次の日には わたしのことを覚えていない
でもシオリち ....
{引用=




  金色が たおれる 欠伸が 蔓延する 
  蛙のうた こもる ねむれない 五月 日々の罅に 滲む
           ゆううつの 書物 ふあんていの音楽
  刺身 ....
本を読む人の眼は
例外なく真っ黒い色をしている
それはもちろん
眼が活字のインキを吸収してしまうからである
本を読みすぎて
白眼まで真っ黒になってしまった人が
こちらを向い ....
思い出の隙間からあの人は消えて
荒涼たる未来には誰も待ってはいない
吹きすさぶ風は淋しさを歌うけれど
何も聞こえないよりはいい
何のために誰のためにそんなことわからない
嫉妬で顔を洗い嘆きで ....
{引用=誰が哀しくて 雨が降るのか}


水面には 先祖様が揺れています
海底では 光こそが恋しいのです

海のキャンパスを塗りつぶす 雨
それはまことに私達の涙です

天の彼方 水 ....
今はもう
落ち着きを取り戻した
ネオンたちが
 
まだ 空を
侵食している
 
 
その事実を知っていても
 
僕は
何をする訳でもなく
 
36℃の体温と一緒に
ベッドへ ....
この黒い塊に火をともせば
星空にくゆる灰色の煙で
ふたり。息苦しくて
思わず咳き込んでしまいそう

エンジンを切った
深夜の車内は。ことさらに寒くて
あなたの手のひらだけが
あたしの温 ....
言葉をその形のまま
受け取れない僕は
苦しむことがない一方で
君と同じくらいには
生きにくさを感じていたりするんだよ
そういえばいつか
「医者は美味しい物ばかり取り上げていく」と
目 ....
二日遅れのホワイトデーの
白いリボンを髪にのせて
ふわりと回ってみせる君は
大きくなったら
メイドになりたい
という

人様に奉仕したいとは
見あげた心がけだ

解釈は準備してお ....
ぽろぽろ、と
止まらなひのです
 
(それはあたかも)
 
言葉が
止まらないかのように
 
 
緩く
 
柔らかに
 
止まらなひのです
 
 
昨日、最後の宇宙人は ....
息をすって
息をはいて
それを一緒に
森の中で

雨にぬれて
森の中で
息をすって
息をはいて

おまえのこころ
いばらのとげに
息をすって
息をはいて

 ....
ほおかぶりして
通り過ぎるのは
ぎりぎりの
きりきりの
痩せすぎた
頬の痩けた
猫のような男
おのれのことだと
思いながら
角を回るのを
見届けた
見えなくなって
一安心
 ....
春めくのか夜になると
もぞもぞするもの
それは
あなたのつくしんぼう
今夜のわたしは疲れているのに
背中を向けた闇のなかで
何かを探し蠢いている
辛抱が足らないから
貧乏なのか
芯棒 ....
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