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少年のやわらかく
細い指先に宿るのは
老獪で強豪な指し手
不釣合いなやさしい眼で
駒を狩る
序盤は研究で速く指し
中盤は一時間余の長考に
沈むこともある長考派
質駒はもちろ ....
時が少女に恋をした
そのあまりの美しさに
流れをとめて数世紀
まるでブラックホールの
なかのように
とまってしまった時の流れ
カーン・ダンヴェール家 ....
もう立ち直れないね
と
水没した家から出てきて
アナウンサーに話しかける
一見元気そうな
初老の婦人の
派手な花柄もようの
ワンピースが
な ....
ぼくが一番きれいにみえる
秋がきたよ
と月が夜に胸をはる
中秋の名月というけど
ぼくには迷惑だ
と夜が月に
言いがかりをつける
まあまあ
と雲が仲裁にはいってきて ....
あらゆるものが
ゴミと化した時
ぼう然として
ただ涙だけが
こみあげてくる
大切な思い出が詰まったものを
助ける事ができなかったくやしさが
涙となって ....
悪魔とはいつも
冷たさにふれて
その姿を現わす
冷たい仕打ちで生まれる
殺意という悪魔
冷たい言葉で生まれる
憎悪という悪魔
冷たい態度で生まれる ....
堤防決壊の原因を説明する
専門家の話は
誰が聴いても納得できるものだ
ボトルネックとかバックウォーターとか
蛇行の外側に加わる遠心力とか....
こんな簡単な ....
移動できる住宅がほしい
トレーラーハウスのように
移動できる住宅を
真剣に考えるときがきている
いつ地震がきても
タイヤや基礎が
衝撃を吸収する
車の ....
なぜなのだろうか
わたしは今
書き急いでいる
まだ人生は
これからというのに
モーツァルトの
ト短調シンフォニーのような
走り過ぎてゆく悲しみ ....
10月になるのを
どんなに待っていただろう
レザーは
バイク乗りのためにあるなんて
とんでもない
確かに
事故って転倒しても
怪我が軽く済み
....
虫の音が
その訪れをささやき
雨粒に溶け込んだ
その香りが
地上の汚れを
清めながら
焼けついたものすべてを
冷やし
夏の暑さを
....
エトロのペイズリーが
好きなひとだった
なにからなにまで
ペイズリー
ぼくにも
買ってくれた
ペイズリーの
二つ折れ財布
とっても長くも ....