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夜明けの窓は孔雀色
今年もまたうたうように
アガパンサスが咲いている
七月はわたしの中で
いちばん甘く実る果実
君はいつかそれを 別の名前で
呼んだかもしれない
少しずつ風がうご ....
溺れていく夏の海の傲慢を乗り越えて、原色
の光景にすべりこんでいく。速度を上げろ。
減速してはいけない。止まってしまったら、
たちまちにして恐怖がおまえをとらえるだろ
う。夏に生きる恐怖。夏に ....
初夏の雫を集めた、里芋の
透明な葉脈の裏側で
夏風の子が
小さな産声をあげる
まだ、うまく飛べない
棚田の{ルビ畦=あぜ}に沿って
緩やかな曲線を描くと
早苗に浮かぶ蛙が
水かきを ....
光る
ざわめく
お前を
連れ出す
打たれる
二人で
稲妻
はぜる
当たるぜ
俺たち
そんな
ひどい
あたった
ためしが
ないのよ
宝くじ
....
戦争も死も憎しみも
裏切りも絶望も殺し合いも
全てを小さなこの箱の中に入れて
スクリーンに映したのなら静かに眺めることができるのだろうか?
神はその外側にいて
また静かにそれを眺めてる
はじめて海を知ったのは
函館山の東側、岩だらけの海岸でした
あちらこちらに見える対岸の
私との間は早波で仕切られ
たくさんの潜水艦が行き来しているのだと
おじいちゃんに教わりました
次 ....
屋上から見える裏山の
天辺にかかった雲から
差し込んだ陽射しを眺めて
少しだけ休んでいこう
疲れきっている訳でもなく
悲しいって程じゃなくて
緩やかな風に煽られた隙間から
時どき覗い ....
わたしは 常時(いつ)も香っていてあげよう
発酵した 上質のワインのように
ふわふわ ぷかぷか
君たちの家に 漂っていてあげよう
「わたし」を嗅ぐだけで 毎日君たちが
ああ やっと帰って来た ....
今朝のおまえの目が
あんまり緑だから
どうしたって聞くと
やっぱり風邪だ
普段体調がいい時は
緑に茶色が散っている
水の底に見たブナ林のような
おまえの目
それが濃い緑に張 ....
笑ってたんだ
笑ってたんだ
きっと
あったかい土に抱かれて
優しい雨に愛されて
まだ見ぬ地上の風に憧れて
君たち 泥んこぼうず達は
笑って
幸せに
暮らしてたんだ
そして 素直に育 ....
ずっと先に
時間も場所もとびこえて
わたしのような人間が生まれるとしたら
そのそばには
あなたのような人間も生まれるに違いない
ここは絶望の国
らちかんきん
ごうとう
ごうかん
じさつ
ほうか
せっとう
ぎょうむじょうおうりょう
ほごせきにんいき
じどうぎゃくたい
さつじん
そういう
耳ざわりの ....
星の茂みの広がる{ルビ遠音=とおね}の空で
回音をのぼりつめて円頂で弾け
ふくらんでゆく
重い光で発散しながら
無重力して律動する心臓
瞬く今晩は
{ルビ青柳=あおやぎ}に迷蝶がさ ....
在る
始まって以来続いてきて
この枝の伸びやかな道道に
茂る葉の呼吸は瑞瑞しい
それも
小雪のちらつく昨夜の雲上の月も
陽炎のゆらめく送り火も
私を育ててくれる花娘
季節の ....
いつのことでしたか
忘れてしまいましたが
絶句したその無言の先に
あの日がちらついていたのは、確かです
日溜りの微笑む
静けさのなか
涙は花ひそめ
無表情に泣いていました
それはか ....
やまねの親子は毬が好き
雪の山道人気が途絶え
歩く人影消えたので
やまねの親子が顔を出す
寒い朝だとおとうさん
冷たい朝だとおかあさん
明るい朝だと子供たち
冬眠醒めたら遊ぼうね
....
距離にたたずむ私の{ルビ首=こうべ}は
ついに飛び去ることはなく
天と地を結び
{ルビ収斂=しゅうれん}を{ルビ咽下=えんげ}している
星々がめぐり連なる
境界
深く眠る視線は果てを知 ....
魔法瓶に夜空をみたし
ほの明りの朝、遠足に出かけた
あいさつをしたら
光の丘で
化石だった風が
重く熟して
翼となった
種子
小さく{ルビ瞬=まばた}きをすれば
霧散している光へ ....
今日の空をおぼえておこう
胸ポケットのさみしさは
空のむこうに飛ばしてしまおう
いつの日か
同じような雲のした
この空 この風 この匂い
ほほえむときがきっと来る
今日の川をおぼえて ....
三日月を笑う
瞳の奥には
最果ての傷がひそむ
傷つくことをおそれて
前へ進めるのか
団地の裏の
十字路を
青やかな銀河の右旋系
空き地の{ルビ草原=くさはら}に影が伸びる夕景
....
鏡に映す)顔が白く仄めく
朝日の刻々と刻む音に
変容する影
どうしてか かなしくなる
私という生きものは、。
例えば(いけないかしら躍るように)、
昨日買った手鏡が、
私を映すという ....
それでも朝は来るので
わたしはまた生まれてしまう
約束されていないことなので
途方に暮れている
わたしは手を持たないので
仕方なく
眺めている
ふりをしてみる
鳥の不思議な動きを少 ....
ケイコは土曜日の晩、眠ることができませんでした。
それはなぜなら彼女は次の日の朝に彼女自身によって
ケンイチのお墓に行く事を決めていたからです。
お墓参りに行く時、彼女は彼女の一番好きな緑色のワ ....
いま この傾いた陽の中で起こる
出来事を讃えよ
祈りは虚しく 鳥撃ち落し
霜の降下は 胸患いの効果を現す
空にかかる花は 萎れ 枯れ果て
この寒気にふさわしい 闇が
笑いを噛み殺して ....
橋のうえに
大きな虹がでたので
ぼくはトイレへおとうさんを呼びにいき
台所へおかあさんを呼びにいき
お嫁にいった妹を呼びにいき
死んでしまったおじいちゃんを呼びにいき
介護施設のおばあ ....
ぶらんこは
すすまない
すすんでも
もどってくるから
たのしい
ぶらんこは
うたう
きーこきーこ
へんなこえで
うたう
ぶらんこは
さみし ....
{引用=さぼりぐせのある小学生でした
うそつきでした
さんかくじょうぎが さみしくて
青の奥
散らかってゆく雲
君がつくえに立ってふざける
ちいさな教室
きいろい ....
彩るうたを{ルビ口遊=くちずさ}む
こんな命があるかしら
{ルビ水=み}の{ルビ面=も}に蝶が浮いている
ちらともせずに浮いている
こんな命があるかしら
あすを知りえず浮いている
....
底ひ無く
心 沈む
みあげれば あおい闇
青ざめてゆく風のなか
声も無く笑った
雨の夢は白らかに咲く
虹のもと影ろふ立ち姿
底ひ無く
心 沈む
みあげれば あおい闇
....
(当時のニュースを聞きながら)
昭和天皇! ヒロヒト天皇!
とうとうお亡くなりなのですね
僕はあなたが 笑顔のような
そうでないような顔で
手を振っているお姿しか見たことが無い
....
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