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遠回りしたとふ君の背に延びる一本道は凛とすずしげ
それぞれの身体と中身が並んでて同じ夕日を見つめて黙る
全体を凍てつくされた冬の森めぐりあえない君とは遠く
ちら と目が合った気がしたその刹那巻き起こる風紛れ込むきみ
お互いを知っているのに永遠に言葉を交わすこともできない
粉雪がとけるこ ....
言霊は無色透明たどりつくところによりて色を変えゆく
雑然とした日々のこと雑踏の中に紛れて目を閉じないで
ありのままそのままでいい君の目はくるっていない間違ってない
戦場で逃げ惑うひと ....
炎抱き天に向かって捧げんと燃えて散りゆく桜木並木
ただ青いただただ青い空に合う赤を散らせて木枯らしが吹く
舞い落ちる火の粉に巻かれここでなら秘めた想いを一人言ちても
振るうこの葉の数 ....
記憶さえなくすほど酔いたくなって赤ワインに手を染めし吾
法王の小箱と名づけられし酒とりあえず買い駆け抜ける帰路
滲む赤アルミの蓋で指を切り思い浮かべる最後の晩餐
この酒を飲み干すため ....
{ルビ蒼水面=あをみなも}浮かび流るる赤き葉も沈みたゆたう淡き葉も秋
紅葉を閉じ込めている秋の川浮かぶ{ルビ椛=もみじ}も沈む椛も
{ルビ吾=あ}の胸を刺した蜜蜂命絶え痛み残してポトリと落つる
もしかして君は誰かの化身かといぶかしんでる薬塗りつつ
あの刹那君は死んでもよかったと思えたのかと傷跡に問う
もう一度刺さ ....
宇宙では人は一人と気づくはず 濃い闇のなか手もつなげずに
幾千の星ひとつずつ消えゆくをともに見ようか願いなどせず
音楽が鳴り止んだから席を立つ 椅子取りゲームは不参加の君
リモコンで ....
なみだかわきよきおもいでふりかえる わすれなきようあすにしおりを
{ルビ弘明寺=ぐみょうじ}のもみじ茜の延長で熔けゆく夕日 夜を連れ来る
スペースをあけた言葉のためらいがふわり消えゆく コ ....
快楽の先に宿りしこの{ルビ種=いのち}背徳散らすマリア横顔
今君が日々重さ増し腹を蹴るこの不思議さを神秘と呼ぼう
生まれ来る{ルビ児=こ}が娘だと知ってから甘さの増した父になるきみ
....
りりるらら春に聴いてたメロディを小声で歌う秋空のした
過ぎ去りし振り返らない思い出の顔を忘れたことに気づいた
キッチンの隅で出番を待つ土鍋 吐く息白く浮かぶ冬まで
冷えてゆくほど澄ん ....
灰皿で甘く焦がされゆく髪に いつか去り逝くこの身この世を
ベランダから見た
自分の部屋は
まるで他人の抜け殻のようで
少しだけぞっとした。
自分の中だけを生きていたら
見えないものがたくさんある。