少女だった私が 紡いでいた唄は
大人になる私に 届かないで消える

全てをもう何もかも 過去にしてしまいたくて
あの頃握り締めていた 嘘を嘘に返し
踏みしめていたはずの 現実は未だ見えず
 ....
空は澄み
ふたりを別つ
霧が晴れ
言葉が消えて
あなたも消える
湧き上がる言の葉に
燃えさかるあの空を
再び
目にすることは叶わず
私の空は
静かに暮れてゆく

悲しみは
声にならずに
もう雨も降らない



あの日私が
太陽だと信じた ....
奇跡を起こす
魔法はなくて

過去のあらゆる
自分を恨む

泣いても唄っても
呪文にはならない


けれど
嘆くわたしは
詩を作り、また
思い出を自分の
世界に閉じ込めて
 ....
ケトルの湯気に咽喉を震わせ
吹雪の窓に背中を預け



世界が消えていくのを
自身が溶けていくのを

わたしは
わたしは
指凍る、夜学は冬の季語じゃない
書けば書くほど散らばる言葉

春遠し、けれど夜明けはひしひしと、
両の瞼に重く被さる



わかります

これは魔法の呪文です
解けば不思議の ....
日曜を 待ち侘び老いる きりぎりす からっぽになった私が
書きあらわせられることなど
なにもないのだった

誰もいなくなった私が
これ以上はなすことなど
なにもないのだった

静謐な図書室の
窓辺に寄り添った椅子は
 ....
831 手に手を取って 夏と逃げ 理解不能の川よ
わたしたちを隔てるならば
いっそ渡れないくらい
どうか深く暗く
光も届かないくらい
どうか広く遠く

自分を正しいと信じ込んだあなたは
戦うなと声を張り上げて

お ....
春障子わたしをごっそり抜け落ちて 知りたかったこと 知りたくなかったこと
知らなくてよかったこと 知ってはいけなかったこと
とけるとける 落日の坩堝 橙色の窓辺

消える影と影の少女 黄昏の廊下に 一枚の印象を残して
出会え ....
学校を抜け出して
坂道を下ると
線路のあたりから
かすかな潮の匂い
遠い浜辺へと
心を急かせても
水面を見る前に
五時間目の鐘が呼ぶ

走れ走れ
さよならのために
さっぱりわから ....
行き着く先は
標本学
無言の月ごと
ホルマリン漬け

かじかむ事すら
忘れた手
恋の形見よ
貴方をかざる
引汐を 追って沖まで 春の海

{ルビ石鹸=しゃぼん}玉 私の知らない 窓のそと
沖からの風は
ずっと前に止んで
マリンブルーのジュースの
べたつきだけ残った

たった一口
飲ませて貰った
激烈な甘さも

くちびるに染みいる
かすかなぬるさも
飲み込んでし ....
魚の眼はにこごりの眼である
滓々の溜まり水である
魚の眼はあらゆる向こう岸を
私より先に見に行ったのである

白色の食卓で対峙したそれに
容赦なく朱塗りの箸を突き刺して
ぺろりと平らげた ....
銀色の背を
ひるがえし

切り身の魚は
空を飛ぶ

お鍋は底抜け
わたしの手

あなたの海には
なれません

赤い中身を
ちりぢりに

切り身の魚は
空を飛ぶ


 ....
影法師の女の子
どこまで歩いても
水槽の底


影法師の女の子
どこまで旅しても
あたまのなか


影法師の女の子
あなたの足跡は
道にはならず

まどろみの浜辺は
うつ ....
曳舟(19)
タイトル カテゴリ Point 日付
春色の死自由詩211/4/19 5:03
追慕の筆跡短歌109/6/8 0:11
虚ろな空へ祈るのは自由詩309/3/13 2:41
魔法が消えた日自由詩208/6/14 23:28
氷解自由詩008/2/8 4:51
一夜漬け短歌008/2/4 1:13
無題俳句1*07/11/29 23:21
絶筆の冬自由詩107/11/15 0:40
逃亡記俳句207/9/14 2:48
川の話自由詩207/8/18 0:24
うららかな俳句307/4/23 0:07
落日の坩堝自由詩307/4/4 17:00
京浜工業地帯自由詩607/3/30 0:03
完全体短歌507/3/17 16:11
さよならの窓俳句507/3/2 16:39
ラムネもどきの海自由詩307/2/26 1:02
眼底検査[group]自由詩1107/1/29 19:59
切り身の魚は空を飛ぶ自由詩407/1/22 18:30
みぎわの夢自由詩307/1/14 1:09

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