君と星狩りに行ったことを思い出す
空が星で埋め尽くされて、金や銀の星が嫌というほど輝いていた
肩車して虫かごを渡し、小さな手で星をつかんではかごに入れていた
ときおり龍が飛んできて、尾で夜空をあ ....
あるくとおく、流れ流れて
流されてきた弱さを恨むのか
水にとけた光に問いかけた
転倒した月日の果てしなさ
ただ勘違いしていただけだ
月日は数えるだけしかなく
切り売りして歩くお前な ....
雷が遠くで鳴っているという事実を
私の手元に彫り込む
なんて事のない世界を見つめている
幻の七色の心地よさも受容し
足の裏の磁石でバランス良く歩く
さらさらした砂の表面を擦る風の ....
季節はいつの間にか
窓の景色として生まれて来る
わたしは、
季節を食べることもできる
触れることもできるし
ときには、憎むことさえできるのに
馬車のように疾走る季節を
掴ま ....
この星じゅうのいのちとつながれるよ。まぶたを均一にぬいあわせて、あわい吐息ももらさないで、四肢を暗がりにひたしてゆけば、赤色の人びとは黄色く黒くWARNINGをたれながしはじめるから、ソケットにねじこ ....
手の平を透かして、皮膚の内側から太陽が射す
精霊が戯れる木陰にいて
同じ歌を幾度口ずさんでも
けっして消えることのない痕跡
その痣を口移しであなたの皮膚に刻んでは
剥がれ落ちようとする人間の ....
すべての川は流れている
すべての故郷の川は流れている
耳を傾けるならその川の流れを
聴くことができるだろう
乾ききった風と砂しか入らない
窓からせせらぎが流れてくる
台所の床をひたして ....
あの犬の鳴き声が哀しみをいや増して
どの街まで逃げても逃げられないような
死にたいって感情が邪魔で吠えられない夜なら
白々と明ける朝をそのまま凍って待つつもりさ
空白の静けさが ....
【さかくだり】
あの懐かしい橋を渡れば
蛙のひしめく道がある
いきものを ころさないように
体が傾むく川下にむかって
足をゆっくりと あるく
あの懐かしい橋を見下ろせば ....
ある夜
死んでしまつた
畳の上に食べかけの芋がころがつてゐる
その横におれがころがつてゐる
目をとぢることも
ひらくこともできない
お迎へもこない
月の光 ....
うつくしいひとたちに遇ひ
うつくしいはなしを聴きました
空はたかく 澄んでゐました
かなしみはもう とほくにありました
よろこびは すぐそばに そして
手のとどか ....
黒雲に覆われた空から
雷鳴降り注ぎ
驟雨の中を
啼き騒ぎながら飛ぶ鴉
うららかに
影が伸び逝く
削られた肺の形に
木の葉が揺れる
今年だけの命が昔から
そして遠くまで
まる ....
時間の中に
抜け道を作り
空っぽになりたくて
飛び出した
濁った瞳や
淀んだ思いが
自転車のように
回転するから
透明に等しく
輝いていく
手ぶらの私が
帰る場所まで
....
小さなサイコロが
ころがっていく
平坦に見えた道に
傾斜がかかりはじめたから
なにもかもが
かろやかに
だけど
のがれることはできない
さよなら
さよならも
すなつぶも ....
鎌倉の山の間を
歩む叢の隙き間の遠方に
横浜のランドマークタワーが
くっきりと立ち
あんなにも遠いようで
ほんとうは
距離など無いと
汗の伝う頬を過ぎる、風は
僕に云う
....
利き手が庭を襲う
利き手の猛威が教室を吹き荒れて
先生をなぎ倒す
飛行機の旋回も許さない
利き手の猛威
ダリの絵を飾って終息を願った
飽きるほど梅酒を飲むと
エンジン音が鳴るだけで
利 ....
光を消して過ごしました
朝に揺れる光を消して過ごしました
吐かれた煙を夜から夜へ引き継いで
アベンチュリンの若葉を
湛えた私の両目が鏡の中で溺れている
揺れているものすべてを
....
涙を、
光ばかりの静寂に落とす
邪悪な光は冷気の中でたどたどしく転び
火だるまになる
器を焦がしてしまった
とても新鮮な空気を吸いながら
涙を、
月の中の悲し ....
死なないことは分かっていても
発作がおこるとびびってしまう
曇り空の夕方が群青いろだから
僕らはまるで群青のサンドイッチ
死なないことは分かっていても
発作がおこ ....
魔法はいつか醒めるもの
それも残酷なタイミングで
少女時代の楽しいお茶会
永遠に続くはずだったのに
甘いお菓子たちの余韻が
不意に舌先から消え失せて
一緒に王子様の噂をしていた
乙女 ....
花はみずからを
最もか弱い葉であると思って散り
多くの葉は我が身こそ
逞しい花であると思いつつ繁る
樹はそれを黙って哀しみながら
春が花を愛で 秋が葉を罰す ....
グレーチングに足をとられて
突然 目の前の女性が転んだ
最強の赤いピンヒールは 雪の中では
通用しない
美しさが万全なら
どんなことも快調な街が
ひっくりかえった
蛭みたいに艶やかな ....
罪人を眺めている
誰かの腹の中のように風のない夜
迎え火が目蓋の此方
灰に包まれた心臓のよう
ゆっくりと消えて往く
ただ罪人を眺めている
正義については微塵も語らない
なにかを殺し続ける ....
水が水辺を踏みしめる音が
葉と葉のはざまに響いている
終わらぬことを表わす文字が
冷たい場所に冷たく残る
闇が指にひらかれ
光が枝に割れるとき
水は分かれ ....
束の間の輝きが水面に射すと
魚は 眠らない営みにリラリラと
言葉を浮かべ
手に取ろうと揺らめく影を砕いて
その光の枠を抜け出したまま
ほんの夏の終わりの方まで滑ってゆく。 ....
背中の掻き傷が疼くのは
蒼白い月が輝く夜
足音を立てずに風のごとく
走り去って身を潜め
雄叫びを必死に抑えて
爪を立てて歯軋りを堪え
零れる涙を拭いもせずに
朝日が昇るのを恋い焦がれ
....
指先の音階、生活の音色。
季節が肌を撫でる。
人の音や風の音が混ざり合って、
青空がピアノを弾いているみたいだ。
ひかりが水面に反射し虹をつくる。
身体のなかで海が呼吸する。
カレーの匂い ....
いちごみるくのいちごとみるくをぱっくり分離した色の
花は散っていったけど
四月のバリアに張り付いて流れていったけど
またね
ありがちなころがる嘘につまずきたくて、
だけどおとなの ....
水を飲む
がぶがぶ飲む
お腹が苦しいよ
水にも飽きてきたところで
一回死ねと叫んでから
コンソメスープを飲む
コップで五杯飲んだ
そんでうなだれる
俺の人生なんとも言えない
幸せ ....
朝の光を浴びて
少しぬるみ
世の中のさかさまの文字を
投影している
硝子びんの中の液体の揺らぎに
ひと瓶飲んだら死ぬかなと
たずねても
答はみんなさかさまだから
解読できない
プリズ ....
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