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雨粒に触れて 膜は破れた
私の巡ったしるしの中に
遠く、緑が燃えた
児戯の様、六番目の足を伸ばす
かそけき予感は 手のひらの中
(水盤を御覧よ、花が 踊る ....
どこへもいけない光の音が
橋の下を巡っている
水は鳴き
川は止み
雲は何かに引かれるように
ふりかえりながら海へ向かう
記憶でさえない小さな記憶
見つめる羽の目からこ ....
そして雪の中へ沈む
地上から十メートル
中空に横たわりながら
雪を待つ
冬のさなかにほおり出されて
わたしは海を夢に見る
深淵から
響いて響いて
波がわたしを呼ぶ
わ ....
少女は
夜半死んで、
乙女となって朝早く目覚める
花ほころぶよう、湯は赤く染まる
乙女は
夕べ死んで、
女となって昼過ぎに目覚める
うなじより、むせかえる花の香り ....
住宅街を奥へ奥へ
あの角を曲がれば一階が医院で
上は青灰色のマンション
隣には水色の薬局
植木鉢は全部新品の胡蝶蘭
薬剤師さんはみんな魚みたいな
目をしていて
ゆらゆらと動く
ここは水 ....
夜と同じものが立ちはだかり
窓の外は暗くにじむ
歌うは神の無い月
瑠璃色の雲の一節
苦しみの幾拍かをとどまらせて
雨
狼
すべての低いとどろき
午後の果て ....
わたしは 鏡のなかで待っている
あなたを待っている
あなたは なにも知らずに
平気で 素顔を のぞかせる
わたしは みとれて 口ずさむ
月明 ....