滑車の前で 光を背に
腕をひろげて 動けずに
崩れ重なる門の残骸
霧を貫く鉄の橋から
したたる滴を聴きつづけていた


霊はいて
雪の地に立ち
応えを受ける
 ....
低い雑音が
長い指で部屋を握る
振り落とされそうになりながら
いつかは終わる
いつかは終わると
言葉を噛みしめながら
揺れを震えを聴いている



誰の声にも触れ ....
かえで
水の かえで
誰のものにもならない鳥が
目をふせ
何かを見つめている
少しずつ
少しずつ ひらく羽


雨の朝のかたすみの火
濡れた葉の色
羽の色

 ....
自身の無い
既視感の容れ物
底には穴
流れ出る天国


天使の足もと
雪はむらさき
少しだけ燃え残る
風と羽のなかに立っている
ふたつとないわたしはひとつではなく
ただひとりのわたしはふたりのわたし


これは わたし
これも わたし
あの日のわたし


そのままに触れた手に落ち
切 ....
褪せた町の灯りが屋根をすべり
落ちることなく消えてゆく
その色は激しい
その音は悲しい


何かが歪んで立っている
歪みゆえに美しく立っている
その歌は激しい
 ....
とどまらせようとするかぎり
けしてそこにはとどまらない
手をとり 馳せる
見えない姿
見える意思
ほぐしても ほぐしても
つむぎあうもの


暗い光の
いち ....
冬が融ける
血のしたたり
音は跳ねる
夜の火矢


とどかぬもの
とどまるもの
ふところから
燃えあがる音


子供の頭
カラスの羽
公園をまわり
 ....
四階建ての夜がゆく
長い長い橋も一緒に
星が少しも近くならず
自分の足だけが遠い夜
ひとつだけ灯る窓を乗せ
音の鳥たちを引き連れて
夜はゆっくり東へ向かう

 ....
自転車の前輪の
音も姿も消えてゆく
ただ後輪の影だけが
どこまでも自分を追い抜いてゆく


見えなくなる 見えなくなる
夜の光の下
深緑の猛者
おいしげる
おい ....
目にはふたりの天使がいて
朝のまばたきに言葉を交わした


ある日目覚めるとひとりの天使が
目の下の黒ずんだ荒野に去ってしまっていた


言葉の無い朝の光に
片方 ....
雨を吸った荷を枕に眠り
どこまでも開きつづける羽を夢みる
左側だけが蒼い羽
鍵を持つ手を戸惑わせる羽


いさかいの火に
月は燃え 雲を吐く
ただの黒へ ただの黒へ
鳥は沈 ....
にわかには信じがたい歌と指によって
けだものは のけものは 降って来る


目にあまるけだもの
手にあまるけだもの
首を差し出せば
からみつくけだもの


出た ....
筆を取れば
紙は消え
紙を取れば
筆は消える


身体にあいた小さな穴を
言葉は通りすぎてゆく


灯りの消えた店のガラスに
明るい傘がひしめきあい
水た ....
果実のように眠る蛇が
枯れ木の枝に揺れながら
見知らぬ少女に呑まれる夢を見ている


少女は蛇を知っている
眠ったままの蛇の頭を
深く口に含んだとき
無味の毒が舌を ....
棄てられた道のざわめき
野に沈んだ鉄の轍が
震えるたびに運び来るもの
蒼と紫の光が軋み
激しく小さな 
数え切れない夜になり
雲を鳴らす音とともに
草の波をつくりだ ....
あなたのざくろを手にとり
涙が止まらない
いつのまにか降った雨で
道は濡れている
雲は西へ西へ西へと渦まく
夕暮れはもう地のほうから蒼い


鉄塔をまわり終えれば
 ....
夜の灯りに染まり連なる
紅くにじんだ雲の前に
誰もいない建物がつづいていた
記憶と 事実と 交響と
淡く静かな流れに沿って



目に映る火と
映らない火の
か ....
午後に目覚めた双子の猫が
雨のむこうのはばたきを見ていた
夢の音から目をそらし
見つめた先にはばたきはあった


はばたきは薄く光を帯びていた
ゆっくりと近づく別の ....
咲くものを追い
影は葉のように落ち
描かれた歌を隠した


ふと混じりあい
ふと離れ
振り向き
微笑む日


影は速く
光は遅く
まわりつづける


 ....
夜をひらく火のように
あなたがひとりひらかれるたび
わたしもまたひらかれます
冷たい湖の前で
空をわたる音の前で
野を分ける火のように


あなたが放った色として
 ....
がんじがらめ
ゆうべの龍
さらした光
たなごころ
虹の根元を
地の夜にひたす
まわるまわる鋭角の
ところどころが蝙蝠の属
黒の流れに映る紅
散ってはひらく葉の ....
魚の群れが夜を飛び
鱗と涙を落としては
何も無い地を焼いていた
火の端々が鳥になり
さらに暗い夜へと去った


雲と砂の波のなかで
魚は涙を閉じていった
白と ....
水たまりに映るいさかいと雲を
雨がゆっくりとかきまぜる
人は過ぎる
空は過ぎる
水たまりの底のむらさきに
次の空がやってくる


鳴き声のように震える音が
どこから ....
花が居て
狂いたい
と言った
なにもしてやれないので
川にうつる枝のなかに立ち
はらわたの森をひらき
ここにお入り
と 言った


蝶が来て
狂いたい
と言 ....
木立 悟(2335)
タイトル カテゴリ Point 日付
滑車の前で自由詩603/10/27 10:06
十五の春の走者自由詩603/10/24 19:06
自由詩303/10/24 19:03
ノート(40Y.10・19)[group]未詩・独白203/10/24 19:00
ノート(こだま)自由詩103/10/22 0:36
ノート(つむぐ)自由詩103/10/22 0:35
ノート(糸水)自由詩403/10/19 23:06
残冬軌自由詩203/10/19 23:05
ノート(40Y.7・15)[group]自由詩203/10/17 19:40
ノート(40Y.7・4)[group]自由詩403/10/17 19:39
ノート(40Y.5・11)[group]自由詩303/10/17 19:38
標をすぎて自由詩403/10/15 0:33
散華自由詩403/10/15 0:31
自由詩403/10/12 14:23
ノート(終冬の蛇)[group]自由詩803/10/12 14:20
鉄と緑自由詩803/10/9 9:02
ノート(外へ ふたりで)自由詩503/10/9 9:00
火は緑自由詩503/10/9 8:59
猫と灰蛾自由詩303/10/7 20:46
奏者自由詩603/10/7 20:45
こがね自由詩503/10/7 20:44
ノート(40Y.10・3)[group]未詩・独白303/10/6 7:46
先魚進紀[group]自由詩703/10/6 7:43
冬と光自由詩803/10/6 7:42
ノート(緑透火)自由詩1703/10/6 7:41

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