日頃ぐうたらな僕が
一念発起して
庭の草をむしり始めた
夏の太陽はぎらぎら笑い
ぽたり、ぽたり
{ルビ滴=したた}る汗は目に沁みる
草のむしれる感触に
無心で熱中しながら、熱 ....
夏風にそよぐ
無数の葉のなかで
蝉時雨を浴びながら
自らに問う
――今日
ひと時の
今を
生きたか
僕は今日
仰向けに横たわる
蝉のうつくしさを、知った
電灯の力をかりて
風にゆられる
{ルビ向日葵=ひまわり}たちの笑い声
さやかに響く 夏の夕暮れ
机に置かれた一杯の水に
天井のランプは、反射して
小さな虹が架かる
今日も何処かで
人の間に
虹の橋はあらわれる
私はお茶をよく{ルビ咽=むせ}る
体質だからと、言い訳しても
どうやら違うということに
最近気付いた
お茶を一口啜ったら
まずは静かに味わうものを
流しこんでは、咽ていた
....
「ママ―、あれなーに?」
「?」の文字から、人生は始まる
母の手に引かれついていく
おどろきの{ルビ潜=ひそ}む
アスファルトから、ビルの街並みを見上げれば
時々足がもつれ、石につまずく ....
車内でマスクをするのは、賛成です
ただ、忘れずにいたい
思わず、くしゃみをした人へ
私の目線がささらぬように
ちょっとの 間 を置いてみる
口と鼻は隠しても
〝まなざし〟だ ....
今宵も一人ひとり
友の顔を浮かべれば
それぞれの夜を
闘っている
{ルビ面=つら}の皮一枚
透きとおる風のマスクで顔を覆い
今迄の僕より
少しだけ、つよくなる
もし君か僕が疲 ....
ボクラは今日も
肩を並べて干されてる
コロナの日々が来る前は
道ばたに、ゴミ箱に
捨てられていたのに
人間てゲンキンだな
わが身のキケンを感じると
随分ボクラを{ルビ重宝=ちょ ....
誰かの口から
誰かの口へ
思いがけず飛沫する菌が
感染しやせぬか
警戒セヨ 警戒セヨ
と、怖れるほど
ビニールシートの向こう側へ
あなたの顔は遠のいて
ぼやけて・・みえる
....
自粛の日々になり
妻との間に息子をはさみ
ひととき散歩する
街ゆく人の時間は
心なしか前よりゆったり流れ
公園ではキャッチボールをする親子
私は錯覚する
ウイルスに{ルビ侵=おか ....
令和二年の春
コロナウイルスは世に{ルビ蔓延=はびこ}り
入院中の恩師に会えず
実家の両親に会えず
隣町の友にも会えず
一つ屋根の下、妻と幼い息子と共に
ひと日を過ごし、夕暮れる
....
新型コロナに侵された日常を
静かに、掘り下げよう
自粛する日々から
できることを、探りだそう
人類は、私は
〝初心〟を久しく忘れていた
ひとつ屋根の下
三人と猫一匹で暮らす、 ....
名優・志村けんが
舞台の裏へいってしまった
人生はコントという名の
夢であるように
今もこの世にいると錯覚しそうな
あなたのコントを観る夜
僕は思わず、くすっと笑い
手にしたグラスの ....
かれはすごい
てんかんの発作で
鼻の骨が見えそうな傷を負っても
支援学校の上級生に引っかかれ
ほおに血を流しても
夜、パパが家に帰り
ドアを開くやいなや
百万ボルトにまさるほほ ....
君がすくえるひとがいる
この世界の何処かに
僕は時々
間違いをおかすけれど
できれば
忘れずにいてくれるだろうか
君の知らない場所で
今
人知れず、思うことを ....
日付が変わる前、朋と電話で話した
コロナの{ルビ蔓延=はびこ}るご時世を
朋は、コロンブスの卵に喩えた
僕は、こんな時こそ{ルビ詩=ポエトリー}と云った
ここからがスタートライン
目に見 ....
今日、JAZZ喫茶映画館に集う僕等は
日常の仮面をそっと外す。
万葉の頃から続く〝言の葉〟への思
いを胸に秘め、見えない風に背を押
され、見えない糸に導かれ、この夕
べに集う僕等は一枚の ....
ちょっと耐えて
触れずにいた、かさぶたが
ぺりっと めくれ
新たな肌が日に照らされた
ほんとうは
回復しよう、しよう、としている
皮ふも 心も
まるごと
川の流れにゆだねた ....
今日も
都市を往く車はまばら
通勤電車の車内もまばら
この不自然な街の静けさ
「今日の感染者」を伝える
ニュースの噂に背中を押され
人々は黙って大量の紙を奪い合い
スーパーに陳 ....
令和二年二月二十一日
詩人・石垣りん生誕百年の日
コロナウイルスは日本にも感染し
連日テレビは「今日の感染者」を伝える
僕が子どもの頃はなかった病原菌が
世に{ルビ蔓延=はびこ}り ....
今宵、記憶の薔薇は咲く
紅い 紅い あの花が
安易なラブソングは好まない
とか
僕はほざいていたけれど
所詮この世は男と女
今宵、記憶の薔薇が咲く
紅い 紅い あの花が ....
在りし日の
オスカー・ピーターソンの指は
鍵盤の上を無心に踊り
宙に奏でる音符の流れで、僕に云う
(生きるって、悪くないよ
時には素敵なこともある)
「この世に、虹はあるのか ....
妻と息子はかわいい寝顔でねているが
男はつらいよ
って、
誰か晩酌の思いをわかってくれる
友はいるかね
はぁ・・
悠々と 悠々と
川面に浮かぶ
ひとつのボールが流れてくる
何も惑わず {ルビ煩=わずら}わず
橋を潜り
今日から明日の方角へ流れゆく
あのように
川の流れのなかを
ゆきたいな ....
バックドロップや
ドロップキックや
ウェスタンラリアットを
次々と繰り出し
舞台という名のリングを
縦横無尽に駆けめぐる
詩人のあなた
その心根は繊細で
どこまでも熱い導火線で ....
目の前の
馬鈴薯と玉葱の炒めものは
たった一枚の皿であれ
時と所により
どれほどの幸いを、もたらすだろう
僕は今夜
晩年に娼婦の肖像を描く
マネの孤独の深さを知った
今宵 彼のアトリエを訪れる
ボードレールとマラルメの
美を語らう声が聴こえる
――汝のいる風景の〝今〟を視よ
....
ジャズを聞きながら
君に手紙を綴っていたら
知らぬ間にアルファ波が
出ていたらしい
気がつくと
時計の針の30分が
あっという間に過ぎていた
願わくば
退屈で長い1日よりも
....
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24
0.49sec.