それが
始まりなのか
終りなのか
分からないまま
凝視する
初対面の挨拶も
別れの挨拶も
一度きり
一度きりだから
忘れないでいたい
忘れるのが
怖いのではなく
哀しさのため
....
風を受けて
ふいに
ことばが途切れる
頷いた
眼差しの
彼方には
夏の空の
積乱雲が
まばゆい
音楽のような
やり取りが
耳に心地よくて
話し声が
音にしか
聞こえない ....
午後 油蝉が
雨上がりの隙間を
待ちかねて
忙しく鳴いていた
それから
ずぶ濡れの油蝉が
どうなったのか
今でも
気になる
いくつものナマエが
ネットワークに
撒き散らされ
いつしか
ワタシが誰だったのか
拡散し続けるワタシには
もう分からない
無意識の匿名に
ワタシはかき消され
言葉だけが
墓碑銘のよ ....
始まりの前の闇
映画はすでに
始まっている
フィルムが
回る前の
見えない
時間が
闇を
生き生きとさせる
次々と
現れては消え
記憶にすら
残せない
微かな痕跡が
薄く折 ....
ヤブ蚊というのは
人に似ている
あんまり暑いと
商売にならないのか
無防備な半袖にも
やって来ない
(ホントハ体温ガ上ガッテ死ンデシマウノデ)
涼しくなると
栄養ドリンクを吸いに
....
どこからか
風の強弱に
合わせるかのように
風鈴の音が聞こえる
昼間の風鈴と
夜の風鈴では
どこか違う
昼間の風鈴の空洞には
何もない
何もないから
ガラスや金属の
異論 ....
日陰の中で
祠の供え物を
三毛が遠巻きにしている
昼下がり
夏の青空の飛行機雲が
長く長くのびている
その下で
三毛がまったりと
朝早くありついた
おかしら付きの煮干しの骨が
....
風景に侵食された
私の眼球に群がる
蟻の列
夏の太陽は
赤錆びた歩みを
響かせ
大地を過去に追いやった
初夏の木陰に
風が吹き込む
塗装の剥げたベンチで
短い手紙を読んでいたら
知らず内に
夢の中で
手紙の続きを読んでいた
さっきまでは
Αからのつもりだったのに
今は
誰からの手紙だ ....
好きな色は?
と聞かれて
返答に窮する
好きな色は毎日同じではない
座右の銘のように
色が毎日同じにしか
見えないなら
絵は描かない
数値の色は正しい
誰でも同じは
誰でもいいのだ ....
大切なものは
隠して置く
包み隠さず
ではなく
本当のことのために
大切なものは
見えない所へ隠すのが
たしなみだ
夏の夜
秘密のくさむらの
奥深くひかる
蛍を探しに
....
夜風に吹かれて
直立する空洞
枯れた片葉の蘆を
遅れて通過する
昨日の嵐
カササギが
天の川に
橋を架けるのは
一日だけ
あと何回
逢えるだろう
去年が昨日のよう
よるがあけると
また一年経って
織姫は憂鬱になる
あのひとに逢うたびに
歳をとって
ま ....
休日の
古いビルの階段の
陽の中で
ぬるい水溜まりのような
ものがたりのが
川風に
そよいでいる
脈絡は
とうに失せた
誰のものとも知れない
息遣いと靴音が
光の中で交錯する
....
見えないもの
の 微かなささくれに
見てはならぬもの
を 見る
時の恩賜
穏やかな腐蝕
の 鈍い痛み
の 切っ先で
陰刻される
世界の
皮膜のささくれ
を 剥がす
あら ....
悲しくもないのに
それは
言葉を遮るように
あふれでる
ぬくもりはいらない
冷たい雨に震える
手のひらに
寂しく孤立する
ゆびさきのルージュが
なみだにぬれる
なみだを止めようと
....
どこからともなく
聞こえてくる
真夜中の祭りの
雑踏に耳をすます
もういいかい
古くて日付のない記憶が
唐突に甦る
まぁだだよ
暗くてよく見えない顔
と 真夜中のかくれんぼをする ....
地球上で
毎日 誰かが
それぞれの
日記を書いている
誰の目にも触れず
(私の)大切な日々の
記憶の断片に封印して
さっきまでいた人の
後を追うように
消え去る
確かに(私)は
....
君はいつも
留守勝ちで
玄関には貼り紙
「ただいま外出中
直ぐ戻ります」
いつまでも経っても
帰らない
温泉に行ったのだろうか
それとも
見知らぬ土地へ
しりこだまを抜きに行ったの ....
あれはすれ違うように
落ちて行った
ぶら下がるのに
疲れ果て
ちがう世界を
夢見て
透明な奈落の底には
青空が見えた
星も月も見えた
でも 何も聞こえない
鳥の声のささやきや
風 ....
僕の知らない過去と
わたしたちの未来に
長く伸びる辻占の影
いつもの帰り道には
いつも違う待ち人が
真っ赤な花を散らす
嘘つきなあなたの頬
なのに ぎこちない
まなざしは いつも
ほ ....
毎日同じように
思い出を
過去に追いやる
昼間の温室
外側から見えるのは
ずっと小さかった頃の
私の影
錆びた鉄骨の湾曲と
陽に焼けて
曇りのある硝子
の 青空と積乱雲を
見 ....
夕暮れには
まだ早い
ビルの間に
赤赤と
都会の落日が
沈む
影絵のような
人の影が
朝とは逆を向いている
落日のエナジーを
持ち帰る
掌(テノヒラ)に
たたずむ落日の
温も ....
心地よいことは
細胞の記憶に
組み込まれ
嫌なことは
記憶の外部にある
と思いたいけれども
大概 嫌なことの方を
たくさん憶えている
叶ったことより
叶わなかったことが
桁違いに多 ....
古い引き出しの中
小さな箱の中には
短くなっても
捨てられない
色鉛筆が潜んでいる
もう出番は
わずかしかないのに
正真正銘の色鉛筆が
そこにある
好きな色ばかりが
懐かしい
昔 ....
そのうち夜は来る
と 言い聞かせる
夜になれば
夜は来るはず
でも まだ十分明るい
全てが当たり前の
世界に見える
俯瞰し
俯瞰される
私(たち)
ずっと昼間だったら
世界に在る ....
目をつむれば
何でも見えた
初夏の青空
風の緑陰
遠くばかり
見ていた
君のまなざしが
風にゆれて
それから
ある日
知らない土地へ
気まぐれな
散歩でもするように
出て ....
雨の日は
洗濯の日
真水だから
こころは洗える
泡立ちはいらない
真っ白になんか
ならなくてもかまわない
ノイズだらけのきおくが
雨に洗われて
見えなかったものが
ゆっくり
時間 ....
湖の風の匂いの中で
岸辺の片葉の葦がそよいでいる
風の音に
遠ざかる面影よ
さようなら
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