天の香具山で妖精が
自分の名前を彫り

夕日で赤くなった
血管のような川で洗う

小さなトンボ玉に
好きだという
たった一つの思いを
麻に編んで通していく
月夜の雨が染みていく ....
ふと思い出すことがある
夕日に染まる街も
カモメと一緒に帰る船も
羽衣のようなひこうき雲も

誰もいなかった遥か昔
僕ら二人はあの
夏椿だったんだと

僕は枝 君は花
白く美し ....
イーゼルの端から
あなたの目を見つめる
すれ違いの視線が嬉しくて
わずか8号のキャンバスに
尽きることのない思いを重ねる

窓から入る黄昏の風に
鼓動が乗って赤く染まる
もう少しま ....
蝉の声が空に重なる
秋が匂う古い和紙を広げ
朝顔の種に夏の風を置く

水無月の氷室
竹林が滝のように響き
氷が波音から運ばれる

笹の葉を一枚
逢えないあなたを想い
墨を乗せて ....
和紙で創られた羽根
赤く染まって陽に透ける
白く染まって雲を漉く

紫色の花びらが木陰で
蝶のお昼寝の揺り籠になる
大きな羽根のその中で
小さな花が顔を出す

ただ好きですと
 ....
悲しい心の雨宿り

黄昏の半分は
行き場の無い気持ちの
荷物置き場

長い石段が
飽和状態まで濡れて
もう涙はたくさんと言う

眼の前で紫色した光が腰を下ろす
見上げると手が ....
長い坂道を夕日が
駆け下りてくる
木々を草花を燃やしながら

並んで歩くあなたの目も
ルビーのように揺れている

強く光るのは涙のせいなの
それとも私が泣いてるから

赤い目で ....
母の花鋏を持って庭に下りる
背の高いグラジオラスが
白い雲を背にして並び

赤い花が足元から空まで咲き
さあどうぞと言っている

一緒に埋めた球根が花になり
私の手を握ろうとす ....
重く湿った風が流れる
雨の子が風の中で泣いている

黒く長い葬列

蟻の足元で降りて
葬列に参加する

あのとき雨が降っていれば
この蝶は飛ばなかったのに

あのとき雨が降っ ....
淡く赤く
想い出のような
タイムの花が咲いた

妖精の足音が聞こえる
密やかに
ハープの音のように

私は眠れない星の子供
窓を少し空けたまま
香りをひとりじめして
夢の入り ....
土砂崩れで
バスは海まで流された

間もなく伊藤くんは帰幽して
妻の敦子さんのもとへ
別れと感謝を告げに行った

幾日過ぎただろう
敦子さんは会社を休み
季節を一つ越えていた

 ....
古いオルガン
ワックスも落ちて
粗い木目が木漏れ日に萌える

ながいあいだ
大勢の子供達を見送り
一緒に唄ってきた

オルガンの友達は
向こうのピアノの上の
メトロノーム
同じ時 ....
梅雨は街の洗濯
山のてっぺんから屋根まで
しっかり洗ってくれる
空気さえも純水になるほどに

夜通し降った雨は朝も止まず
智子はバス停で傘をさす

雨でくもった岬の向こうから
サ ....
毎晩僕は羽根を少しだけ広げて
階段を走って
踊り場の窓から飛び降りて
庭に並んだ蕾を踏んで
妖精たちに怒られて
月あかりの草むらで星を見て
猫の鳴き声が近づいても
僕は場所を渡さずに
 ....
詩的連続ドラマ 第8話


雑貨屋さんの中にある
貝細工喫茶で紅茶セット

カモミールのハーブが緊張を溶かしていく

今度は一人でも寄ろうかなと
そう思いながら
智子はケーキを頬張 ....
赤い糸で仮縫いされた想いは
たぶんジグザグになって
ゆっくりと遠回りして
あなたに向かっていく

