元旦の夜のファミリレストランで 
僕が座るテーブルの、一つ向こうに 
少年時代の、友がいた。 

嫁さんと、子供ふたりと、母さんと 

父さんは、20年前の冬の朝 
突然に、心臓が停まっ ....
日頃の不摂生で 
年の瀬に熱を出し 
病院で点滴をした三日目 

今日、初めて気づいた 
点滴を吊るした棒の台車に 
歩きやすいよう 
掴まる取っ手がついてたことに 

昨日、僕は点 ....
扁桃腺が腫れて、高熱が出て 
水もろくに飲みこめなかったので 
仕事を休んで総合病院に行った 

耳鼻咽喉科の待合室で 
中年の美しい女が頭を抑え 
看護婦さんに背をさすられながら 
洗 ....
「おやすみタイマー」の時間が切れて 
はぁ〜・・・っと暖房は息を吐き出し 
お役御免、の佇まいで 
部屋を静寂が、支配する。 

その割り切り具合に何故か 
好感を持つ、夜のひと時。 
 ....
時は、人の死さえも 
やがて必然の穴へ 
ゆっくり、納めてゆくだろう 

時は、生々しい傷口さえも 
やがて不思議な包帯で 
ゆっくり、包んでゆくだろう 

もしあなたが、今 
頭を ....
車を降りて、ドアを閉めたら 
いつのまにか 
窓もボディも薄っすら泥に、汚れてた。 

気の重い出勤の朝は会社へ 
年の瀬に風邪をひいた今朝は病院へ 
けだるくアクセルを踏めば 
只、エ ....
{ルビ麺麭=パン}には、バター。 
御飯に、味噌汁。 

人間も、自らを引き立てる 
誰かさんが、必要で。 

以前は朗読する僕の後ろで 
キーボードを弾いていた君が 
ある日、舞台に ....
遥かに遠い昔 
すでに 
バベルの塔は、崩壊していた 

一九九九年 
世界の中心に建っていた 
N・Yのビルの幻は 
黒煙の中に、姿を消した 

二〇〇九年 
未だに人々はバーチ ....
わたしは一切のものを 
この業欲な手に 
所有することは、できない 

わたしが一切のものを 
この手から離す時 
初めて、目に映る世界の姿は 

{ルビ完=まった}き天の、贈りもの  ....
僕は君という詩が好きだけど 
僕は君の望んだ詩になれずに 
やがて別れの季節は、訪れる。 

なにをどうしようと 
足掻いても 
誰のせいというでもなく 
仕方のない、ことがある。 
 ....
遥かな夜空の彼方から 
世を去った友の涙が一つ 
ぼくの頬に、落ちてきた 

イヤフォンを入れた耳には 
(can you hear me?) 
という唄声が繰り返され 

昨日、遠い ....
今、(遠い異国の空の下で、産声が上がった) 
今、(夜の踏切で急ブレーキの悲鳴が、夜空を割った) 

今夜、どんどん膨らんでゆく宇宙のなかに 
今夜、みるみる病んでゆく街のなかに 
世界の始 ....
 今夜、遠い空の下の鳥羽で、一人の詩人の通夜が行われた。その時僕は、旅先の秩父から、地元の鎌倉へ戻って来ていた。何処から書き始めるべきかわからないが、川村透という詩人は、その正義感の強さ故に、かなりハ .... その昔、無数の電車が地面の下に潜る前・・・ 
東京都内の全域に、のろりと 
路面電車が走っていたそうな 

  かんか〜ん 

発車ベルの音がして 
気づけば目の前に立っていた 
小ち ....
わたしはここで 
世界や国を変えようと 
背伸びをする訳でなく 
只 
目の前にいる 
ひとりの人が倒れていれば 
明日を待たずに 
手を取って 
不恰好な二人三脚で歩いていると 
 ....
何故生きるかって? 
目の前を覆う 
すべての霧を射抜いた 
明日という、夢の為さ 
無味乾燥の時間に 
一本の絵筆を持って 
いろを塗るのは 
他の誰でもない、自分です。 
かつて薔薇のように美しかった 
5月生まれのお婆さんは 
先週、深夜にベッドからずり落ちて
車椅子にも乗れずに足掻いていました 

かつてメディアの第一線で 
活躍していたお爺さんは  
 ....
今迄のオイラは 
少々の向かい風が吹けば 
へこたれて 

縮んだままになっちまう 
ひ弱な{ルビ御玉杓子=おたまじゃくし}なのであった 

物語の続く台本を、いつも
何処かに投げ捨て ....
自分の姿を鏡に映しても 
人の姿を眺めていても 
人間は、何かが一つ、欠けている。 

鏡に映る、等身大の自画像と  
鏡の前に立つ自分という人の
向き合う間に、ささやく風は 
今日も密 ....
飛騨高山へと走る 
ローカル列車には 
マレーシアの5人家族が 
横一列に、座っていた。 

