四百年に一人の少年
st

少年のやわらかく
細い指先に宿るのは
老獪で強豪な指し手

不釣合いなやさしい眼で
駒を狩る

序盤は研究で速く指し
中盤は一時間余の長考に
沈むこともある長考派

質駒はもちろん
敵陣にある
王を除くすべての駒を
自分のものとした時の

可能なあらゆる筋を
読んでいるとしか
思えない正確さ

左手にもつ扇子の音と
上半身を揺り動かすリズムで
時々お茶を飲みながら
読みふける


少年の最も強い終盤は
華麗に彩られる
ビクトリーロード

終盤の詰み筋を見逃すことは
ほとんどない




自由詩 四百年に一人の少年 Copyright st 2019-11-10 10:31:04
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