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  やさしいのか
  やさしくないのか
  雨の日のあなた


  約束の時間に
  遅れたわたしに
  何も言わないので
  カフェオレを頼んだきり
  わたしも黙って俯いてい ....
  両手に抱えられるだけ
  かなしみを抱えて
  捨てに行く
  穴を掘って
  花壇の真ん中辺りに
  ここなら寂しくないでしょうと
  ささやきかけて
  そうしたら
  ....
  夕暮れ色の飛行船、
  たくさん空に浮かんでいたけれど
  空と一緒の色だったので
  誰にも気付かれないままでした。

  *

  毎朝、起きたらすぐに顔を洗います。
   ....
   黒縁の眼鏡をかけた教授の講義が一段落すると
   スクリーン上に映し出されたままの
   夏の星座がゆっくりと回転し始める


   古びた校舎の窓側を覆う暗幕は
   その歳月 ....
  やさしさと、            
  いつも呼んでいた
  傷つきやすいその心を
  やさしさだと、
  呼んでいたあなたの
  傷つきやすい心


  秋の終わりの
  ....
   月ではまだ
   冬の初めで季節が
   止まっているようだった


   浅い眠りの合間に
   この頃よく、夢を見る
   凍えたままの月面で
   あなたをこの腕で抱き ....
  わたしは時々、石になりたい
  そして夜の一番暗いところで
  じっと丸くなり
  わたしの冷え冷えとする体に
  とても美しい夢を備え
  いつかわたしを拾い上げる者に向かって ....
  朝焼けがまだ
  始まらないので
  本当は昨日
  あなたに届くはずだった
  手紙のことを思った


  夜明け色の
  手紙を贈って欲しい
  君と一緒に
  指差して、 ....
  黄昏が近づいて
  風向きがふっとかわるとき
  隣り合って座るわたしたちの間には
  暖かな風のように沈黙が訪れる


  丘から見下ろす街並みは
  最後の夕日に照らされて
  ....
  昔、あなたに宛てて書いた手紙
  あなたが受け取らなかったので
  まだ手元に残っている


  手渡そうとすると
  あなたは決まって困った顔をしたから
  わたしは何故なのだろう ....
  真夜中に、
  嵐の音が怖くて目を閉じたジーナ
  だけど嵐の音じゃなかったみたい
  目を閉じている間に、
  季節が変わってしまって
  途方に暮れてる小さなジーナ
  ふれる ....
   甘くない珈琲を
   手の中で
   大事そうにしていた
   猫舌だと言って
   大事そうにずっと
   両手の中で



   十二月に降る雪のように
   ま ....
  ガリレオよ、宇宙をソラと呼ぶ人の名前を君は覚えているか 


  天地の神話が始まるまではあなたもわたしも素粒子だった  


  くるくると回る土星の輪っかから天体オペラが流れて ....
   
   冬の空に
   オリオンが南中する頃
   ベテルギウスは涙を零して
   名前が呼ばれるのを待っている


   冬の空の、暗い、
   まるで何も存在しないかのように ....
  
  「本を読みなさい」
  

   その人はそう言って
   夕暮れて図書館が閉まるまで
   わたしの隣で静かに本を読んでいた


   映画を観なさい
   音楽を聴き ....
  山並みを巡って
  一本の道が続いていく
  夕暮れ時に
  耳元でふと寂しい曲が流れるものだから
  あの道がどこへ続くのかを
  未だに誰にも言えないでいる



  「 ....
  
  わたしの中に森が生まれたとき
  その枝は音もなく広げられた
  指先から胸へと続く水脈に
  細く流れてゆく愛と
  時おり流れを乱す悲しみ



  わたしを立ち止まら ....
  あなたが海を歌うとき
  わたしの瞳は波になる
  愛していたと
  告げる言葉が悲しくて
  静かに揺れる波になる


  あなたが空を歌うとき
  わたしの胸は波になる ....
  夏の最後の日差しが眩しくて
  何も言えずに目を閉じた
  晴れた空に向かって
  君は背伸びをして手を伸ばす
  それでも僕は何も言えない



  ひと夏が終わるたび
 ....
  君のいた夏が終わる


  故郷を知らないという君が
  旅先で描きためた風景画、
  古びたスケッチブック


  迫る山並み
  水田に映る空
  夕暮れの稜線
  風に ....
{引用=八月の月で海鳴り
それでも僕らは響く波音を知っていた}


  僕は今、紺碧の{ルビ海=マーレ}を閉じ込めた窓辺から
  君に宛ててこの手紙を書いている


  {ルビ ....
  イーサ・ダラワの七月の浜辺には
  遠い国の浜辺から
  いつのまにやら波が攫った
  いくつもの言葉が流れ着く
  

  嵐の後にそれを集めて歩くのが
  灯台守のワロの ....
 
  *蝶


  黒猫の気だるい微笑みは、いともたやすく蝶を虜にする。
  その静かに差し出された手の上に、青い翅の蝶がとまる様子を、
  少年は頬杖をついたまま眺めていた。
 「可 ....
 *夜半過ぎに


  夜半過ぎになって、その悲しい報せはもたらされた。
  そっと肩を寄せてきた黒猫が、
 「それは悲しいことだわ」
  と、うわごとのように何度か繰り返した。
  少 ....
   丘が燃える
   潮騒の果てで

   ラムネ壜の中の気泡が何処から生まれ
   そして何処へ消えるのかを知っているだろうか
   耳を澄ませば聴こえるだろう
   遠い海の ....
  冬の木漏れ日の中で懐かしい歌を聴きました
  懐かしくてももう泣けない自分がいました
  それが寂しくてそっと瞳を閉じました
  太陽が淡く輝いた冬の日のことです


  太陽 ....
かおるさんの嘉野千尋さんおすすめリスト(26)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
金木犀- 嘉野千尋自由詩27*07-9-24
五月考- 嘉野千尋自由詩10*07-5-28
幻視顕微鏡- 嘉野千尋自由詩61*07-5-27
プラネタリウム・アワー- 嘉野千尋自由詩26*07-5-21
夕暮れ組曲- 嘉野千尋自由詩20*06-12-19
月面観測- 嘉野千尋自由詩16*06-8-13
わたしは時々- 嘉野千尋自由詩18*06-6-6
明星- 嘉野千尋自由詩17*06-5-7
そのときあなたは夕暮れの街- 嘉野千尋自由詩13*06-5-4
手紙- 嘉野千尋自由詩31*06-2-6
ジーナの一月- 嘉野千尋自由詩13*06-1-5
十二月に降る雪のように- 嘉野千尋自由詩17*05-12-10
千夜一夜に星の話を(こっそり短歌祭)- 嘉野千尋短歌10*05-11-11
十一月のオリオン- 嘉野千尋自由詩21*05-10-22
十月の空を見なさい- 嘉野千尋自由詩25*05-9-12
帰路- 嘉野千尋自由詩11*05-8-24
森の風景- 嘉野千尋自由詩36*05-8-12
波になる- 嘉野千尋自由詩17*05-8-10
君と九月と、あの空と- 嘉野千尋自由詩14*05-8-5
水彩の夏- 嘉野千尋自由詩14*05-7-27
八月の海鳴り- 嘉野千尋自由詩16*05-7-2
イーサ・ダラワの七月の浜辺- 嘉野千尋自由詩14*05-6-27
黒猫と少年(2)- 嘉野千尋散文(批評 ...8*05-4-18
黒猫と少年(1)- 嘉野千尋散文(批評 ...10*05-4-17
潮騒の丘- 嘉野千尋自由詩10*05-1-8
十三月記- 嘉野千尋自由詩45*05-1-7

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