青く発光する塊が、
美しい水で鎮められる

影のない真昼、 
明るい夢の瓦礫から 
神々の失敗のかけらを拾う 
穢れた土を、 
いくども水で洗い流す 
その水がふたたび海へ還る

 ....
 それはぼくの口をついて出たけれど、そのたびにまぎれもない呪いとしてできるだけ離れたところへ遠ざけ、忘れようとした。もっとも不当な予感だったし、書きつけることによって、それが現実のものになるのを恐れた ....  ソニアは悲鳴をやめ、しわくちゃになったシーツを引っぱり上げて台なしになった魅力を隠すと、みっともなくのどを鳴らして悲劇的な表現に熱中しはじめた。ぼくはものめずらしい気持で彼女を仔細に眺めたが、それは ....  こうなるとフェルナンドの狂的な公理の一つを認めないといけなくなる、偶然などありはしない、あるのは宿命だという。人は探しているものだけを見出すのであり、心のもっとも深く暗いところ、そのどこかに隠れてい .... (…)物哀しげな空には雲一つなく、大地はまさにわれらが主イエス・キリストに倣って吐息をついているかに見えた。そのような陽光のみちあふれる、物哀しい朝には、わたしはいつも予感するのである。つまり自分が天 .... 真実の芸術は偽りの名誉を超越している。
(ナボコフ『青白い炎』註釈、富士川義之訳)

Verba volant, scripta manent. (言葉は消え、書けるものは残る)
(ナボコフ『 ....
任侠とロマンは、
彼らの得意分野だった
つまり人買い、
産地偽装、
海と陸の物流、
そして廃棄物の処理など

コンテナの積み上がる港から、
数多の流通店舗まで
関わる人と物流、
リ ....
(…)当時、彼は父の農場で働いていたポーランド人の女中を愛していましたが、夢想のなかで自分がこの美しいひざの上に、女中となった聖処女のひざの上に坐っているのだと想像し、女中を聖処女に混同しているのでし ....  入り江にて

 大阪から車を走らせ、片道三時間。途中のサービスエリアでスマホを確認すると、通知に追われる日常がそこにあった。
 やがて夜が明け、寂れた港町を抜けると、道は雑木林と露出した山肌に ....
いつから家は家だったのだろう?
(チャイナ・ミエヴィル『クラーケン』下巻・第五部・59、日暮雅通訳)

ドアってやつはいつドアでなくなる?
(ジョン・スラデック『時空とびゲーム』越智道雄訳)
 ....
「籠モル化」という言い方はまだ一般化していないが、ここでは詩の現場で見られる閉鎖的な相互評価の力学を指す仮称として用いる。語源は特定のグループに「籠もる」ことを強調した俗称で、少人数の内輪に作風や価値 .... 人柱法(抜粋)

公共施設は、百人収容単位につき一人の人柱を必要とする。
千人を超える公共施設に関しては、二百人収容単位につき
一人の人柱を必要とする。人柱には死刑囚をあてること。  ....
まるで涙の川ね
 ルイ、リバー

わたしの胸に、
水音がせせらぐ

白い河原と、
仄かなことばが残した
透明な軌跡

ひとり、
揺らめく水に姿を映し、
零した、
 哀しみの、 ....
目覚める
 と、
ここは深夜の密林

灯火に浮かぶダイニングバー

戦闘服のジェシカが店で
バナ・ナンカを刻む

よく切れる
薄刃包丁を手に、
ジェシカが正義を振り下ろす

 ....
  〇


きのう、友だちと水死体について話していたのだけれど、水死はかなり苦しいから、水死はしたくないなと言ったのだけれど、ヴァージニア・ウルフは入水自殺だった。ジョン・べリマンも入水自殺 ....
わたしのさみしい骨のゆくえは
乾いた風吹く荒涼とした地
どの生き物にすら踏みつけられることもなく
ただひたすらに転がってるだけ
あしたなら抱えきれないほどあって
きのうのひとっつも無い寂寞
 ....
  〇


ぽつぽつ、と、将棋盤が降ってきた。と思う間もなく、将棋盤が激しく降り出した。じゃじゃ降りの将棋盤のなか、道に溜まった将棋盤を一つまたいだ。街中が将棋盤に濡れて、びしょびしょだった ....
  〇


トウモロコシ畑が黄金色にキラキラと輝いている。一粒一粒の実から潜望鏡がのぞいている。死んだ者たちが小人の幽霊となって、一粒一粒の実のなかから潜望鏡でのぞいているのだ。百億と千億の ....
コンコン、と
ノックはするけど

返事もしないうちに
入ってくるママ

机の上に
紅茶とお菓子を置いて

口をあけて
パクパク、パクパク

何を言ってるのか ....
  {ルビ蟷螂=たうらう}よ その身に棲まふ禍(まが)つもの おまへの腹はおまへを喰らふ


 小学生のころに、道端とかで、カマキリの姿を見つけたりすると、ぼくは、よく踏みつけて、ぐちゃぐちゃ ....
{ルビ小夜=さよ}、{ルビ小雨=こさめ}降りやまぬ{ルビ埋井=うもれゐ}の{ルビ傍=かた}へ、
{ルビ遠近=をちこち}に{ルビ窪=くぼ}溜まる泥水、泥の水流るる廃庭を

葉から葉へ、葉から葉 ....
{ルビ屑屑=せつせつ}と自慰に耽る{ルビ雌雄同体=アンドロギユヌス}。
{ルビ人葬所=ひとはふりど}にて快楽を刺青するわたくし、わたくしは
──溶けてどろどろになる蝸牛。*

さもありな ....
窓ガラスに

雨垂れと

蝸牛

頬伝う

私の涙と

あなたの指
ガス燈の灯る、
光の街は
地図にない
ヴィヨンの橋影が
夜の流れに
揺らめいている

街行く人も
名を伏せた仮面のまま、
濡れた石畳の道を
忙しく
通り過ぎた

裏通りの女も ....
真夜中、夜の公衆便所
  消毒済の白磁の便器のなかで
    妊婦がひとり、溺れかけていた
      壁面の塗料は、鱗片状に浮き剥がれ
       そのひと剥がれ、ひと剥がれのもろ ....
髑髏山の蟻塚は
罪人たちの腐りかけた屍体である。

巣穴に手を入れると
蟻どもがずわずわと這い上がってきた。

たっぷりと味わうがいい。
わたしの肉体は余すところなく美味 ....
 青空が遥か高く張りつめた時
 草も花もない地上に
 私は頼りなく立っていた

 掌の感触は忘れていない
 あなたの爽やかな顎をなで
 たくましい肋骨を数えた
 奇妙に光る瞳で私を縛 ....
死に
たかる蟻たち
夏の羽をもぎ取り
脚を引き千切ってゆく
死の解体者
指の先で抓み上げても
死を口にくわえてはなさぬ
殉教者
死とともに
首を引き離し
 ....
夏の一日
わたしは蝶になりましょう。

蝶となって
あなたの指先にとまりましょう。

わたしは翅をつむって
あなたの口づけを待ちましょう。

あなたはきっと
やさしく ....
あめんぼうは、すばらしい数学者です。
水面にすばやく円を描いてゆきます。
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