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生まれて間もない赤ん坊が眠る部屋の
窓枠に一羽の{ルビ鶫=つぐみ}がとまって鳴いている

ききききくわっくわっ

鳥の言葉を翻訳すればこうなる
――この家に新しい人が増えたよ
  次の世 ....
痛いの痛いの飛んでいけ
お母さんのおまじない
お婆さんの祈り
叔父さんの戯言
ボクの不貞腐れ
子牛の好きな
芋羊羹
手を出すお金に
叩かれて
傷だらけになった
青春
春なのに ....
きみがわたしじゃないってことをいまのいままでわすれてました


今日雨が始まった
冷たくなった指先をいたわる、握り締める、げんこつ
ためいきも残り少な
そしてずっと泣かないまま ....
もりのむこうから
はるばる
たずねてきてくれたひと
やあやあ
おはよう
きれいなはながさいていたので
あなたのことを
おもいだしたんです
それじゃあ
また
にっこりとわらって
 ....
今朝テレビで観たけど
そっちはすごく寒いみたいだね
戦後最大級の寒波ですって
アナウンサーが興奮気味に喋ってたよ
いま戦争の真っ最中なのに
戦後だなんてなんだかおかしいな
ちょっと遅くなっ ....
トキくんはひどい

トキくんは天才科学者

トキくんは発明がスキ

トキくんはたまに変な機械をあたしに使う



トキくんはひどい

トキくんは時間を止める機械を作った
 ....
今さっき ここで ため息の漏れる音を 聞きませんでしたか?
それは 僕のため息なんですけれど 聞こえてしまいましたか
そうですか わかりました
ならば 貴女はどうしてくれますか?
僕のため息を ....
ミルク飴 の包み紙
くちょっと 丸めた

剥がされた まるみ
ころがされ とろけ

消えた 
ゆるく、なります

( ゆるく、なります )

髪の毛の先っぽ
まで
凍ったまま、に
肩までつかっては
たちのぼって消える
白、を
ひとすじ、ひとすじ、
つむいでゆく

わ ....
花がさいたよ

どこか 風の中で
そんな声を聞いた
五月

娘はぼくの手を引いて
お歌をうたう

元気よく帰ろうね

青葉の無限について
ひもとくうたは
いつの日か
にぶい戦争として
終わりを迎えます
それでも
雨のこと
肌にしみついて
忘れません

うれしいね
きっといつか
血は海のた ....
社内、おはようございます、僕、おはようございます、君

会議、報告、書類、相談、連絡、確認

視線、君、瞬間、交差、僕、逸らす、君、電話

昼、行き、通り、硝子窓、向こう、会話、君 ....
机の上の図鑑はいつも

同じページで広がっている



そのひとことが

また


言えなかった
氷雨 
黒い
滴る 
窓硝子
のよう に
街並
ただ 
ただ
静止 する


僕ら
ゆく ゆく
ゆく 

く 
果て 



静止 
する 祖母
静止  ....
本当は存在しないもの
駄菓子の当たり
国境線
赤道


本当は存在するもの
自販機の当たり(たまに当たるんだぜ)
戦争
孤独


ほんとうはさみしいんだ
ほんとうはね
やぶれた風が僕に聞く
ここから呼ぶ?帰る?
木の葉がすごい速さで
転がり巻き込まれてく
浮遊の憧憬の走りみち
風の声を小脇に抱えて
笑う木の葉を追いかけ
走るんだよ走るんだよ
三つ ....
 月を追いかけて走る列車の窓に、遠く盆地の灯りが瞬く。小さな灯りのひとつひとつに、ことなる色があり、匂いがあり、温度がある。それを列車の中から感じるとることはできない。
 車窓を通りすぎる灯りの ....
 一九八七年八月五日、暗い森を抜けでるとそこは水門だった。水門は二重の柵に囲まれていた。水門を見つめているうちに私は携えていたノートブックとペンを川に投げ捨てていた。呼吸が乱れ歩行に苦しさが増す。私は .... 時は風を越えて
嘶く鳥の藻屑を溶かす

はじめて母が「アボジ」「オモニ」と言った今日
はじめて母が自分の言葉に朝鮮を滲ませた

思えば母の話す言葉に朝鮮語はなく
日本の中で生きてきた自分 ....
わたしの鼓動を
息するように
ねむるあな
たの湿った髪は
刈られたばかりの芝生の香
り で
さわさわ
かすれ
こころ
なやま 
月明かり 淡い金色の光迷い森 月明かりだけが道を照らす
シーンとした真っ暗な木々がら聞こえる鳥の声

店や家がなくなっても
体が道を覚えてる
木 草 石 を覚えてる
いまは何もないと ....
俺は

あなたのことを

小説に書きたいよ

その激しさを

その生き方を


あなたは

俺に聞くだろう

だれのことを書いたの


それは

俺が精一杯書い ....
この世には
頭痛証明書はないのに
頭痛薬をくれる君がいる
  

秋も終わろうとする頃の曽々木海岸は
夏の終わりの穏やかさや冬の激しさもなく
ただ駐車場から公衆便所へと歩く僕は
景色に吸い込まれて
浜には
放置されたものなのか
駆動機もついて ....
何人もの人が私のそばを
通り過ぎて行った

のではない

振り返る
そこには私がいない

通り過ぎたのは
私のほう

もう戻れない

ことばを失う
むしろ鮮やかに

悲 ....
ハンドルネームで呼ばれることにも
ずいぶん 慣れたよ

最初
これは嘘だと思った
みんなそうだろう自分で呼ばれたい名前を選択するそんな都合のいいこと
見せたい自分に
なるということ

 ....
わたしのいきかたは
ひっそり
しずかに

ひっそり
ひそひそ
ひそひそひそり


ひっそり
ふざけていきてます
  iはアイ
  わたしはわたし

  イマジナリィがどうして{ルビ虚=うつろ}であるわけがあろう

  銀河はギガの銀河 G線上のアリア
フルスピードの余韻で橋の上 いつまでも固まっていたかった
変なポーズで
髪の毛の特に尖ってるところを選んで磨いていく
ゴーグルをいくつもくれる羽根に泣かされても
いつの間にか体がツルツルして
 ....
とうといのです
ぽかぽか日和だねえ、と
ぱたんぱたんと洗濯物を干し
ついでによいしょ と
お布団をはこぶ

あのとき
わたしにお布団は大きすぎたのです
お母さんの大きな手で
運ばれて ....
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