木枯らしが吹いた日
小さな日溜まりに
まどろむ猫のように
冬の太陽の
わずかな温もりを探す
字引をめくるような
紅葉(モミヂ)の品定
何故か
枯れているのに
温かい手触り
冬は
 ....
昨日と
同じ景色に
乾いた風が
吹き抜けて行った
昨日と同じ
景色の中で
わたしは
昨日と同じでは
いられない
夕暮れが
あまりに悲し過ぎたので
もう 伸びない
と言って
影は離れて行った
乾いた音の
重なりを
足裏に
感じながら
落葉を拾う
赤・緑・黄の階調に
一つ一つ
丹念にあけた
不揃いの
虫喰いの穴
どこへ行ったのか
もう分からない
虫たちの
秋の置き手 ....
昨日の大風(オオカゼ)に
樹々は直立した
雲のない秋空の朝
ストローの中で
聞こえる
はぐれた小さな嵐
消したくなかった
あの時の
インクのしみ
今でも 変わらない
ロイヤル・ブルー
何を書いたの
忘れてしまったけど
しみを見ていると
薄い紙の上を走る
ペンの音が
よみがえる
いつ ....
きのう
遠い夕暮れから
やって来る
潮風が
暗い林を
揺らす

今日
秋の雨にぬれて
霞んだ彼方に
きのうの夕暮れを
重ねる
染み込むように
雨の色に
ぬれて
今日が過ぎ ....
少し冷たい
風が吹いた日
コオロギの声を
聞いた
ふと気がつくと
蝉の声が
かき消されるように
別れの挨拶もなく
聞こえなくなっていた
皆どこへ行ったのだろう
持て余すほどの
見えるものでなく
両の手のひらに
受け止められるだけの
見えないもの
流れ
滴り落ちる
音だけが
聞こえる
まるで
あの人の
涙のように
あたたかい
贈り物
 ....
いつも同じだった
互いに
別れ際のことばが
見つからなくて
何か言いたげな
眼差しが
さみしいのに
見つからないのだ
終わりではなく
始まりの別れ
別れ際の
掌の温もり
夜の川面を
秋風が吹いて
冷たい光のさざ波が
目に痛い
聞こえるのは
川の音と
蘆原の揺れる
乾いた音
もう 夏の光は
遥か彼方に
行ってしまった
携帯の光に
照らされた
待ち人の
横顔のシルエット
夕暮れの
ショーウィンドゥに
行き交う
幾多の
「わたし」の時間が
明滅するネオンに
滲んでいる
明け方近く
目覚める瞬間
誰かの夢が
紛れ込む
 夜分恐れ入ります
丁寧にみつ指を着いて
にじり寄る
 よろしく
と言おうとしたら
白々と窓がまぶしい
予定調和のような
すれ違い
なつかしい面影を
背に感じながら
たぶん二度とない
偶然に戸惑い
それでも
秋の雲が
遠ざかるように
見えなくなるまで
ずっと
振り向かせないで

 ....
引き潮に
拐われるように
海辺の夏が
終わる
夏の後ろ姿を見送る
誰もいない砂浜
もう
何もないんだね 砂浜には
まばゆい夏の光が
みんな持って行って
夕方の海風に
凍える
君 ....
何が書いてあったのか
もう分からない
空っぽの封筒が
本の間に
古い思い出の
栞のように
はさんであった
大切にするでもなく
でも 忘れてしまわないように
時折
ある曲のフレーズを
思い出したように
聞きたくなる

煙の臭いと立て看板の
どれも同じような
スローガンが
かなしく
風になびいていた
安保の季節の終わりの頃
時代という過 ....
見えてはいても
見えない
触れ得ないものに
触れようとして
知らず内
見えない火傷をおった
あなたのやさしさが
あなたを見えなくする
だから
やさしさなんていらない
空耳のように
遠くで
花火の音がする
頼り無げに
よろよろと
それほど
高くもない夜空に
到達し
花開く
瞬間
辺りが華やぐ

