すべてのおすすめ
愛などなかったと思うと
体がすうすうした
夢などみなかった
明日など持たなかった
そう思えばすうすうして
にんべんをはずした私の、
うすっぺらい物語も
すこし良いものに思えた
....
慣れた雑音から
都合のいい言葉を拾いだし
持ち帰って洗う
良い音を聞かせ
温い茶をのませ
夜には撫でてやった
ぼんやりと月夜には
影を分けあって吸った
しばらく暮し ....
おもいのほか
ながい旅になったね
と
きみが言うとき
夏はもっと熱くなる
もっと遠くへ行かれたね
と
言い合いながら
右往左往した
春や秋や冬を思い出すと
夏はますます長く ....
蝉が破裂しそうに鳴いている。ぐるりと囲むメタセコイアの枝のすべてから鳴き声が降り注ぐ、時々ふっとそれが止むと、夏の日ざしも相まって、ちょっと世界が終わったみたいになる。
その大きなニュースが ....
熱のなかで
ほどけていくときに
みんな ひとつの 記憶でした
ひすい色の鳥
一切れの歌声
水の運動
ほんのわずかの 知っていること をとおして
世界をみようとするとき
....
咲きすぎておもたい頭を擡げている紫陽花。ばらはとっくに咲き終えて、さっぱりと刈り込まれ、薬を撒かれる。陽をうけて広がってゆくマリーゴールド、日々草、トレニア。階段を降れば日本庭園の水場に睡蓮が浮んで、 ....
雨降りの間際で
それは恋だった
降り出してしまえば楽になる
頭の痛みに似て
激しいほど
わたしたちは
正気を取り戻していく
骨で寝息を守る夜
祈りのなかにあるのは死
死のなかには
小さな庭を作り
可愛いベンチを飾ります
誰も彼もが座れるように
春はみじかくて、すぐ終わってしまう。恋人の背に物語が咲いて育っている。知らないまちの空はどことなく高くて、咲きはじめたばら、パンの匂い、錆、信号機、そういうものに救いを求める。
あたらしい部屋は ....
部屋のなかにいて、やるべきことをあれこれと思い浮かべていると、とつぜん頭のなかがきゅんと鳴って止まってしまう。窓の向こうの方の白い建物に陽が当たってまぶしいさまや、風どうしがぶつかってひゅうひゅう ....
あなたのかわいい
おくれがちな相槌
寒すぎて ちょっと笑ったよね
愛してたけど
愛じゃなくてもべつによかった
隣りあう洗濯物
使いふるされた工具
石ころ
乾いたスポンジ
....
この裡はとっくに爛れて
痛みのない恋をしている
来ない春
燃え上がるほどの心が残っていない
寒寒と炎が
蒼く上っている
指を頬をべたべたにしながらバターを塗るむすめの横顔を見て、なんだか星座をおもった。
美しい空気、美しい景色、愛の横顔。
崩れそうに積み上がった漫画本、いくつものポーチに鞄、色鉛筆にマーカー ....
わたしたちはいつも
夜のなかで 朝を想ったし
眠りのなかで 目ざめを待った
つめたい腕を合わせながら 熱い言葉を望んだし
すれちがいざまに 永遠を願った
決してあらわすことのでき ....
君がいた夜は
物語のように遠くなってしまって
いくつものビルが建て替わった
なつかしい詩を読み、
ぬるい水を飲み
二足しかない靴を交互に履く
平和な日記を過すうちに
こんなところ ....
茶色い紙の小包は手に乗るほどの大きさでここちよく重たく、白い紐で縛られていた。
僕は鋏をつかってそのきつい十字を解く。そして、
ガラスで出来た天使(羽が欠けている)、チョコレート一粒、 ....
長い眠りのあとで
あれは祈りだった
あれは、
ふるく、弱く、新しく、ふるえて、断固として、長く、みじかく、とおく、ごく近く、ギターのようで、空のようで、波打ち際で、空洞で、退屈で、さわが ....
浅瀬で溺れるわたしたちが
いつか 深く
息をできるように
重いぬかるみを這ってさ
乾いて 乾いて
流した涙が
日々を伝い 夢を伝い
川になったとき
この体がいるのは
優しい ....
心の外側で謝ったり笑ったりするとき、自分を消費している感じがしてよかった。精神の空洞に合わせて身体を削って、サイズを合わせようとしていた。自分の欠けているところがはっきりと見えていて、でもなんと言 ....
額に、頬に、指先、肩に、下腹に、クリームをすり込みながら、世界が嘘になった時のことを考えている。もしくは一時本当だった世界のこと。いま飾ってあるのは、八重咲きの小さいオレンジ色のすかし百合、白に赤 ....
朝
僕たちの半分は 燃え残り
がらくたを 集めはじめた
不完全なまま 笑ったり
食べたり 愛した
頂点の すこしだけ手前で
自我をもった がらくたが
誰かのかわりに 泣きはじめた ....
いつまでも思い出す
自分だけちがう靴を履いてきたような所在なさ
裏庭のベンチがささくれ立っていたこと
ひみつね、と打ち明けられるいくつもの公然
嘘ですらない告白
知らない人間ばかり笑 ....
幸福でいることを、なにかに当てはめようとしてしまう。渇いている理由を知るのとおなじに、幸福である理由を、幸福でいてもいい理由を。階段を降りていく夢を見て、涙の乾いてまぶたが開けられないで朝。ま ....
燃える 眠りのなかで
すうすうと 静かに
ひかっている あなたの
寝息をかぞえて
数えて 数えて
その数の
ひとつ ひとつが
ことりと胸に収まるたび
酸素が 血をゆく
心 ....
花の匂い まちの匂い 文の匂い
というものに
あこがれて 今でも
色色なものに なってみますが
わたしには今でも
秋の夕暮の忘れもの、
雨ざらしの古い花瓶、
それとも何も書かれて ....
なにか言うときに
だれも傷つけないっていうのは
(ご存知でしょうが)結構難しいもんです
から、これからあなたは傷つきます。あなたもです
あなたも、あなたも、あなたも。いいですね?
( ....
長い長い光のすじを
たどる気持であるいていた
だれかが声をあげる
これはただの線だ
白く書かれた 一本の ただの
もう少しいけばわかる
別のだれかが言う
のろのろと足はうごいてい ....
わたしたちの花がまだ眠っている早い早い午前、空が朝を始めようとしているところへ、ふいに思い出がやってくる。あの時わたしたち泳げないいるかだったよね、とか、くじいた足をおそろいのバンダナで包んだよね ....
仕事の日数を減らし、眠る時間を増やして、過ごしている。
朝に夕にお湯を沸かして飲んで、家でも仕事場でも花瓶を洗う。
花瓶はいつも清潔に保たねばならない。交わした約束を守らねばならないの ....
境目が淘汰されて
すべてはグラデーションになる
曖昧さは受け入れられ
器は広く広く浅くなる
明るくなりすぎた夜のように
影はぼんやりと甘く
この輪郭を脱ぐ術を
探している
....
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