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祖母の吾とほく見守る子の巣立ち
満腹やひねもす籠る花の雨
情報源多彩なりけり{ルビ事始=ことはじめ}
にょきにょきと土筆の坊や川の土手
すみれ草ひしゃげて咲きぬ草の中
林道や天と重なる山桜
頬を打つ風や名のみの春きたり
雨毎に数増しにけり落椿
永らへて無事なる生や四手辛夷
{ルビ三人=みたり}居て一人寡黙や沈丁花
希望の春なんて
縁遠いことだと
思っていた幾歳月
春は愁いの季節なの
自分に聞かせた青春
共に学んだ彼らは
希望に胸を膨らませ
巣立って行った
遠い遠い
むかしの思い出が ....
{ルビ蟄居=ちっきょ}して見るものなべて春めきぬ
梅が香や未だ明けやらぬ戸口まで
{ルビ去年=こぞ}植えし{ルビ鬱金香=ちゅーりっぷ}の芽を数へけり
此処に居ます春の小花の声聞こゆ
....
父と子のキャッチボールや秋日和
刻々と秋の日暮るる帰り道
山腹に枝垂るる紅のこぼれ萩
安否問ふ娘のメール秋晴るる
早々と門戸を閉づる秋の暮
芒の穂小寒い風に揺れやまず
....
夏と秋の狭間には
あらゆる変化が現れる
蜜吸う蜂に入れ替わり
黒い揚羽がやってきた
やつれて籠った極暑の日
でも愛おしい夏だった
夏の終りの寂しみを
振り向かないで次は秋
....
{ルビ蟋蟀=こおろぎ}の鳴き音追ひくる戸口まで
切り戻しせし秋茄子の花淡し
音もなく庭石濡らす{ルビ夕立=ゆだち}かな
縁者の少い
私の身内
いとこ半の
恭ちゃん
母方は
敬ちゃんだけよと
恭ちゃんは
いつも言う
去年の春に
恭ちゃんの夫は
長い患いで死んだ
二人が家に来たのは
遠い ....
{ルビ昨夜=よべ}の雨雫そのまま丸い瓜
空の青残る夕暮れ蚊遣り焚く
二人連れ老いの旅路か夏椿
シャラの木とふ別名のあり夏椿
寂びしきはけふも出で来ぬ夏月かな
{ルビ五月雨=さつきあめ}自給自足の三度飯
今年また子より五月のプレゼント
新じゃがを手探りで掘る至福かな
{ルビ紅=くれない}の花群濡らす青葉雨
そら豆の皮剥く雨の日曜日
朝な夕な白き芍薬傘の中
香の{ルビ著=しる}し檸檬の花の散りしあと
柿の花{ルビ萼=がく}に隠るるみるく色
新じゃがを掘る喜びの秘かなり
芍薬のつぼみ赤子を見遣るごと
目の先の馬鈴薯の花いと{ルビ小=ち}さく
卯月尽子は出かけたかこの雨に
ポピーゆれ風とまる間のワン・ショット
雨ひとひ友の差し入れ嫁菜飯
草の雨籠る独居に佳き便り
今朝も亦出会いありけり名草の芽
畑の菜を朝餉の材に春{ルビ長=た}ける
イタリアンパセリひと籠摘みにけり
曲がり角周ればかなた山桜