ざわめきを聴いていた
誰か、いいえ
それよりもっと
わかりやすいものたちと
孤独を分け合って
ざわめいていた
聴いていた
つばさを諦めることで
繰り返されてゆく、
....
さよならしようと
心に決めて
見つめたあなたの
その姿に
胸が締め付けられ
この気持ちの重さを
再確認する羽目になる
苦しい想いが
時に愛しく
あなたを想えば
....
私は毎日目に触れる、到る処へ
花を飾ります
あなたには赤い花を
あの子には青い花を
生まれることのなかった者には
黄色い花を送ります
私は世界に一人になりました
....
私は、嘘を吐きません。
吐くのが面倒なのです。
けれど、今までのコトバ。
全てを、撤回しましょう。
撤収しましょう。
私は、恋をしました。
私は、嫌いな人が居ました ....
君という雨に打たれて
私のあらゆる界面で
透明な細胞たちが
つぎつぎと覚醒してゆく
夏の朝
影に縁取られた街路
やわらかな緑の丘
乾いたプラットフォーム
きらめきに溢れた ....
空には7つの月と3つの夢が浮かんで
わたしの足が大地になって
斜めに生えたビルを見るたび
涙を流すの
黒い星が瞬いたら
東京タワーがずずずっと
天に向かって伸び始めて
天から足が降っ ....
この街が奇病に犯され始めたのは
冬が明ける前だった
『蒸発王』
最初の目撃は
髪の毛だったらしいが
全ての症状は同じだった
蒸発する
感 ....
なぁ、ガよ。
今お前が見ている空はニセモノだ
お前がいくら羽をばたつかせようが
りんぷんまき散らせようが
そこに空は無い
お前はそんなこともわからないのか
(窓ガラスは ....
アサヒビールの工場を観光した
アサヒスーパードライは
今年発売二十年になるんだそうだ
あれから二十年!
十八のぼくは
いまとおんなじ趣味をして
ふたりの女と付き合っ ....
後れ毛 梳くうて そっぽ向き
微かに震える伏せ睫毛
「辛くはないの?」と、宵の月
若やる胸に絡ませた
好きと嫌いの綴れ織り
先夜の淵に咲く花を
見ては見ぬふり ....
勝手にコピーキャットは
街中に溢れていく商品に
勝手にキャッチコピーをつけていく
それが仕事なのだ
例えば、あの化粧品についた
「マタタビよりも酔わす肌」
というキャッチコピー
あれ ....
寒かった
死ぬかと思った
うそ
起きたら朝日が眩しくて
生きているのだと
確信した
暢気な父さん
腹を抱えて笑ってる
胎動している不在の影が
失われた地平線となって
私を回帰線で立ち尽くしている)
影がずれて
光が砕けて群生していた
三十七度強の熱帯の白日夢で
黒いドレスの少女が祈っている
その瞳は ....
昨日まで
が
{ルビ花氷=はなごおり}のように
硬く
わだかまった
かのように
感じても
やわらかく
まるく
溶けていくから
温かく ....
誰が教えたわけでもなく
指で三つ、をつくる
しいちゃんは
たくさんを
それはささやかなたくさんを
欲しがろうとする
絵本読んで、と
わたしの膝上に乗っかって
ほお擦りするように ....
なにを喋っているのか分からない
ラジオは
チュー二ングのあっていないまま
つけておく
そちらに
気をとられては
いけないから
ラジオがすきだ
同じ時間に
いつものオープニングテー ....
冬が終わりそうなので
ひだりの方を向いたら
そこにはひだみがいた
ひだみと名づけられたひだみは
自分が何であるのかわからないので
大そう困っている
僕もひだみと言ったものの
ひだ ....
朔
暗い闇夜に 星は降り
褪めた吐息を ひと抱え
{ルビ虚舟=うつおぶね}に 腰掛けて
平らな川面を 往来せん
二日月
茜の空に 銀の糸
透ける光が 胸を射し
{ ....
こころを動かしたいとき
いちばん大きな目で見つめると
願いを叶えてくれた。
僕らの先生は
車椅子の中で目を覚ますと
もう笑顔になっていた
なにかの手に引かれながら
鼻をつまんで
....
今日もまた一日を不完全に過ごす
なにも完成せず通り過ぎるだけの
長い一日
昨日あの娘は一日を完成して
嬉しいよお、嬉しいよお
と云って
何も残さず死んでしまった
彼女は ....
素に戻ると
大勢の人の前に立たされた
わたしが
いる
深々と頭を下げて
何を謝っているのだろう
トナカイのそりに乗り
飽きることなく
眺めた
白夜の物語
あ ....
「 生れ落ちた その日から
へんちくりんなこのかおで
わたしはわたしを{ルビ演=や}ってきた 」
という詩を老人ホームで朗読したら
輪になった、お年寄りの顔がほころんだ。 ....
私の右目には
鹿の眼球が入っている
『{ルビ瑪瑙=めのう}の牡鹿』
父は猟師だった
山里は畑もあるけど
狩猟も盛んで
私の父も
例にもれず鉛玉を放っていた ....
人がいなくなって
街はしばらくざわめいてあきらめて
そうして日が暮れた
ある冬の日
おれはおまえを探している
茶色い瞳は星と月だけを頼りに
上を向いた鼻はおまえの匂いをた ....
あんたはほんまにきれいに切りよる
すうっていう音が聞こえてきそうになるわ
あんたの血はきれいやな
そこに顔を映すとき
一番うちが奇麗に見えるわ
あんたの切り口を見てると
だ ....
天井が
少し低くなりました
心の一部が
ぬけて
上に上に
あがっていきました
「またお前は自分を
殺しちまったんだよ。」
そう言ってそれは
天井に染み込みました
....
彼女は言った、もし
親知らずを抜いてしまっても
今までと変わらず愛してくれる?
僕は答える、もちろん
それに必要とあれば
代わりにとびっきり頑丈な義歯を
プレゼントするよ、もし
その時に ....
持っているの?
あなたに尋ねられて
思わず
持っているよ。そんなものと
答えてしまった
だけどね
ほんとはね
バッグのなかを
さんざ探しても見つからなかった
どこかで買えるのかな
....
貴方と別れてから
気持ちが悪くて全てのものが
次々と身体から流れ出していきます
貴方と別れてから
気持ちが悪くて貴方の映像が
次々と浮かんでは消え
沸いてはこびり付き
どうしたらいい ....
夜に開いた
隙間を
埋めるように
雨の旋律が
耳に届いて
孤独にいる者の
遊び相手と成りはしないだろうか
滴の奏でる音が
たった一人の為の
優しさとなって
降り注いで
あなたは雨 ....
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