記憶の彼方に
不意にあがる
遠い花火に
照 ....
当たり前のように
季節が変わる
息をするたび
空気の匂いも
変わった
でも
それは過去のこと
輪郭の曖昧な
季節の変わり目は
心ときめかない
四季が
四季でなくなる
美しい追憶 ....
初めは
頼りないくらい淡い色
重ねる度に
人のこころのように
深い紅花色に
変化する
でも
一番好きなのは
染め初めの
消え入りそうな
淡い色
夕闇の蛍光灯に
最後の飛行の果て
仰向けになって
蝉は動かなくなる
夏が終わる
何年も
人の目に触れず
ひと夏 現れ
命を終える
蝉という現象も終わる
誰かが
呼んでいる
「おれを撮ってくれ」
写真を撮っていて
そう聞こえることがある
その時
共振するように
シャッターをきる
撮すではなく
写っている写真が
そこにある
砕け散る
波のしぶきが
足元を濡らす
さっきまであった
きみの足跡が
波に拐われ
また歩き始める
波と戯れる
音符のように
ぼくの前を
岬に向かって
真夏の汗が
眩くひかる
昼下がり
木漏れ日の中で
樹々の葉の影が
きみの息遣いのように
ゆったり揺れる
小さかった頃の
夏休みの日射しを
思い出しながら
もう戻れないんだねと
か ....
ぼくの中の
アナタから
物語を剥ぎ取る
すると もう
アナタしかいない
消せない
美しい傷痕のように
ぼくの中に
無言でたたずんでいる
ぼくが話しかけると
密かにうなずき
微笑み ....
色濃く茂った
夏の葦が
黄昏の風に
さらさらと
なびき始めるのを
あなたの気配を
感じながら
他人のように
気まぐれを装い
待っている
夜毎 夢の中で
入れ替わるようになったのが
いつからだったか
もう 思い出せない
入れ替わるたびに
たわいない一言を
隠すように
紛れ込ませる
見つけてほしいけど
永遠の秘密みたいに ....
風に吹かれて
闇の彼岸へ
遠ざかる
テール・ランプ
滲んで
見えなくなるまで
追い続けた
ついさっき
さよならを
言った
横顔の
髪の艶やかな
乱れと
掌の温もりが
もう  ....
いくつもの網膜に
いくつもの炎が
張り付いた
夜更け
焼け焦げた臭いが
漂う
黒い本に
大粒の雨が
無表情に
降り注ぐ
誰のものでも
なくなった
無機質の
思い出が
流れ出 ....
フクスケ(176)
タイトル カテゴリ Point 日付
木枯らし自由詩009/11/6 20:30
視界自由詩109/11/1 19:56
自由詩509/10/27 22:28
落葉自由詩009/10/14 20:37
小さな嵐自由詩009/9/22 10:14
青い時間自由詩209/9/19 19:56
きのう・今日・あした自由詩109/9/13 9:08
蝉の声の消えた日自由詩109/9/11 20:59
見えない贈り物自由詩009/9/10 21:04
別れ際自由詩309/9/9 20:37
夜の川面自由詩109/9/8 20:13
ネオン自由詩109/9/7 21:58
他人の夢自由詩209/9/6 11:14
すれ違い自由詩109/9/5 19:24
夏の終わりに自由詩309/9/4 20:17
古い手紙自由詩309/9/3 19:42
あの頃自由詩009/8/20 20:04
見えないもの自由詩109/8/18 17:07
花火自由詩109/8/15 8:56
四季自由詩009/8/13 21:40
紅花自由詩009/8/12 19:55
季節の終わる頃自由詩109/8/8 9:26
写真自由詩109/8/7 20:55
自由詩109/8/6 21:11
木漏れ日自由詩009/8/4 21:09
傷痕自由詩009/8/3 21:06
風の音自由詩109/8/2 16:03
夜毎自由詩009/8/1 20:34
横顔自由詩209/7/31 21:41
黒い本自由詩109/7/30 20:04

Home 戻る 最新へ 次へ
1 2 3 4 5 6 
0.38sec.