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【さかくだり】
あの懐かしい橋を渡れば
蛙のひしめく道がある
いきものを ころさないように
体が傾むく川下にむかって
足をゆっくりと あるく
あの懐かしい橋を見下ろせば ....
きみの心臓
サテンの雫
パールのマチ針で
小刻みにタックを寄せて
ずらさないようミシンで縫えば
ほら丸い
きみの吐息
ぬめりとして手によく馴染む
暗いところで静かに光る ....
病室が
まあるくしかくく転がって
赤子と死者が廻ります
消えない汚れは
ないけれど
拭えど
壁は白いから
窓を描きます
朝には消えてしまうけど
指に天体を絡めたら
柔しい繭 ....
「人は後ろ向きでしか進めない」と
偉い人が言ってました
だから時間のずっと先に行っても
私たちは過去を見ています
あんなに苦しかったことも
今から見ると
蚊に刺されたぐらい
些細に思 ....
こうもり
羊飼いの夜をたべ
眠たい指をぬすむ
みたいにして
重たい 重たい
朝が
木香薔薇の花びらより
散り散り鳴っていく
まどろみ
落ちゆく空の白い際
いまも街では恋 ....
まるい
光のとかげ
うしろから頸を締めた
深い 叫びのつぶて
むかしのきみの幻に
許してほしいと上目を遣った
とっくに許されているくせに
....
飾らない言葉を使って
詩を書きたかっただけ
言葉の洪水に押し流されたくはなくて
言葉の香水をこの身に纏いたいだけ
とても重要なことは
とても簡単に言うことができるから
言葉遊びいが ....
霜、踏む、朝
青空をバックにしても
こころが壊れて寒いとき
こんなまんまじゃ屍人じゃないかと
泣きたくなってもこらえた見栄でも。
その夜更け。
弓張月を仰ぎ見て
心に舞う蝶、静かに回る
....
長い階段をゆっくりと
転がり落ちていく乳母車には
誰も乗っていません
あなたたちが見たくないと
目をそむけたから
あの子は最初から
いなかったことにされました
だから
母の悲しみも ....
ええ 夢です
わたしなど夢です
あなたの目にも耳にも鼻にも残らない
夢です
いちばん隅の机の上で
ちぎり絵をふたりでしました
桃のようなほっぺを寄せあっていました
ぼ ....
【公園】
躁鬱な白熱灯が
葉桜のささやきになだめられて
たわわに実った涙を
鳥が、祈るように啄んで
焦げ落ちた空へと死んでいった
【狭い路地】
ヨモギ色のトタンの一軒家
も ....
水ぶくれに縫い針を刺した
ねずみ色の朝 そうだ、サラダでも食べよう
人参を千切りにする
かなり細く綺麗にできた
玉ねぎの生食は胸焼けするから
レンジでチンして、水にさらして
レタスをち ....
パジャマに血が滲んでいる朝は
なぜか少し早く目覚める
眉をしかめシーツを確認する
空は綺麗だ
*
わたしを好きと言う
その唇が
おどけにも見えるし真面目にも見える
アイスコーヒ ....
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