(冷たい・硬い・重たい・臭い)
別れを告げた父の姿だ。

私は離れたくは無かったのだが
参列者の手前
抵抗するわけにも行かず
黙って棺のあとを追う。

山のへりに並ぶ猿たちの群れ
ま ....
最後に見た父の顔。
眉間の皺が取れて「楽になったよ。」と語っていた。

「今度は、いつ会えますか?またどこかで、会うことが出来ますか?」
家族と同じように
大切な人の一人として。

炎で ....
着る人がいなくなったスーツ。
二階のクローゼットの片隅で
父の足音を待っていた。

覆われたビニール袋の下に潜り
ハンガーに吊るされたスーツを抱きしめる。

(それは防腐剤の臭い ....
「忘れる事が幸せ。」だと
誰かが言った。

「娘は、父親を忘れてゆくものだ。」と
誰かが言ったのだけれども
私の横にはお父さんが居るようで
切り裂くよりも重く苦しい痛みが身体を痛めつける ....
『白い箱。』
それがお父さんだと
どうやって信じれば良いのだろうか?

両腕の中は
最後に抱えた身体よりも重く
悲しい位にのしかかった。

(八ヶ岳の青さに混じり、遺影の輪郭線がぼやけ ....
お父さんが白い箱になって帰ってきた日の晩、白い布と木箱に覆われた陶器の蓋を開けて
一つまみの欠片を持ち去った。
指先に付いた欠片の粉を口に含んだら、あまりにも苦くて・・・・苦くて・・・・身体はお父 ....
「砂場の中に、小さなスコップが埋もれている。」
幼い頃
父と遊んだ記憶と共に。
足跡を辿りたくて・確かに存在する思い出を取り返したくて
私は無心に穴を掘る。
「お父さん。お父さん。」 ....
ピアノを奏でた指先は
詩を書くためのボールペンを握り
最後に送る父への手紙を書き続けた。

父の好きな花達は/何事も無く/式場のライトを浴びて
美しい花びらを/正面玄関に向ける。

ピ ....
お父さんの声
棺を閉じる直前に聞こえた。

離れようとしない私の耳元で。

「ごめんね。ごめんね。」と泣きながら
私の耳元で泣いていた。

「ごめんね。ごめんね。」と泣きながら
私の ....
お父さんが笑ってる。
お父さんが笑ってる。
「苦しくなくなったよ。」と語りかけるかのように。

お父さんが笑ってる。
お父さんが笑ってる。
家に帰ることを喜びながら。

「残された時間 ....
手を伸ばすと/眠っているお父さんの頬に触れる。

あまりにも冷たくて/冷たくて

触れたままの手では無く

「強いな・・・・。強いな・・・・。」と思っていた心臓が/冷たくなった。
ひゅう・・・・。ひゅう・・・・。と身体を切り裂く夜風。
ひゅう・・・・。ひゅう・・・・。と父を迎えに来た。
ひゅう・・・・。ひゅう・・・・。と地底の底から唸りを上げて。

死んだらどうなるのか ....
早朝の畳部屋。
障子の引き戸を開けながら
眠る父に声をかける。

「お父さん。今日は寒いね。」

顔を洗い家中を動き回る母。
これからやってくる客人を迎えるため
悲しいそぶりを見せよう ....
父が居ない日に抱えた悩み事は
いつもの数倍のもしかかる。

一言二言話すだけで
買い物袋が楽々持てるようになったという安心感。

(これからは、自分ひとりだけでいくつもの買い物袋を持てるよ ....
それは全て愛だった。
それは全て愛だった。

父が少しずつ貯めた積立金。
何かの足しになるようにと内緒にした
大きな空き瓶いっぱいの小銭。
「銀行に持っていったら、8万円になっていた ....
無常にも燃え上がる炎。

