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ルージュを差してスクランブル交差点を闊歩する
マネキン
サングラス越しのレーザー光線が
斜めに風景を切り取る
溶けて秋風に癒される切り口は
ぼくには見えない
エナメルメッキを貼った乳房 ....
吐き出して
吐き出して
郵便局の薄暗がりが頬を撫でる
自動ドアをくぐると
体内時計から螺子が一本
逃げていく
逃げていく
減速度に身を任せ
力を抜いて深呼吸
過呼吸になりそう ....
公園のトイレの結界を破り
用を足そうとすると
紙がない
わたしは紙を探す旅に出た
トイレの予約は
忘れずに
回数券で地下鉄を一駅
街頭でティッシュ配りをしている
手に取ると ....
もしもし母さん
なんて云うから
母なんていない
と 返す
ごめんなさい
なんて云うから
迷惑なんてもらってない
と 返す
わたしはいつだってそう
なんて云うから
あなたのこ ....
使い古した心にナイフ突きつけ立て籠もる
ためらい傷を掲げる罪を問う
限りない調和を求める安穏とした世界で
憎しみをいだく罪
万能の神すら恨まれる
聖人君子よ
ひとは憎み
....
夏は涙を流してくれない
秋
瑞々しい草木の
しなやかな手に雫を落とす
冬
食卓のある窓の
鈍色ガラスに雫を垂れる
自分たちの体温に気づいた時
季節は泣いてくれる
....
犬は閉ざされた窓から外を見上げ
うごめく棕櫚の森に耳をすませていた
そこに勝手な押しつけや創造はなく
素直な発見に頷くまで
あるいは発見がないと悟るまで
心を離すことはないのだろう
犬 ....
闇に川音の迷う{ルビ硲=はざま}の村
トンネルに切り取られた高架橋
しじまを蹴散らしていく道しるべ
{ルビ硲=はざま}に閉じこめられていた記憶が目を覚まし
一瞬顔をしかめるも
手招きに不安を ....
てのひらから
指折り数える時間の粒があふれ出す
指の間からぼろぼろ零れ落ちる速さは増し
掴み取るのが追いつかなくなる
焦って
その姿を子供たちに見られていることに
また焦って
わたしの欲 ....
鬼さんこちら
手の鳴るほうへ
あたしのあとを
追いかけてきて
校庭に伸びる
わたしの分身
光を与えられない
無邪気な沈黙
朱色に染まる
雲の峰 ....
手作りの街並みは
連続的な曲率を忘れてしまっている
その中に欲しいものはなく
わたしは
資格参考書と
一握りの雨粒と
友人にお裾分けしてもらった溜め息の入った
鞄を提げて
求めたい ....
月の裏側が見たいと
弟が呟いた
瞳はもう
赤方偏移を繰っているように
白兎を歌って
憧れと諦めをわたしに託して
弟はもう
腐りかけた足で
旅に出ていた
痛々しいほどに頑張りす ....