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地に伏していた。身体の自由が効かない。目を開けると、そばに灰色の蛾の死骸が見えた。風でうすい翅がゆらめいている。翅の鱗粉がかすかに光る。蛾の数本の細い脚が、宙をつかみ損ねていた。顔をずらし視線を先に ....
冬の空は乾いている。遠くで鳥の鳴き声がしている。車のデジタル時計を見る。空腹で気持ちがわるく、くらみを覚える。午前9時。いや10時だったろうか。もう時間など意味はないかもしれない。昨夜、車の周りにい ....
ひとりでどのくらい走ったのだろうか。地平には果てがない。アクセルを踏み続け、車外の狼と平行して草原を突き抜けた。狼はときに宙を跳び、ときに地をすべり追跡してくる。車体に草や砂利があたった。街の明かり ....
落合朱美詩集『思惟』(詩遊会出版部)
手にとってみると、紅い表紙に、バラの花だろうか白い線のイラストが大きく配置されている。ルナクさんの絵。詩集の紅い色と、著者名の「朱」という色が呼応しているよ ....
そして狼は一頭で、
舗装された道路を、泥で汚れた足で歩き、
駅からマンションが並ぶ踏切を抜け、
渋谷までの国道246号を黄色信号で渡る。
曇り空は湿った風。
吠えるべき月は、ない。
爪 ....
その日、だれかに呼ばれたような気がして、家から外にでた。近所の、さくらの並木通り、書店でコミック雑誌を買う。花を見ながら、小学校の前を通りすぎ、病院へと向かう。となりのレストランの、外壁の大きな鏡に、 ....
せかい、というビンのなかに雨がふります。
あおくとうめいな悲しみが、
ガラスの内がわにすいてきとなって、
したたっていきます。
ビンのなかでも、
そらは、どこまでもはてがないようで、
....
引越をした日は、
青空だった。
近所の空き地の、
壁に、ボールをぶつけ、
グローブで受けとる。
ひとりで遊ぶわたしに、
アキラとリョウが、
笑みを浮かべ、声をかけてきた。
初登校の ....
わたしのカラダ。
植物のツタのようにほそくねじれて、
せかいの天蓋にむけて、
のびていきます。
くるぶしまでのひたる水。
は さざなみのように、
わたしをすくめ。
日のひかりいっ ....
江ノ島の砂浜で、
少年だったわたしは、
父とカイトを、飛ばした。
父の、大きな背の、
後ろで空を見上げる。
埋まる足元と、手につく砂。
潮風に乗って、
黒い三角形のカイトは、
糸をはり ....
太陽が隠れ、雨が降っている。
駅から、歩いて帰る途中、
だれもいない、
公園による。
幼いころ、よく公園で待たされた。
雨が降っていても、
寒さで凍えながら、
靴の中が水で濡れても、 ....
一人でいることに、何年も飽きなかった。シートの、海に伝わる神話を読みながら、永く暇をつぶしていた。精霊の女、の横顔の表紙。空腹の中、海に向かう道、カセットで、オペラを聴きながら、わたしは車を走らせた ....
ルナクさんの光冨郁也さんおすすめリスト
(12)
タイトル
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カテゴリ
Point
日付
落ちた後
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光冨郁也
自由詩
10
08-7-25
砂漠となる
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光冨郁也
自由詩
12
07-3-26
燃料切れ
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光冨郁也
自由詩
8
07-3-11
落合朱美さんの詩集『思惟』(詩遊会出版部)の感想_を書いてみ ...
-
光冨郁也
散文(批評 ...
9*
06-12-16
狼
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光冨郁也
自由詩
4
06-10-11
コミック雑誌
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光冨郁也
自由詩
11
06-8-26
せかいというビンのなかにふる雨
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光冨郁也
自由詩
20*
06-7-27
転校生
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光冨郁也
自由詩
16
06-7-13
色彩のカラダ
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光冨郁也
自由詩
7
06-5-24
点のカイト
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光冨郁也
自由詩
9
05-2-20
ペガサス
-
光冨郁也
自由詩
7*
05-2-17
バード_(「バード連作集1」)
-
光冨郁也
自由詩
20*
04-10-13
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