育まれた命が
今はまた別な
少し大きな動物を
育んでいる
なき声は言葉であり
懐かしい響きでもあり
意味はまだどこか
はるか遠いところにある
育まれた意味は
やがてまた別な
少し確 ....
雑踏のオーケストラが
鳴り止んだ夜の街で
耳をすませば
バイオリンの泣く音
チェロの慰める声
そのふたつ届く
どこか遠くで
自分のふりをして
誰かの代わりに
誰かが生きている
今日 ....
拝啓の文字が
背景に消えそうな
若くたよりない
母を呼ぶ声は
遠雷をおそれる
風鈴がからだを揺らして
細い糸にぶら下がっていた
そして大人になった今
いつしか切れた糸が
まだ頭につい ....
シャボン玉に
うつした顔が
空を舞い上がる
はじけると
わたしは幼く
母の布団の中にいる
目覚めると
またシャボン玉が
空を舞っている
積み重ねた
尾根の斜面を
流れ落ちる記憶の
管が開いては閉じる

ガラスにぶつかる
氷の音が
今は聞こえない
牛が食べたのだ

好きに呼んでもいい
動物を眺めながら
牧場で母と ....
僕のふりをしていた木が
いつのまにかいない
僕のふりをすることに
疲れたのか
あるいは木のふりをすることに
僕が疲れたのか
新しい図書館の椅子に座ると
声が聞こえる
ここにいたのだ
かつて絆という
名前があったように
離れてしまった言葉の
名前を呼び続ける
声と声が平行して
共鳴する音色は
美しくせつなくて
呼び方は違っても
意味は等しく
軌跡となり
記される ....
最終回の今日は
この曲を
とだけ言い残して
あなたは行ってしまった
声は今も宇宙のどこか
空白のタイムテーブルを
さみしくさまよう
終わりの時が来れば
またアンテナが
あの曲をとらえ ....
観察日記の
最終ページにある
やさしさは時に
人を不幸にする
の文字が
青く滲んでいる
向こうには
形跡が虹みたいに
消えていて
雨でも降ったのか
経験のように
過ぎ去る日々はま ....
秋の空が澄み渡る
山並みは寂しさを知る
存在はいつも無口で
意味だけがある
行こう
はかりしれない道のりを
距離と正しさはきっと
あなたとの信頼として
理解されるから
ぼくは彼女と校庭で
たったひとこと言いたくて
彼女はぼくと校庭で
たったひとこと聞きたくて
ぼくと彼女と校庭で
染まってたよね
たったふたり
植物の哲学が
首を傾げる午後
古い印が刻まれた
かつての貝殻を
家にして暮らす
国のひとたちが
二通りあった
終わりに海の底で
少しずれながら
響いている
静かな鐘の音を
平行線 ....
親戚のおばさんが
欠片になった
親戚のおじさんが
欠片みたいな顔をして
おしえてくれた
お茶を飲む
欠けた茶碗の
欠片を補うには
涙はあまりにも多すぎた
ひとはこうして
欠片に近づ ....
さかさまとんびが
てんとちをまちがえて
いっちょくせん
そらめがけて
じょうしょうした
そこにもちゃんと
そらはあったのさ
ひとにうまれかわって
かれはいった


