ぼくの「片思い」は勘違いでした。
目の前のあなたに
「なまのこころ」で向き合い
瞳を合わせる時
互いの胸の両端は
よろこびの糸で
くいっ と結ばれました。
昼食を終えた
車椅子のあなたを
ベッドに寝かせ
おむつを開けば
あふれるほどの排泄物
「先輩ちょっといっしょにお願いします」
腕っぷしのいい先輩がやってきて
拘縮し ....
べろんべろんに酔っ払い
狸のつらでゆれる地面を千鳥足
今夜の{ルビ塒=ねぐら}のねっとかふぇの
個室のドアを開く
うつむいたスタンドの頭に
貼られたシールに書かれた
「 ....
図書館で資格の本の頁を閉じ
色彩を失った日々を嘆いた
長い手紙を書き終え
疲れた腕をしろい机にのせる
(机の下に潜むかみさま)が
ぼくの重さを支えていた
ふいに後ろを向 ....
酒の宴の窓の外
宵闇に浮かんで消える
いのちの{ルビ花電気=イルミネーション}
窓硝子に映る人々が
杯交わす晩餐は
遠い日に想い出される
束の間の夢
夜風の吹く
....
道の向こうから
傘を差す若い婦人が
ベビーカーを押して来る
雨に濡れないよう
ビニールの幕に囲まれた
幼い女の子
傘を忘れ
日常の雨にずぶ濡れ
靴下も湿った僕は ....
それは激痛すらも無く
いつのまにか緩やかな時のまにまに
我胸から{ルビ抉=えぐ}り取られた
空虚の闇
{引用=誰もいない深夜の映画館の
スクリーンに映し出さ ....
海沿いの駅のベンチに
腰かけた老婆はふたり
ひそひそ話で
地面を指さしている
そぼふる雨の水溜りに
浮かぶ
誰かが落とした
一枚の切符
やがて聞こえる
遠鳴 ....
会議をサボッて
帰りに寄った
夜の教習所
開いた
校舎の窓
路上運転までの
待ち時間に見下ろす
校内コースを
のろのろ走る
初心者運転者達
あれは日中の僕だ ....
一日働いていれば
あちらこちらから
いろんな形をした石が
飛んで来る
痛みなんかはないふりで
ほんとうは、あちらこちらに
こぶは膨らみ
あざは残り
なんでもない ....
仕事帰りに立ち寄った
ファーストフード
若い女の店員が
次から次へと
メニューに追われ
調理に追われ
カウンター内を
ひいひいとした顔で
荒っぽく動いているのを見 ....
「国宝薬師寺展」の垂幕が
灰色の壁に掛かった
上野の美術館
瞳を閉じる
観音像の絵が待つ入口へ
長蛇の列は
ゆっくり進む
ぽつり ぽつり
曇り空から
降り出 ....
お返事を、とても嬉しく読みました。
君の日記で薔薇の写真を見た時、
「 あ・・・にてる・・・ 」
と思ったのでした。
出逢う花ともかけがえのない「縁」が
あるのかも ....
誰かの投げたボールが
もしも飛んで来たならば
投げ返すよりも
よけましょう
( いずれ背後に、ボールは消える )
誰かの投げたボールが
もしもよけきれなかったら
胸 ....
自分の穴を
誰かにつつかれると
前は眉間に皺を
寄せたりしたが
今はもうどうでもいいのだ
面白がる人は
面白がるにすぎず
わたしの隠し持つ
孤独など
知りはしな ....
雨のそぼふる
路面に一人
いつまでも濡れている
あの丸い小石に
僕はなれるか
息を吸うては、吐き
息を吸うては、吐き
ヘッドフォンで塞いだ
左右の耳に流れる
素晴らしいメロディ
( 魂 )の、充電。
自らもうたいながら
日常へ踏み出す、 ....
川崎LAZONA5階
木のベンチに腰を下ろした僕は
各階に店の並ぶ円形広場を眺める
小さく見える人々の
行き交う傍らで
ステージに立つ
君の唄声を聴いていた
君の息子 ....
黒い壁に囲まれた
都会の個室
パソコン画面に映る
真青の空
あの日「向こう側」へ
逝ってしまった君が
今も遺言を語りかけるページへ
クリックする
時の止まっ ....
思い通りにならぬ現実に
いつしか胸に開いた空洞を
貫く剣を、我は磨かん
人の傷つく剣でなく
只、自らの弱さのみを斬る
光の剣を、我は磨かん
アクセル踏みすぎちゃったり
ブレーキ掛けすぎちゃったり
右に左にハンドルを
きりすぎちゃったり
( 運転は「その人」があらわれます )
誰もいない助手席 ....
金曜に夕暮れる、街の人波。
白いステッキを手に
太った盲目の女は、影を伸ばす。
黄昏の凸凸道をたよりに
まっすぐ駅の入口へ吸い込まれる、
後ろ姿
目には見えな ....
週末の夜
目の前に
しろい女のゆれるのを
眺めている
( 何故、こうして新たな命は生まれる・・・? )
ふいに思い
自らの内に仕組まれた欲望も
馬鹿らしく
目 ....
教習所の便所の窓辺に
もう十日以上も
大きな蚊の死骸が横たわっている
無表情な丸い黒目
力の抜けた細い両足
広げたままの羽
小さい魂は
すでに
何処かを
{ ....
今月の「ぽえとりー劇場」に参加してくれたdice
さんが朗読した詩のテキストを送ってくれたので、当日
の雰囲気を思い出しながら、レポートを補足します。朗
読のレポートは感覚的に書いていますが、 ....
わたしは何枚でも
自らを脱ごう
いのちそのものが
あらわれ
周囲の花々が
俯いていた顔を
開くまで
路上に棄てられた
くしゃくしゃのちり紙が
一瞬
白い薔薇に見えた
一人の同じ人間は
{ルビ涎=よだれ}を垂らした顔にも
後光の射した顔にも
なれるだろう ....
からからから
バスの車内の床を
なすがままに転がる
誰かが忘れたコーヒーの空き缶
かーん
いい音立てて
優先席の爺さんの
杖にぴったり止まった ....
昨日は雨のそぼ降る神保町の
古書店の並ぶ街並みを
地図を片手にさまよい歩いた
みるみるうちに地図は濡れ
丸めた白い魂にして
ポケットに入れた
翌日ポケットから取り出し ....
Mixiの長方形の空白に
パスワードの黒点を打ち込んで、
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ベンツの車内で美人のアナウンサーが
運転席に{ルビ項垂=うなだ}れ ....
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