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わたしが動かなくても
雲は西へと流れてゆく
わたしが動かなくても
みつばちは花を求め
8の字に旋回する
わたしが動かなくても
大地はわたしを乗せて
星の周りを回り続ける
わ ....
ミシシッピーの船着き場よりも
遠くへ
出せなかった手紙の宛先よりも
遠くへ
イチローの安打よりも
遠くへ
国境線の結び目よりも
遠くへ
....
この風は
マンハッタンに林立するビルディングの
谷間をくぐり抜けてきたのか
この風は
インド洋に浮かぶマグロ漁船の
舳先を掠めてきたのか
この風は
セーヌ川の岸辺に集う
恋人た ....
愛はいろいろなものに
形を変える
ある時はチョコレート
ある時はクッキー
ある時は掌のぬくもり
ある時は手紙だったり
ある時 いつかの水曜日
あの日がぜんぶ―――
愛
だった
....
まだ冷え切った館内に、朝九時を告げるチャイムが
流れた。つづけざま、非常警報ベルが鳴動を開始した。
その音を合図にフロアにいる者たちはみな申し合わせ
たように、作業帽を手に取って立ち上がった。 ....
白いアパートメントが、町の大通りとはいえない、
中くらいな通りに面して建っている。5階建ての上に
は、無人駅のような空があって、雲はあまりなくって
陽射しが眩しくて、時刻は午後の2時を少し過ぎ ....
■1
こころを見られるのが
恥ずかしくなった
だからなんとか隠そうとして
まわりに壁を作っていたら
こころのやつ
どんどん どんどん
膨らんでいって
壁は
....
床に落ちたカンバスの上を電線の影が、行ったり来
たり。君はえんじ色のシートにひざを立てて、窓の景
色に見入っている。昼のさなか、大阪から京都へ向か
う各駅停車だから、人の影はまばら。遠慮 ....
文明の熱狂の皮の下で、いつでも戦争がにたりと舌
を出して笑っている。
*
たまの休みになると田畠さんは町を散歩するのが常
だ。そうしていつからか彼のお供を ....