トレーのすみっこにたまった水を
ひょい、とつまんでそれ
愛だ なんて
あたしはいくつ細胞を集めても
1にも満たないのに
キスはいつも
練習だ
別のところであたしたちが
同時 ....
『やっぱりおおかみ(佐々木マキ、73年、福音館書店)』
0(プロローグ)
(おおかみは もう いないと
みんな おもっていますが
ほんとうは いっぴきだけ
いきのこって い ....
おにいさん。いくらそばでも遠いねえ 死にたいひとりをわけあう無言
お茶を出してはありがとう、なんて膿んでるわたしだけ日々のモノクロ
つまるわたし風がふいても音ばかりの海今日も匂うこ ....
散歩の途中で
くしゃみをすると
塀の向こうから犬に見つめられて、困った
立ち止まって見つめ合ってみるけれど
悪いことをした
わけではなく
少しだけ難しいことを
難しく考えてしまうから ....
しゃららん
きみのあしくびについた
すずが 鳴るよ
うさぎの
耳とコンタクトレンズ
きみに似合うのはかろやかなプリエ
チュチュの波が
ひるがえれば
はるのうまれる
....
俺はそうやって空を飛ぶ、毎夜。
昨日は肉を喰った。かたい肉だ、ブラボー!
だから俺は肉が好きさ、裏切らない。
肉喰えば俺はまた空飛べる、今夜も。
いつまで肉を喰える体でいられるか分からない、
....
さよなら国は
朝でも 夜でも
「さよなら」とあいさつします。
みんな みんな
笑顔で「さよなら」をかわします。
時には おじぎまで
時には なみだまで
ボクがいる ....
娘のおえかき画用紙に 黒いクレヨンでおおきく ぼくは
パウル・クレーの天使の絵をかいた。
単純なモノクロームの曲線。いくぶん丸みをおびた輪郭。
やさしく閉じたひとみ。かるくほころんだ口も ....
白い朝 サンタクロースを 待ちながら 小さく君の 名を呼んでみる
感じない掌の上に
鳴かない鳥が
人のように瞼を閉じる
冷たい雨の降る
コンクリートの上で
静かに眠りにつく
戯れるように
温度を残して ....
サイレンが変なメロディつけて鳴っていて
校舎の窓にほおづえついていると
校庭ペンギンが
横目でこっちを見てる気配
すべりだいの隣のやつ
昨日ノリちゃんが
すべりだいの時にパ ....
エミリー
あなたと最初に出会ったのは羊水の中
あなたは何も言わず
私を蹴って押し出してくれました
あなたはそれっきりそのままで
難産だったと語る母にあなたのことを訊いてみたのです ....
裏庭のトマトをもぐようにわたしはわたしになまえを
いくつもつける
(たとえばフランチェスカ、など)
そこにいるわたしテーブルのうえのわたし
わたしがすでにいないところにいるわたし
テーブルの ....
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