蛍が宇宙の渚で
ゆらゆら揺れながら
天をめざして昇っている
星に生まれ変わりたいと ....
「詩的連載ドラマ バス停」


今日は日曜日
雲一つない青空

伊藤君とわだかまりなく
話せることができて
とても嬉しくて
心は今日の空のようだった

窓をぜんぶ開けて
部屋の ....
草の海に船を隠す

草の先が垂れ下がっているのは
妖精がぶら下がったから

草が折れているのは
妖精が船を編もうとしたから

誰のために船を編むのだろう
私に羽根が無いからだろう ....
「詩的連載ドラマ バス停」


大きなフロントガラスの向こう
月が照らす海が見える
絹の揺りかごのように
波が穏やかに白かった

久しぶりだね
この街にいるんだね

驚いた様子も ....
おはよう あなたも頑張るわね

ミツバチに声をかける

遠くの山に朝もやが残るなかで
カモミールを摘む

今年最初のハーブ摘み
庭いちめんに咲く白い花
金色のリンゴを陽に捧げ
 ....
雨上がりの夜
心が揺れるシルクの糸

言葉が立ち止まり
雫が真珠のように流れて落ちる

アジサイとフェンネルに架かる
クモの巣の糸電話

妖精の告白に今夜蕾たちは
こっそり聞き耳を ....
私一人のせて
窓辺に月が一緒に走る

「どこでも止まりますから
声かけて下さい」

懐かしい声が
十年の時を超えて来た

少し前なら
このまま地球一周とか
時よ止まれとか思っ ....
潮風が吹き抜けていく
春と夏が混じっているような

残業して街路樹を見ていたら
すっかり薄暗く
黄昏は西の国へ帰り
妖精が街灯を点けていく

帰りのバスを待ちながら
さっきまでい ....
雨宿りの二人
息は白いけど
寒くなかった

定休日の喫茶店
赤いテントの下で
空を見るあなたの横で
私は横顔を見つめる

このまま
雨が止まなければ
いいと願った

沈み ....
白い空が
海のように
どこまでも
深く広がっている

月がクラゲのように
浮かんでる

じっとして
まるで魂のように
私を見てる

僕の声が聞えるだろうか
毎日毎日叫んで ....
詩的小説 バス停「第3話」

バス停で彼を待つ
もう愛してはいけない人
でも好きでいてもいいよね

遠くにバスが見えてきた
緩やかなカーブをいくつか抜けて
見え隠れしながらやって来る
 ....
去年の秋
星を探しに
小高い公園で二人

私が指差す方向を
まるで鉄砲を打つように
腕を掴んできた

どこ?
僕の星座はここだよ
この指の先
あのカシオペア座の下

君が ....
詩的小説 バス停 第二話


目覚めて窓をあける
高台にあるアパートは
見晴らしが良く
遠く小学校の向こうに
海が静かに朝日を集めていた

顔を洗ってパンを焼き
コーヒーを淹れる
 ....
詩的小説「バス停」


新しいこの街で一人で生きていく

近くのバス停で時刻をメモする

バスが停車して扉が開く

「すいません乗りません」
「メモしているだけで・・・」

笑 ....
ずっと長いあいだ
売り切れたままの心
庭におりれば
ニシキギの実が
風の小径でささやく
歌が小舟で天に去ったと

檀紙のしわをなぞれば
懐かしい言葉が幽霊のよう
苔むした石段を照 ....
丘白月(577)
タイトル カテゴリ Point 日付
トンボ玉自由詩019/7/13 18:13
夏椿自由詩219/7/12 21:21
黄昏の美術室自由詩319/7/11 21:50
氷の節句自由詩119/7/11 20:58
ブーゲンビリアの妖精自由詩219/7/11 18:33
黄昏の境内で自由詩219/7/10 21:19
坂の終わりに自由詩219/7/10 17:08
グラジオラスの妖精自由詩319/7/9 21:58
蝶のお葬式自由詩319/7/9 19:09
タイムの妖精自由詩119/7/8 21:26
バス停 第10話(最終話)自由詩019/7/8 20:23
楽器の魂自由詩019/7/8 12:06
バス停 第9話自由詩019/7/7 19:09
妖精の庭自由詩219/7/7 8:05
バス停 第8話自由詩019/7/6 21:11
仮縫い自由詩219/7/6 18:20
バス停 第7話自由詩019/7/5 20:49
船を編む妖精自由詩019/7/5 20:29
バス停 第6話自由詩019/7/4 20:53
カモミールの妖精自由詩219/7/4 17:41
妖精の糸電話自由詩319/7/3 20:55
バス停 第5話自由詩319/7/3 20:47
バス停 第4話自由詩119/7/2 20:24
雨宿り自由詩119/7/2 19:47
昼の月自由詩019/7/2 18:23
バス停「第3話」自由詩119/7/1 19:12
星の想い出自由詩219/7/1 7:27
バス停 「第2話」自由詩119/6/30 19:45
バス停「第一話」自由詩219/6/30 11:26
売り切れたままの心自由詩019/6/29 7:18

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