カメラを首にかけた夫が 
向かいの席にいた僕に 
英語で話しかけてきて 
僕はカタコトの単 ....
すべてに嘘をついていると 
思ってしまうような 
意気地なしの日がある 

そんな日はいっそのこと 
大事な人にも
くるりと背を向けて 

誰にも見つかることのない 
秘密の場所のド ....
「LePoet」という 
木彫りの文字が 
ゆらり、夜風に揺られている 

その看板を下げた店の 
隣の家の竹垣に、ひっかかり 
雨にぐっしょり濡れた 
毛糸の帽子 

店の洋燈に照 ....
夜行列車を降りた旅先の富山で 
朝から無人のグランドに行き 
雪化粧した立山連峰に目を細めながら 
お兄さんと、キャッチボールをした。 

玄関を開いて部屋に入ると 
春に生まれたばかりの ....
お気に入りの詩集を開いて 
(いい詩だなぁ・・・)と思い 
目次に並ぶ題の上に 
丸をつけたら 
手が滑って 
凹んだはーとの形になった 


  * 


ほんものの詩というの ....
旅の列車に乗り 
ふと車窓の空を見上げたら 
日輪の周りにあらわれた 
大きい虹の輪 

アルプスの頭上に広がる
いちめんの空が  
車窓の僕に 
何かを云っている気がした 
仕事を終えて 
草臥れた足を引きずっていった 
夜の職場の食堂に 
巨きな鮭のお頭達が 
どっさり、皿に盛られていた。 

たじろいだまま 
ぼうっと手を出せない僕に 
焼かれた白い目 ....
婆ちゃんが三途の川を渡ってから 
いつのまにやら9ヶ月 

日曜の朝早く目覚めた僕は 
思いついたように動き出し  
あまりの遺品の多さに 
ほったらかしていた
戸棚の奥から 
次から ....
頭上には 
世界の全てを覆ってしまう 
曇り空 

足元には 
この世に産声をあげた日の
ひかりの種 

あぁ生きるとは 
{ルビ嘗=かつ}て地上で
夜の{ルビ灯=あかり}の下に揺 ....
{ルビ嘗=かつ}ての僕は頼りなく 
些細なことで今にも崩れ落ちそうな 
不安な、不安な
青白い魂でした・・・ 

今の僕は 
昔の服を脱ぎ棄て 
無明の闇に、瞳を閉じ 
高まる胸に、手 ....
服部 剛(2148)
タイトル カテゴリ Point 日付
幸福の食卓 ー同級生との再会ー 自由詩210/1/1 21:48
新年の扉 自由詩8*09/12/31 21:29
こころの病院 自由詩2*09/12/31 15:14
新しい季節へ 自由詩309/12/31 14:55
時間という薬 自由詩4*09/12/29 23:19
愛車に捧げる詩 自由詩1*09/12/29 20:28
オノ・ヨーコの伝言 自由詩3*09/12/22 22:33
蜃気楼の都市 自由詩4*09/12/22 22:15
星夜 自由詩3*09/12/22 21:54
空の背骨 自由詩609/12/14 23:43
呼び声自由詩309/12/9 23:02
0歳の詩人に 自由詩309/12/7 23:29
世を去り逝く詩友への手紙 〜追悼・川村透さん〜 散文(批評 ...609/12/7 22:36
都電荒川線自由詩509/12/6 8:15
風の声援 自由詩209/12/6 7:50
明日を、見る。 自由詩409/12/1 21:52
時間のいろ 自由詩009/12/1 21:48
愛の賛歌 自由詩309/11/27 21:17
ど根性蛙の詩 自由詩309/11/27 19:43
風のささやき 自由詩009/11/27 18:54
記念写真 自由詩209/11/25 18:10
ほんとうの声自由詩209/11/25 17:48
濡れた帽子自由詩109/11/25 17:40
青い鳥 自由詩309/11/16 21:23
はーとの絵 自由詩309/11/16 20:19
虹の輪 自由詩309/11/16 19:56
鮭の頭 自由詩409/11/2 22:18
祖母の家出 自由詩609/10/25 19:33
詩人の樹 自由詩509/10/24 22:57
炎の鳥 ー雪の降る、家持の庭と夜空に響く、コルトレーンー 自由詩609/10/13 20:24

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