建物と人が
梅雨明けのひかりを
跳ね返しては吸っていた
夏が影を濃くしてゆく
命の闇と宇宙の静けさを
反語のように振りかざして
風が首を撫でている
夏服の透き ....
デンジャラスをとにかく聴きまくっていた
スリラーにもバッドにもない突き詰め感に圧倒されていた
硬くてぶっ太い乾いたサウンドを休みの日にはフルボリュームでかけていた
ひとりの女はそれをいやがっ ....
改札口をでると広場は薄暮で
ほの暗い木々のなかに雀たちが鳴き渡っていた
こんな時間帯に、風にあたっているなんて、いつぶりだろう、
ベンチでたばこを一本燃やす
決然とベンチから立ち上がる ....
夜の公園をずっと歩いた
ふたりとも結婚式のかっこうして
二次会にはでずにふたりで歩いた
帰る場所はちがうから
夜がくるまで歩くしかなかった
好きだった頃は
ずっと好 ....
トラブルのため仲間と徹夜した
そしてみんな元気に帰っていった
勝負はあしただ
トラブルは俺達に
なにを伝えに来たのだろう
いや、俺になにを伝えに来たのか
午前3時5 ....
高一のときいまで言うパニック障害になった
実力よりうえの学校に入ってすこし疎外感を感じていたから
そのことが原因かな、と思った
電車を自転車に変え
剣道部をバスケに変えた
エレベーターには半 ....
会合を終えて神戸から倉敷に移動するともう11時だった
ホテルにチェックインしても脳みそはまだ高速をぶっ飛ばしている感じだ
2時間ぶりの煙草を喫煙コーナーで吸う
11時40分からマッサージを予約し ....
久しぶりの天気に気がいってて
あたし首筋に塗るのを忘れた
プラタナスの木陰をえらんで歩いた
もうあきらめながら一日を過ごした
一日にできることなんか知れている
十年かけて ....
となりのおっさんが着信音に出て
イソギンチャク死んだんか、
と第一声を発した
さみしいやろ、海にほったらなあかんな、
おっさんたちにとってイソギンチャクは
犬や猫のような ....
私たちから見たら
虫はなにも考えていない
なにも、というのは
私たちの考えていることはなにも、ということだ
地球から見たら
私たちはなにも考えていない
なにも、とい ....
曇り空のしたを歩いている
電車に乗っている
お客様に挨拶している
仲間にメールしている
六月の闇は深くなる
雨に濡れた髪はひじきになる
宇宙のからくりをふたつ考える ....
ソウルに出張すると飯は明洞でとることが多い
基本晴れおとこだけど
明洞はいつも雨が降っている
屋台でチゲ鍋、最初は辛くて食えなかった
野菜でも豆腐でも赤いスープがついてしまうとダメ
水を飲ん ....
紅茶をのこしてきみは消えた
兄妹のふりをして空の下を歩いた
きみの話に同情して
フロントガラスを殴った
そのあとはじめてホテルに行った
もう何年もそうしている兄妹のように ....
オンブラ・マイ・フ
もしくは、ラルゴ
あたたかで気高い
それを聴くたびに深遠は近くに
だれも知らない場所で
だれもが繋がっている
かつてこれほど
安らいだ ....
雨がまっすぐ降っている
女がじぶんのために着飾っている
お金はひとをすこし幸福にしてくれる
お花が時空の先端で揺れている
あなたの風邪が治りかけている
生物も無生物も
....
ここに基督者は神父だけだろう
神の御名を唱えれば聖霊も降りてくるようだ
ここは荘厳されてゆく
じぶんのことを素直に喜べない大人たち
こどもの頃は
じぶんの成長に得意顔してたじゃないか
きみは今世 ....
曇り空のしたで花は
晴れているときよりも
色を立てている
匂いも溶けだしている
晴れているほうが
よいことになっているけれど
晴れだけでは
人生の春秋が富むこ ....
まるくないから磨くのに
まるくないから悲しんで
磨かなければ磨かれない
あたりまえのことだから
ぼくは血肉で受け入れる
真夏日の夜風なびいてる
お店のひかりが道 ....
真夏日のホーム
フィルター越しに世界を見つめている
うろうろ悩んでみたところで
今が、ベスト!そう言い聞かせても
胸にさびしくツンとくる痛み
今から時速二百キロ?で
東京までこの身を運ぶのだ
真 ....
見知らぬところで
ひとのこころは
てのひらを返したり
大人だからだまっていたり
六月が川面をぎらつかせている
ぼくは見つめている
なにかを吐き出したくなっている ....
紺碧の空はちぎれた
それが青い花になった
だからあなたは
空のしたの青しか信じなかった
あなたのそんなメルヘンを
まもりたいと思った
そう思った刹那から
痛み ....
こころが感じたことを日々記している
こころ・・・
こころとは不思議だ
こころは私じしんであったり
ひとの感情を取り込んだものであったり
まったくの空想であったり・・・
(私は日々をたし ....
遠くから靴の音、口笛の音かもしれない
僕は歌うかもしれない
だれにも聞こえない、見えない歌を
詩はあまりに裸すぎて
隠さなきゃならない気持ち隠しきれなくて
ポストは赤くて僕は ....
じぶんががんばることが
誰のためにもなっていない
未来も含めて
誰のためにもなっていない
これ以上の絶望ってあるだろうか
言葉はいつも足りなくて
無力感ばかりにひた ....
新聞の一面広告の通販に500色の色鉛筆があった
1ヶ月に25本ずつが20ヶ月送られて来るのだそうだ
500色の色鉛筆なんて必要ないとも思えるし
500色の色の違いを見てみたい気もする
20ヶ月 ....
あいつは家出人とはちがう
もともと家なんかないから
今でいうネットカフェ難民よろしく
ドヤからドヤを渡り歩いて
それでおかしくはなかった
いまなら、ホームレスボクサー登場 ....
恋やら愛やら仕事やら
友やら親やら人生やら
きみはいつも手の鳴るほうへ
渡り鳥みたいにいのちをかけて
宗教やら政治やらではないぶん
ずいぶんといさぎよく
伴わな ....
耕太ら若手社員は九時から開始する新規開拓ダイヤル作戦に備えていた。
パソコンの画面をターゲットの会社のホームページにする。
何度も目を通した商品紹介ネタの模範トークにもう一度目を通す。
....
お客さんのところを辞してタクシーで新杉田まで出た。
新横浜までの車窓からは灰色の雲と灰色の建物、それと六月の緑、新緑は深緑に変わっていた。
季節は旅をしている、と思う。
それは空間の ....
その男をはじめて見たのは、ゴールデンウイークが終わったばかりの頃だった。
百年に一度の不況のメカニズムは分からないけれど、この四十人ばかりの会社にも、それは充分実感できるのだった。
上司が煙 ....
92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132
0.45sec.