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夜の粒が
とけだしてゆく
空の底は
うすむらさき色にゆるみ

未来が滴らした
おれんぢが
静かに攪拌されてゆく

ここは
宇宙の果てなのだ
あるいは
巨大なグラスに注がれた
 ....
じゃりじゃりになっている
蜜のあわれを
さじで救い取る

瓶の中で
結晶になった
白い彼女はきれぎれになり

焼かれたパンの熱でそれは
ふたたび脆弱に溶かされてゆく
朝の甘い官能
 ....
古い本を開いたら
あったはずの文字が
ところどころ喰われていた
くいしんぼうの羊のやつめ
紙より文字が好きときている

古いインクは美味らしい
いい具合に熟成していて
ひと噛みすれば口 ....
それまで
水の中を泳いでいたものが
産院のベッドの上で
あし。になる
それはまだ
自分を支えることも
出来ないけれど
あし。と呼ばれる

こんなに
ちいさく
まだせかいを歩いてさ ....
かけひきを手放したあと一本の綱は誰とも手をつながない

おそらくは終わりのない作業と思うどこまで磨くか靴磨くように

憂鬱にふりかけられた粉砂糖かけられたまえこうべを垂れて

つまらないこ ....
待つということは
ときに苦痛をともなう
その時間を
固いベンチで過ごすのならば
背中は痛むし
柔らかなベッドの上だとて
安らかともいかない
点滴につながれた腕は夢の中でも痛むからだ

 ....
ひきちぎられたこころたちが
あきのてんじょうを
およいでいる

うめつくされて
ひしめいている
ちいさないきもののように
おびえながら
むれている

ねてもさめても
どこへにげて ....
人渡る綿毛が渡る交差点

秋には秋のバラが咲く

かたらいは満ちることなく月満ちて

人しれず録画の灯火浮かぶ夜

闇の闇の中にも闇のある

イキヅカイ犬の腹午後の怠惰のせ

 ....
たったひとしずくの水が
いったいどこからうまれてきたのか
だれもしらない
じぶんというほんしつに
たどりつけないように
しっているのは
ただここに
あるということだけ
それはじゅうぶん ....
この風を知っている
そんな気がするのは
夏を生き延びた生き物たちすべてが
その手をつないでいるからかもしれない

地球のどこかで生まれて
地球を何億回も旅をして
悲しみの涙を流す人のほほ ....
虫の音は過去から届くメッセージ紐解きながら浅い夢みる

つかめばするりと逃げてゆくとかげのしっぽに似た夜だ

まだら雲見ている猫の背中にもまだら雲がひとつぽっかり

朝起きて歯医者の予約を ....
雨の夜
国道には死があった

帰り道を急ぐ車の
その一台一台に生があるその対極に
或いは
その隣りに

ぴくりとも動かない人間の脚はまるで
精巧なマネキン人形の部品のよう
アスファ ....
夏のあいだ僕らは
危うさと確かさの波間で
無数のクリックを繰り返し
細胞分裂にいそしみ
新学期をむかえるころ
あたらしい僕らになった
けれど
ちっぽけなこの教室の
ひなたと本の匂いとザ ....
かつて まつげに
マッチ三本載せてみせた
少女は
そこへ
小さな蒲萄を
たわわに実らせたという

おとぎ話は
完結してからのほうが
むしろ真実だったりする

まばたきのたびに
 ....
かなしみのほうに
かたむいていく白い朝は
つかみそこなった
ひなたちが
さかみちを
ころがりおちてゆく

いきさきは
とおい御国か

秋という字の
右耳に
火がともっている
 ....
空蝉を踏みつけ踏みつけ子がはしゃぐ

足の先までもが蝉であった殻

蝉成れず死んだのだろう重い殻

蝉殻に残された唯白い糸
わたしたちが集めていたのは
瓶ビールのふただった

父の晩酌のたびにそれは
どちらかの手に入る

栓抜きでこじ開けられた痕は
同じ方向にひしゃげて
それは何かを証明するように
ひとつ ....
やや黄味を帯びつつ光る宝石が恋しい海を呼んでます、ほら

台風のあとの野原の美しさ触れればくずれ珠の水々

絹糸でつながれた白玉の一番端にわたしをくくる

宝石箱のいくつかはイミテーション ....
あみ戸をほんの少しだけ開けておく。
すかさず外にいる犬がやってきて、
そのすきまのそばで入りたそうにしている。
すきまを少し広げる。
あたまがひっかかる。
犬はあきらめる。
ネコなら手で開 ....
発火する手前で
なんとか世界は持ちこたえている
そんな暑さだ

