母と木の葉
士狼(銀)

母が零した水がテーブルに広がる
その小さな湖にナプキンペーパーを投げ込むと
木の葉みたくひらりと堕ちた

着地した瞬間から水を吸い始め
自らを濡らしていく
染みは生きているように
時に速く
時に緩く
湖を渡りきり木の葉は半透明になる

紙にされても
木はまだ生きているのかもしれない
枯渇していたから
こんなにも水を求めるのかもしれない

そう呟くと
水浸しのナプキンペーパーを片付けながら
変わらないね
と母は静かに笑った

その手は渇き骨張っていた
頭を撫でてくれた頃の
あの艶やかさは無く


自由詩 母と木の葉 Copyright 士狼(銀) 2005-10-10 17:06:17
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