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私はやはり、と
言わざるを得ない
やはりあの{ルビ畦道=あぜみち}を
脇目も振らず
私は歩いていたのだと
炎天、真昼、陽炎
夏が侵攻していた
それはいつも匂いから始まる
濃厚な ....
たった一言交わして
すれ違うだけの人にも
私を憶えていてほしい
それは贅沢なことだろうか
食卓や墓地や廃屋にさえ
いつも人の面影があった
私の生まれは人だから
....
知らない街で
洗濯物が揺れている
風に洗われて
青空を映しながら
知らない道に
鳥の羽根が落ちている
素通りなど出来なかった
「これは大空の破片なのだ」と
....