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溺死者は死にたかったの 思想の瀞
歯の痛みわがものとせず皿を噛む
ねむれないひるまを足掻きようもなく
切ればゴミ髪も小指も恋人も
狙われた記憶もなくて行方不明
....
雨がしとど降る夕方にさえ
その図書館は
虹のなないろよりも多くの色彩にあふれているのでした
花はバラ色
空は空色
木々は緑
図書館に住む少女たちは
童話の勇気ある少女のように
....
母と云ふ字は嫌ひ苺も嫌ひ
忘れな君いまここにあるこの菫
オランダの苺囓れば昼間の月
たそがれに水星の見え{ルビ土筆=つくし}生え
春枕翼を持たぬ鳥が飛ぶ ....
騙されたくて朧月夜を散歩する
踏まれて香る芽紫蘇の死
液体化するわたし 麗らかで
春眠の教室窓から光こぼれる
米が汗をかいている
汗のようにおちる言葉
....
[な]
――懐かしい泣き虫さんへ
長雨のなか
なけなしの茄子がなったので
撫でまわして和んでいます
仲間にはなじみましたか
訛には慣れましたか
ないものねだりの
涙を流 ....
髪の乱れを気になさるな。
血濡れた衣も気になさるな。
そなたは美しゅうござります。
この身はすでに腐り果て
ところどころに穴ひらき
覗く腐肉に蛆が這い。
しかあれど
まなこはかっと見 ....
窓ガラスがかたかたと鳴るのは
風のせいではない
カーテンが明るさに焦げているのは
西日のせいではない
窓に背を向けて本を読み続ける
誰かが肩に手を置く
焦げた風が髪をちぢらせる臭い ....
焚き火の火を見つめながら
煙草を吸っているから
涙もくしゃみも煙のせいにできる
焚き付けの新聞紙にはテロのニュース
世の中のもめごとみんな燃やしてすっきり
なんてわけにはいかないけど
....
[バリケードのこっち側]
その前日
あたしは工場で残業した
まんまるいちんち段ボールの箱と格闘して
それでもまだ働けとベルが鳴った
自転車をこいで家に帰ると
戦いは明日だと言う ....
いまはもうない家の
いまはもうない裏の畑で
空いっぱいに舞っていた
アキアカネ。
物干し竿に 洗濯物に
それをとりこもうとしてる母の髪に
それを見ている私の肩に
アキアカネ。
....
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