空へのばした緑の手は
もはや力なく横たわり
おそらく
何もつかめないまま
花さえ咲かすことのないまま
明日には
残骸 ....
もうひとり私の中にいるやつが決まっておまえと呼ぶ近場から

もし薔薇に棘がなければ退屈だ死にそうなほどでないにはしても

おそらくは見えないだけで居るこども「ほら自動ドアちゃんと開いたよ」
 ....
枝から青くふくらんだ
健やかなる実をはずす
茶色いしみのようでいて
何かを主張している風の
そんな模様を持つ実は
捨てた

捨てたあと
なぜかもう一度この手に取り戻し
親指と人さし指 ....
願いが叶ったかどうか
わからないまま
一年が過ぎて
今年も七夕は雨だった

短冊を結んだ笹は
燃やされて
煙になる

煙になったあと
願いはどこへ行くのだろう

いくら目を凝ら ....
神様が作った骨の成り立ちを考えれば
猫背であることはとても自然な成り行きであるのだけど
猫背である自分をウインドウ越しにうっかり見てしまえば
あんまり素敵じゃなくて
ちょっとだけ無理をして背中 ....
冷たい窓ガラスに
一匹のヤモリがいた
わたしとヤモリは
互いの存在を
ほんの一瞬で認め合う
空気がほんの少しだけ
動いた気がした
目が合ったのだよ
確かに
あの時

人間と虫
 ....
{引用=お隣りさんから伸びている皐月の枝に腹を立てて
お父さん、チェーンソーで切ったのよ
根元から


母の愚痴のほぼ全ては父のことで占められているから
電話はいつも父への悪口で終わるの ....
空をゆく鳥が止まっているのじゃないかって
思う時
あるよね

そんな言葉で恋が始まることもある
わたしたちが本当に見ていたのは
鳥でも
雲でも
小刀のような銀の波濤でも
ウインドサー ....
ぶらんこの夕べはいつもさみしくて百を数えておしまいとする

日陰にはどくだみの花みっしりとわたしは毒を愛しています

砂山に取り残されたスコップは誰かの置いた傘の中にて

夏になるほんの少 ....
空想と現実を行き来する

冷蔵庫を開けるまでは
卵は空想の産物であり
白い宇宙船であったりするけれど
取り出して目玉焼きを作る段になれば
さっそくそれはフライパンの{ルビ最中=さなか}で現 ....
たった三日でもわたしをあなたのテーブルに飾ってくれてありがとう
消毒臭くて清潔な水は、もちろん雨よりも美味しくはなかったけれど
あのまま樹にいたとしてもどのみち無残に滅びていく事にかわりない

 ....
レタスさんのそらの珊瑚さんおすすめリスト(120)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
リキュールな朝- そらの珊 ...自由詩16*15-10-22
冬のはちみつ- そらの珊 ...自由詩20*15-10-15
羊とともに眠る夜- そらの珊 ...自由詩1415-10-11
あし。- そらの珊 ...自由詩1815-10-9
秋のサンダル- そらの珊 ...短歌1015-10-8
死を待ちながら- そらの珊 ...自由詩15*15-10-5
不慮の詩- そらの珊 ...自由詩21+*15-10-1
銀雲の消息- そらの珊 ...俳句915-9-30
赤い星- そらの珊 ...自由詩11*15-9-29
夏越しの約束- そらの珊 ...自由詩14*15-9-23
秋のあをぞら- そらの珊 ...短歌1015-9-11
うつうつ- そらの珊 ...自由詩915-9-7
コピーアンドペーストエンド- そらの珊 ...自由詩23*15-9-2
まつげに盛られたファンタジー(或いはモナリザの微笑み)- そらの珊 ...自由詩15*15-8-31
おとづれ- そらの珊 ...自由詩16*15-8-28
空蝉- そらの珊 ...俳句8*15-8-24
耳さらい- そらの珊 ...自由詩19*15-8-23
真珠のうた- そらの珊 ...短歌9*15-8-22
夏休みの日記より。- そらの珊 ...自由詩17*15-8-14
炎天- そらの珊 ...自由詩1915-8-12
ブルームーンかと思ったら意外と普通に満月でした- そらの珊 ...短歌1115-7-31
キッチン- そらの珊 ...自由詩1815-7-18
短冊に書いた平和- そらの珊 ...自由詩17+15-7-8
猫背考- そらの珊 ...自由詩1915-7-4
跳躍- そらの珊 ...自由詩17*15-6-29
チェーンソー- そらの珊 ...自由詩15*15-6-24
由比ガ浜叙景- そらの珊 ...自由詩1915-6-18
公園だより- そらの珊 ...短歌13*15-6-10
リエゾン- そらの珊 ...自由詩17*15-5-22
修羅- そらの珊 ...自由詩19*15-5-20

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