The kit ....
しかけ時計の
音に捕らえられ
あなたは変わらない
からだつきのまま
水槽の底に沈む要領で
とても上手に
さかなになる
ごはんよと
声がすると
浮上して
返事をする
水槽をしまう
 ....
わたしはニュースを見た
あたらしく建てられた家の
正午の寝室の小さなテレビで
あの日から時は止まっている
止められたのだ
動くこともない
三十年ものあいだ
沈黙したままで
少しばかりの ....
信じられた永遠の
イルカのパーツほどの
たしかな柔らかさで
目の前の海が
これほどゆるやかに
光を重ねている
日は遠くたゆたう
波のまた向こう
また向こうへと
消えそうになりながら
 ....
声がする
そばであなたが
揺れている
海がわたしを
眺めてる
景色はやがて
描かれる
ふたりやさしく
染まってる
空は二度と
泣きません
バランスが悪い
僕も悪い
君だって悪かった
時を例えるなら
物語とは
薔薇きちがいの
天秤の上で
気づくべき落差を
転げ落ちて
愛し合う意味の
足りない部分
とても遠いところで
 ....
枕の下
転がるあなたは
どこへ行くの
過ぎ行く街の
真夜中の言葉
つないでも
意味にならない
枕を裏返す
わたしの番
枕の下
転がるわたしは
どこへ行くの
あなた答えない
わ ....
さみしい犬が
鳴いている
夜が忘れられて
やかんが沸く
鯨は吠える
イヌイットの
ソリに引かれて
作られては
壊される
道が未知となり
わかっている
朝帰り ....
美しい国が
海岸線を漂う
せつない季節があった
溢れ出す
何度も調整された成分が
朝日でも夕日でもない
光にただ照らされ
そのたびに
つないだ手を
何度も握りしめた
ため息の瞬間は
一度落として再浮上させる
ギアチェンジのようだ
うまくいかない
何度もギアを入れ直す
あなたは
うまくギアが入らないねと
やさしく言う
うまくギアが入ると
ギアが入っ ....
がっくりと
落とした肩を拾う
何かの実のように
赤く色づいて
種を持っている
やがて発芽する
青くてたくましい
力を持っている
肩は落とした数だけ
冬を語っている
肩は拾った数だけ ....
滝壺に棲むさかなの家は
とても深いところにある
若者たちが浮遊している滝の上流
老人たちが沈黙している滝の下流
ちょうどその真ん中にさかなは棲んでいる
若者にも老人にもなれずに
さかなはい ....
景色が歩いている
わたしではなく
まるで時のように
目をつむれば
色をうしなって
古い景色が歩いてくる
錯覚していた
わたしはこの世界を
歩いてなどいなかったのだ
夢を見ていた
はっと目をさますと五郎さんが
丸太小屋が焼けた
けれどもおまえのせいじゃない
そう言ってラーメンを食べながら
泣いていた

蛍光灯を消したまま
月のあかりで
その日の出 ....
はじめからこうでは
なかったはずなのに
無垢であるには混沌としている
空の色はもっと
違っていた気がする
もっと緑がかっていた気がする
ふたりはもっと
透けていた
むこうが見わたせるく ....
お盆に実家に帰ったら
なつかしい扇風機が居間にあった
こどもの頃に足でスイッチを入れたり切ったりして
かなり邪険にしていた扇風機が
とてもモダンで今っぽく
おしゃれな感じに見えた

お墓 ....
太陽の抜殻が
うすく影をのばし
速度を落としていく

過ぎゆくものはみな
風の一部となり
思いとともに
彼方へとはこばれた

恋人がいま
海のまんなかで
夏の手紙を書いている
 ....
小川 葉(1581)
タイトル カテゴリ Point 日付
少し大きな動物自由詩2*07/10/17 11:53
雑踏自由詩407/10/16 16:59
[拝啓。/君は元気ですか?]自由詩107/10/11 18:40
スナップショットで写した空自由詩5*07/10/6 13:35
氷の音自由詩107/10/6 2:49
擬態自由詩7*07/10/2 0:12
日々の果てまで自由詩107/10/1 23:07
最終回の今日は自由詩307/9/30 7:32
観察日記自由詩207/9/29 3:04
無口な世界自由詩207/9/28 1:24
ぼくと彼女と校庭で自由詩207/9/27 2:05
その時まで自由詩1*07/9/27 1:04
親戚の欠片自由詩0*07/9/26 1:44
さかさまとんび/The kite of the invers ...自由詩107/9/23 14:44
思春期自由詩307/9/22 10:10
青写真自由詩207/9/21 1:50
永遠の果実自由詩007/9/20 22:48
描写自由詩007/9/19 22:58
九月にたなびく自由詩5*07/9/18 23:05
寝台車自由詩207/9/18 22:13
細胞自由詩6*07/9/17 0:47
美しかった国自由詩5*07/9/15 0:00
ため息自由詩607/9/12 4:01
自由詩307/9/12 4:01
滝壺自由詩207/9/10 23:56
錯覚自由詩707/9/8 17:51
両親自由詩107/9/6 23:11
やさしいいいわけ自由詩607/9/4 23:58
扇風機未詩・独白5*07/9/3 22:17
秋の海辺自由詩407/9/3 2:17

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