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握った手を離したくはありません。
父が寂しくないようにと
両手いっぱいの白菊を
棺の中に入れました。
(お父さんさようなら。)
その一言が言えなくて
私はもう一度
両手いっぱいの白菊を
....
都心へと続く田んぼの中の線路。
田植えを終えて一息つきながら
父がおにぎりを頬張った。
梅・おかか・こんぶ。
母が麦茶と重箱を差し出しながら
にっこりと笑っている。
汗を拭いて ....
たった一言の返答で
見たくなかった物を見た。
「これは、捨てなければならない感情だ。」と言うことを。
選ばれなかった私。
選ばれたあなた。
(何かを吹っ切れた。)と思ったら
....
「離してなるものか。」とは言わないで
父の顔に触れている。
「別れ際に泣くのは、銀幕の中だけだ。」と考えた。
これからは
ケーキを切るときも
饅頭を分けるときも
きっちり測らなくて ....
(最後まで、引き渡したくなかった大きな身体。)
「お骨になっちゃったから、仕方が無いね。」と
諦めた様に叔父さんが呟いた。
「お骨になっちゃったから、仕方が無いね。」
マイクロバスに乗 ....
居間で胡坐をかく父の姿を
時折見る。
(死んだはずなのに。)と思いながら
「お父さん。」と声をかけた。
(父はただ、静かに背を向けている。)
そこにいるだけでいい。
そこにいて ....
(どうしたら、お父さんは元気になるのだろうか?)
東京に行く前の晩
少し細くなった父の右足を揉みながら
二人並んでテレビを観る。
「大丈夫だよ、少しずつ良くなっているから。」
....