五年程前に、上のの美術館で見た
山下清の描く「地下鉄銀座線」
暗い線路のトンネルに
あたらしい昭和のライトを灯して
完成したばかりのホームに
ゆっくりと入ってきた
....
そろそろ何でもない日常の革命を起こそうか
お爺ちゃんやお婆ちゃん達の前で
昨日都内の喫茶店で、偶然
美川憲一さんに遭遇したという
一期一会の詩を、朗読してみようか
職場の ....
「何事も、前向きに考える」
「ゆっくり、飲ませてくれ」
「マイペースでいこうぜ」
「ワイングラスになみなみ{ルビ注=つ}いだら、美味くない」
「長く、死ぬまでのみてぇな ....
旅の時間に身を置くと
宿で食べる朝食の
目玉焼きの黄味や
納豆の一粒までも
電球の日に照らされて
嬉しそうに皿に盛られているのです
小皿には仲良く並んだらっきょうの間に
も ....
年度末の会議の後
僕は所長に
新たな年の契約書を、手渡して
旅の報告をした
「 石巻の日和山から見渡す一面の荒地に
ひとり・・・ふたり・・・と
笑顔の花を咲かせたい ....
人生は素晴らしい――
という言葉はいらない
洋鐙のらんぷの灯る名曲喫茶にて
物語の「 」だけが、真実です。
ビールを飲んだ僕のからだは
北国の暖炉みたいにほてっとあっだがぐなってくる。
心臓がどくりどくりと高鳴ってくる。
このボールペンを持つ手も、震えてくる。
しゃんそんっていいなぁ・・ ....
今、神保町の珈琲店・さぼうるで
赤煉瓦の壁の地下にある席で
珈琲をすする僕の目線の先の1階では
美川憲一・はるな愛・ノブシコブシの吉村さんが
おいしいナポリタンをフォークで
すくっ ....
震災から1年の3・11に復興を願い
仙台で行われた朗読会の前
主宰者の南ダイケンさんは
「これ、心ばかりですが・・・」と言い
直筆で「謝礼」と書いた
白い封筒を、僕に手渡した。
....
「こんにちは」
「いい天気で」
「お元気ですか?」
世の人々の関わりは
シンプルな門答で成り立っている
妻や子との会話が
日々そうであるように
その(あたりまえ ....
3月9日・19時51分
新幹線の待合室のましろい空間
いくつか穴の開いた空席に
吸い寄せられるように、一人・・・二人と座る
一人・・・二人と、すくっと立っては
待合室を出て ....
新しい、新しい、と未来ばかりに手を伸ばし
追えば追うほど、幸いの虹は逃げてゆく
{ルビ古=いにしえ}の魂の形象を宿すものこそ
今・ここに新しい
古の魂をそっと胸に納め
自ら ....
賢治は今も、救霊している――
僕は、言葉を信じたい
暗闇に射す光のように
震える魂を再生する、詩の言葉を・・・
今・ここに集う僕等は
数えるほどの人かもしれない
で ....
12色のビー玉が入った瓶を
逆さに持って
机にこん、と落ちた一つは金色の
きらり、と光る玉でした
もし、空の上に
あなたを主役にした作家がいるなら
筋書きの無い物語を
....
今僕は、東京へと走る列車に乗っている
結婚前の妻と出逢ってからの数年間
毎日顔を見ない日はなかったが
今日から三日間
我が家を離れ、旅に出る
今僕は、妻と幼い周から
どんど ....
ある朝、霧の中に立つ少年に
旅人は声をかけました
「何をしてるの?」
「霧の向こうのお日様は
銀の鏡のようですね 」
「私も銀の色をした、一つの石を持ってるが
あ ....
私はずっと気づかなかった
霧の向こうのお日様が
銀の色にかがやいて
あなたの瞳に宿っているのを
私は今、遠い異国の空の下
遥か昔に栄えた、廃墟の前に立っている
まっ青な空に輝く太陽に照らされた
誰ひとりいない古代の都市で
幾百年の時を越えて吹く風に
角の溶けた無数の柱の間 ....
生まれ育った故郷の林が大好きな
賢治の妹トシは額に汗を滴らせ
まぶたの裏に
この世という牧場の出口で
風に開いてゆく、木の扉を視ていた
息を切らして、家に戻った賢治が
震え ....
旅から帰った若き詩人は
傷ついた木の机に凭れて
部屋一杯に射すひかりの中で
そっと瞳を閉じていた
思い出すのは
避暑地で過ごした夏のひと時
夏空に浮く一艘の舟
ゆっくり ....
38度の熱が出て、楽しみだった
僕の出版記念朗読会が、中止になった。
数々の再会の場面が夢になり・・・
僕は今、ふとんに足を入れて
ランプの灯を頼りに、この詩を綴っている ....
結婚前の嫁さんを僕は(きれいだなぁ)
と、うっとり見ていた
結婚後にいつも一緒の嫁さんは、時折
いもに見えることがある
高熱にうなされ
布団からふらふら身を起こした僕に
....
昭和5年の夏、関西のとある町にて
縁側に横たわり昼寝する
少年が目覚めた頃、母親は
まっ赤に濡れた{ルビ西瓜=すいか}を
お盆に乗せて、持ってきた
庭に立つ一輪の{ルビ向日葵= ....
「位置について、用意」
乾いた鉄砲が空に鳴ったら
時を忘れて
自らの存在が溶け去る迄
只、走り続けよ
脳内から分泌される
あどれなりんの快楽が
体内を巡り
魂の ....
ある夜の夢の中で
誰かの拳が
木のドアをノックする
乾いた音が部屋に響く
テーブルの向かいに座った
瞳の澄んだその人は
(私はいつも共にいる・・・)
と言ってすぅっと、 ....
テレビの中のマジシャンが
逆さに置いたシルクハットから
花吹雪が舞い上がった
一日に一つ位
そんな手品があってもいい
さぁ、この詩の中の
机に置いたシルクハットを
....
この体というものは
六十兆個の細胞がうようよと
今も無数に分裂しているという
私という現象は
常に現在進行形でありまして
「{ルビ服部剛=はっとりごう}ーing」であるように ....
夢に過ぎない明日の中へ
ひかりの者として、入りなさい
世の道に、躓く石のある時は
低い目線で地にしゃがみ
丸い掌でなでなさい
やがて吹く不思議な風は
人々の暗い心を吹き ....
半身麻痺のお婆さんの
両手を引いて後ろ向きで歩く
介護青年だった、10年前の僕
いつも面会中にさりげなくにこやかに
見守っていた初老の娘さんと
古都鎌倉の喫茶「扉」で
偶然顔 ....
深夜3時にむっくり起きた僕は
スタンドの灯り一つの部屋で
西田幾多郎が純粋経験を語る
「善の研究」の本を開いていた
(純粋経験の瞬間は、
いつも単純な一事実である
音楽 ....
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