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いつの間にか春だった
去年の夏に出した
扇風機は秋を過ぎ冬の間も
僕の部屋にあって
まるで使い道もない無駄な存在として
小さく佇んでいた
僕は
冬の寒さに凍えながら
扇風機を回 ....
ハンバーガーセットを注文すると
工場のベルトコンベアに乗せられ
出荷される電子レンジみたいな気分になった。
ハンバーガーが出来上がるまで三分かかると
店員の女 ....
少しだけ悲しいお話をしたあとに
あなたは
少しだけきれいになったようでした
まるでいいことばかりじゃない
そんな嘆きを語っていたわけではなくて
これから先のことをからめて
あなたは
....
手のひらを日傘にして
眩しそうにする
あなたの顔の半分は照れている
隙間という隙間から
光は影を埋めようと入り込む
もうちょっとと思える瞬間が好き
たとえば少し困らせて
泳い ....
人さらいは人をさらったことがない
これからもさらう予定がない
けれど人さらいは人さらい
それは何の比喩でもなく
人さらいが人さらいであるということだ
何故人さらいは人さらいなのか
生まれた ....
五分後には
起きているはずだからと
忙しく鳴く小鳥を
なだめて眠る
親鳥は必ず来てくれる
と
大きな口を開けて
始まりの声に耳をすませば
それは静かでも力強いことに気づく
あなたは
不確かな未来を希望にからめて
堅く結んだ約束を口ずさむ
こぼれたいくつかは落下して砕け散っても
受け止めたいく ....
君はとろけるくらいの未熟さで
むきだしな僕を包んでくれる
その優しい色は
あざやかでなめらかな感触
デミグラスソースの中に沈みそうになっても
小さな浮島のように寄り添って
深い味を奏で ....
虚無をまとって闇を隠せば
それは限りなく深い透明のように見える
あなたは
自分を見せることなく
優しさを浮かべた瞳で見つめる
僕は
その優しさの結晶に自分を映す
一つの優しさ ....
春のぬるい風をどうしても愛せない。
凍てついた枯れ枝の尖った輪郭を
冴えた静寂の中を立つ潔癖な冬木立を
ただ耐える以外には何もしないですむ季節を
ぼくは心底愛していたので
ふくらみはじめたつ ....
それはちょうどしんじゅのくびかざりのようで
よくみるとみんなちがってみえるひとつひとつが
それぞれのかがやきをはなっているふしぎと
うちけしあうことなくよりそっていられるあなたの
....
伝えたいことを一息で打ち込んだら
何て書いてあるのか解らなくなった
変換キーを押すたびに
簡単なセリフが難しくなってゆく
それでも
送信する
不思議と何かを伝えた気になり
不 ....
静寂が満ちるのを待つ
あなたは
広げた想像の張力に身をゆだねて
空を映す水面に静かに浮いている
手のひらをつぼみにして
ゆっくりとふくらませるとき
わずかな空間の揺らぎが
水中を ....
張りつめた風の端
やわらかい記憶の糸をほどけば
泣いてしまうかもしれない
あなたは
ほころぶ桜の薄い花びら
その散り際の光景を思い浮かべるとき
過ぎた時を惜しむ眼差しで
未来を見つめ ....
雨が降っています
引力に引かれて。
同じ時間、地球の別のどこかでも
雨は降っているでしょう
僕には分かる筈も無いけれど
大地ならば手に取るように知る事が出来るでしょう
それは
乾 ....
指先であそぶ旋律がピアノの鍵盤の上を流れて
部屋に溢れるやさしい音階のすきまに
天球図は青くひろがってゆく
東のかなたの
さそりの心臓は自ら発火し
そのきらめきは引き出しの奥で眠るルビー
....
感情の糸をわたる指先は
安いヴァイオリンのように響いて
逆立つ髪を宥めれば
傾いた首の方へ流れてゆく
(鼓膜を抜けて届いた先には
やわらかいあなたがまるまっている)
明滅 ....
ミルクが欲しい1歳は
男が欲しい21歳に
あっけなく捨て去られる
新しいゲームソフトが欲しい12歳が
プラダが欲しい32歳の
財布から金を抜き取る
夢が欲しい33歳は
安定が欲し ....
覚えてる
迷ったときの指先のちょっとした仕草とか
暑い室内でむっと漂ってきた身体の匂いとか
正午、君がサイレンの口真似をすると
僕らは作業を中断して
いつも小さな昼食をとった
今日 ....
いつもいつもいつも
いつもいつもいつも
いつも
夕になったら眠くなってしまって
そのまま夢に消えてゆく
タイム・イズ・マニィ
いつの間に
僕は夜のしじまに焦がれてしまったのだろう
....
緑色のコップは
プラスティック
プラスティックが緑色の
コップ
どうでも良い事を気にする細胞と
可笑しくない、可笑しくないよと
言い聞かせる
細胞、細胞、細胞
緑色のプラス ....
ホッチキスの針よ
俺の兵隊となれ
兵隊となり武器を持て
突撃
そして発射
せよレトロ光線
七十年代のビビビ
人間万事バンジージャンプ
ロープをつけずに
ジャンプした俺の恋人
ば ....
駅ですれ違った女子高生が
「アンタ詩人になりなー」
と友達に言っていた
ポエジックってのはなんて恥ずかしいんだろう
否定しようか?簡単だけどさ
「詩人病ですね」
「詩人病?」
....
夜の浜辺で一人
寂しい叫びを{ルビ宇宙=そら}に放り投げる
震える声は
一枚の手紙となって、舞い上がり
静かな波の唸りの上を、舞い上がり
海の{ルビ面=も}の、
月の光の道の上を、舞い ....
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JUSSAが声をあげたのは
疲れて帰ってきたわたしが
テーブルの上に並べられたコップの
右から3番目を何気なく飲みきった後だった。
JUSSAは、本気で怒り
また「ミ」を ....
古い体温計が、もてあそんでいた手の中で
音も立てずに割れました。
すらりと ななめに切れた指先から、
白いシーツに ぽたり と赤い血が滲みました。
体温計のガラスの管からは、夢のように美し ....
砂場ではいつも
大きな壁が作られようとしてる
水をかければ崩れてしまうのに
すべての葉を散らした体内で
葉たちはもう
おしゃべりをしているころだ
鏡の向こう側に居る僕とバトンタッチ
右手右足と左手左足のチェンジ
(顔は左右対称じゃありませんあしからず)
正反対の自分になりたくてさ
とは言え
左回転を始める時針が
左右ひっくり返し ....
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