ロゼ色の粉雪が
空の綻びから滑り落ちて

西の空が焼ける
煤が{ルビ誘=いざな}き、招いた夜の帳が
ふと 頬にかかり
謎を銜えた豹の吐息が 、右目を掠める

指先で散る、線香花火
黒 ....
月の咲く頃、青鷺が溺れた
川辺の彼岸花のように 恋に焦がれた

ひらがなの響きで、わたしを呼ぶ あの人
辛辣な言葉を並べるくせに
どうして時々 柔らかく、呼ぶ の

青い紙で鶴を折って、 ....
石榴は血の味 密の味

月の無い夜に
女を食べた、あの木製の詩人は
熟れた石榴を 銜えさせて
美味いだろうと、夜風に訊いた
共犯だぁね 、
硬花の指先はわたしの唇に触れ
睦言のように
 ....
小さくて

可愛くて

甘すぎて


少しの熱で

すぐ熔ける
 
星の駄菓子


まるで


恋心



今宵の涙を

緩く固めて


鋭い三日月 ....
幼い頃
僕の左手は よく包帯に抱かれていた

今よりもっと 周りよりずっと
何にも関心が無かった ±ゼロの絶対零度
凍った心に響くのは 痛みだけ

立ち入り禁止の野原の前で
有刺鉄線に ....
窓には柵が無いので 宵月の真ん中
を見ようとすると バランスが取れなくて
危うい

落ちるまで手を伸ばそうが 届かないから安心
幾夜に渡って一途に見つめても
月は降りてくれないから 代わり ....
豚の目を{ルビ解=バラ}した

肉付きの眼球が二十個 並んで此方をみている
父にもらった手術用の手袋を嵌めて 一つ 掌に置く
冷たかった
どこまでも 質感は在った

メスによく似た鋏を  ....
母が零した水がテーブルに広がる
その小さな湖にナプキンペーパーを投げ込むと
木の葉みたくひらりと堕ちた

着地した瞬間から水を吸い始め
自らを濡らしていく
染みは生きているように
時に速 ....
言葉が躓いた先
視界の端で海が揺れる
掬ってみれば穏やかに澄み
浸してみれば鮮やかに碧く


一人一人違う泳ぎ方で
同じ海を泳いでいるのか

僕たちは淡い
孤独と出逢ってしまったか ....
{引用=
自分が自分であることに
儚い戸惑いを隠せないのなら
あなたは泣いていい
存分に泣け
其処には
散々に舞う桜の花弁のように泣く理由が在る

自分が自分であることに
未来を確立 ....
倒れて佇む静かな兵士
鼓動も呼吸も途切れたままで
過酷な大地の腐敗は進む

スレンダーボディが自慢だった若い兵士は
その面影を微塵も残さなかった
生きていた証さえ残せなかった
彼と一緒に ....
他人を批判して
自己を正当化することは
とても容易い

ところが
詩を描き始め
自分を少し管理できるようになると
正当化どころか憂鬱になる
他人を批判することは
とても難解だ

 ....
人間が

犠牲の上で生きるように

世界は

戦争の上に幸福を創れる




そう独り言じみて呟き

少し

自虐的に笑って見せて

貴方

虚ろな目を伏せたから ....
絵は語りかけてくるのだ

院展に飾られた数十の世界に
僕は招かれ
彼等を渡り歩いた

ある明け方に
青い国は一筋の紅い光を浴び
鵜飼いの男は焚火を消した

ある朝に
インドの女が ....
思い出

記憶
の違いを知ってしまってから

僕は
思い出喪失患者
になりました

何が綺麗だったのかも
誰が愛しかったのかも

今の僕には
何の意味も持たないようで

 ....
ポラロイドカメラで
港の夕焼けを閉じ込めた

一瞬の空を
たった1枚の写真に収めようなんて
我ながら
驕ってみたものだけれど
その1枚は確かに
僕の指先で

月にも負けず輝き続けて ....
士狼(銀)(136)
タイトル カテゴリ Point 日付
赫い意図に絡まる鯨と、[group]自由詩7*05/12/24 21:38
硝子皿の上[group]自由詩8*05/12/16 21:26
石榴の宵[group]自由詩8*05/12/11 11:29
金平糖[group]自由詩8*05/11/8 0:11
有刺鉄線の鴉[group]自由詩9*05/11/5 20:57
雀の子[group]自由詩7*05/11/4 15:41
解した眼球に湊でるピアニシモ[group]自由詩7*05/10/23 8:17
母と木の葉[group]自由詩7*05/10/10 17:06
躓いた先で揺れる[group]自由詩7*05/10/8 16:06
自分が自分であることに[group]自由詩14*05/10/3 17:34
僕はガリポリを知らなかった自由詩6*05/9/27 2:21
no-title自由詩9*05/9/17 18:28
思いの丈はうたかたに終わる[group]自由詩9*05/9/17 14:43
次元の狭間で自由詩6*05/9/11 16:55
思い出喪失[group]自由詩8*05/9/10 18:33
ポラロイドカメラ[group]自由詩10*05/8/15 10:33

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