愛する者の身体は
2時間強という短さで骨と言う物体になった。

「形が綺麗に残ったね。」と
一点を見つめる瞳。

「あったかいねえ。」と
声を震わせて歪んだ ....
(制作)進行がはっぱをかけるので
窓から逃げだした。

ドアが激しく鳴っている。
ベルも激しく鳴っている。

「うああああ!!!」と叫んで
僕は駆け出した。

UP日に追い立てられた ....
「家に帰りたい。」と譲らなかった時
もうすぐ死ぬ事が解かっていたのでしょうね。

「譲らなかった。」と言うよりも
最後の抵抗にも見えました。

「ここは俺の家だ!!」と
取り上げられるの ....
父が玄関先に佇んでいる。
綺麗に仕立てたスーツを着て。

奥の部屋から出てきた私に
父は聞いてきた。

「俺は、いつ死んだんだ?」

私は一瞬
間を置いて答える。

 ....
志を掲げ/ぶれ一つ無く佇む詩人の背中。

「紡ぎだされる詩になりたい。」と
朗読を聞きながら思った。

(愛おしい・好きだ。)と言う気持ちも
詩を愛する心の前ではかすれてしまう。

奥 ....
火葬場の扉の前で 父を見つめてる。

広い部屋が 寒くて 凍えてる。

「ありがとうございました。」と頭を下げながら

釜に入る 棺 見送った。

燃える炎が 父を包み 

大きな ....
父が居ない家の中では
死ぬ間際まで着ていた半纏が
簡易ベットの上で持ち主を待っている。

不気味なほど明るい白一色の空模様は
渦を巻きながら雪をちらつかせ
波が立つように吹く風は
茶色 ....
たった一言の返答で
見たくなかった物を見た。
「これは、捨てなければならない感情だ。」と言うことを。

選ばれなかった私。
選ばれたあなた。

(何かを吹っ切れた。)と思ったら
 ....
「離してなるものか。」とは言わないで
父の顔に触れている。

「別れ際に泣くのは、銀幕の中だけだ。」と考えた。

これからは
ケーキを切るときも
饅頭を分けるときも
きっちり測らなくて ....
手を振る父が見えたような
雲ひとつ無い冬の空。

最後の呼吸にも似た突風が
火葬場の玄関を通り抜ける。

(足音だけが響く廊下。)

両腕に抱えた骨壷が
最後に抱き上げた身体よりも重 ....
脈を打つ山型のラインが
平行線をたどった。

手を握り
「お父さん。」と呼び掛ける私の前で。

(父は目を閉じたまま、酸素マスクを着けている。)

力の抜けた手は
時間と日にちを追 ....
お父さん作文。名前
「ゆ・い・あ・き・ひ・こ」

ゆ・豊かに・真面目に・生きてきた。
い・いつもにこにこ穏やかに。
あ・「あなたが大事。」とそう言って
き・きっと近くで眺めてる。
ひ・陽 ....
(最後まで、引き渡したくなかった大きな身体。)

「お骨になっちゃったから、仕方が無いね。」と
諦めた様に叔父さんが呟いた。

「お骨になっちゃったから、仕方が無いね。」
マイクロバスに乗 ....
居間で胡坐をかく父の姿を
時折見る。

(死んだはずなのに。)と思いながら
「お父さん。」と声をかけた。

(父はただ、静かに背を向けている。)

そこにいるだけでいい。
そこにいて ....
「いつかは死ぬんだ。」と理解をしたら
そこにいたはずの父が居なくなっていた。

「これからは、家族と力を合わせて生きてゆきなさい。」

墓前に背を向けた直後
三人姉妹の耳元で
父は確かに ....
梓ゆい(388)
タイトル カテゴリ Point 日付
父の顔。自由詩216/3/15 16:01
生まれ変わる。自由詩016/3/5 0:59
月曜日の朝。自由詩116/3/5 0:52
かえられないからかえれない自由詩2*16/2/7 3:37
お帰りなさい。自由詩216/2/1 20:41
寂しい味。散文(批評 ...116/2/1 19:33
鋳掛屋自由詩5*16/1/21 16:39
アップライトピアノコンサート自由詩4*16/1/18 3:39
お父さん泣かないで。自由詩216/1/17 21:37
お父さんのひとりごと。自由詩116/1/17 19:03
つらら。自由詩416/1/16 21:06
風の呼びかけ。自由詩115/12/14 6:05
約束事。自由詩315/12/14 5:17
大人になるということ。自由詩015/12/14 5:06
単身赴任。自由詩315/12/10 5:11
同じだと言い聞かせて。自由詩215/12/10 4:49
アニメーターの独り言。自由詩2*15/12/9 6:09
だだっこ。自由詩315/12/9 4:29
もういちど砂になって.自由詩4*15/12/5 3:59
叫びたい。自由詩415/12/4 4:14
2015年1月19日。(イルカ・なごり雪替え歌。)自由詩2*15/12/3 4:03
雲をこねて、波を泡だてる.自由詩3*15/12/1 17:28
これが答えと解かったなら。自由詩415/11/29 2:42
最後の朝。自由詩515/11/29 0:43
お父さんのお葬式。自由詩515/11/29 0:06
僕は寝ているふりをした。自由詩2*15/11/7 6:17
お父さん作文。散文(批評 ...215/11/5 13:10
お骨になったから。自由詩415/10/19 18:40
名残。自由詩5*15/10/16 1:07
さようならの前に。自由詩2*15/10/10 1:26

Home 戻る 最新へ 次へ
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 
0.21sec.