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私をとりかこんでいた言葉たちが
あのときを境に
いっせいに遠ざかってしまった
遠景になってしまった言葉たち
とり残された私のまわりの
がらんどう
けれど私は
おそるおそるでも
....
お爺ちゃん
真っ昼間
海辺の無人駅に一人座った
何のために来たのかも分からないまま
海が見渡せる方の端っこの古びたベンチで昼寝をした
陽が傾いて折れたような首元に柔らかい光が当 ....
エンジンを切った軽ワゴンの屋根を打つ
冷たい春の雨のリズム
捉えきれないπの螺旋を
上るでも下るでもなく蝶のタクトで
震えている灰を纏って朝は皮膚病の猫に似る
考えている
....
巡る季節の儚さは闇夜に隠れた月のよう。
一人娘の待つ家に抱える苦悩の薄化粧。
橋の欄干飛び越えてその身を投げる決心も
ひと時待てば揺らぐもの。
支えはあるか?いや、ない。 ....
アンタはねぇ
産むつもりなかったのよ
子供なんて
別に欲しくなかったし
ああ、やっぱり
流しとけばよかった
ごめんねぇ
もう母さんたちダメだわ
アンタたちだけ
....
花の盛りは
誰が決めるの
きれいだね
そう言われたのは
遠い午後のこと
あの日の花盛りが
今甦る
花の盛りは
あなたが決める
振り返り
花ほころぶ
バスに ....
三月の花の香りが
鈍色の空に流れている
降り頻る静電気
うつむく電灯
美しい花粉
わたしはいつも
静かな電気を知っている
春が来る前に
触れられ弾ける孤独、のこと
....
君にミモザの花束を
僕等の揺るがぬ友情さ
美しく風に揺れる
君の耳飾りと同じ色
君にミモザの花束を
僕の密かな恋のせて
君の腕の中で香る
花束の短い命を想う
君にミモザの花束を ....
木片の内には像も形もない
{ルビ自=おの}ずと示す雛型も
なぞるべく引かれた線も
一つの像が彫り出された後で
木片はその内部に
一つの像となりうる可能性を秘めていたと
言えるだろうか
限 ....
同じ作業の繰り返し
飽きもせずに繰り返す
目的は
ペカリに有り
天井のない恐怖
スリルの亡者
憑かれてしまった
その時ペカリ
来たよ来たよ
GOG ....
とてもちいさな出来事が積み重なってものごとが見事にできあがり
それがとても不思議だったりもする今日この頃です
僕の押入れの中に隠された凶器みたいなスケートボードはいつも
わくわくする坂を滑り ....
けものは好きですか、と
君がたずねる
けっこう好きかも、と
僕は答える
けものは乱暴で
けものは残酷だ
けものは正直で
けものは後先を考えない
パトカーのサイレンが
夜を ....
ゆれている黄色い花つくりものみたいな蛍光の色レンギョウ
しだれてゆらゆら揺れている花弁は薄いプラスチックでできているみたいに陽射しのした見えました
神様が蛍光ペンで春にしるしをつけたのかもしれない ....
どうしても見つけられなかった
理由を君は見つけたんだね
そんなささやかな
ありふれた
大切なものを
長い間探していたことにも
ついに見つけるまで
気が付かなかった
母さんも ....
どのくらい引けば客観的に的を得ることが出来るだろうか
中心を触れることも出来ずに運命を終えるかもしれない
悟りに焦がれて至る 人間だものと添えて
己の未熟さ愚かさ阿呆加減に
漸く 趣きが迎えに ....
曇りの日に海へ行った
空も海も灰色なのに
仲介者の努力も虚しく
いまだに和解は成立しない
その国境線は水平で
欠けた世界の端から端までを
頑なに切り分けようとしている
曖昧だが根深いライ ....
弦の張りの上を歩いていた
打楽器の膜の上でトランポリンをするかのように
耳に住んでいた心が旅から戻ってきた
弦の張りでビンタされたみたいに
目が醒めたよ
いつでも
裏切らないね 音楽っ ....
今朝は冷たく澄んだ風と光のやわらかな壜の中
――長らく闇を枕にうつらうつら微睡んでいたのだが
凪いだ二月の日差しは眼裏を揺らめかせ熱を奪い
夢のへその緒を焼く 声を失くした叫びが黒点となる
....
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