湿度高き日に
あなたの白き指を想う
その指がなぞる先
北上する飛行機雲のひとすじ
オホーツクを抜け、
北極海へと達するに違いない航跡の
さて、
北の海も、夏ともなれば、
さすがに日差し ....
一人の男が死んだ。
頭の禿げ上がった,どこにでもいるタイプの男。
でも,今までに,脳卒中を克服し,癌を克服し,次は心臓だけだと豪語していた猛者だった。
天も,流石に三本目の矢を過たなかった。
 ....
季節はめぐったばかりだというのに

いきなりの寒気で

空がずいぶん高く背伸びしているのを

ビルの二階から眺めながら,マグロのすり身と卵をかけた丼を食べる。

北国の雪解けを思わせる ....
腕を組んで歩こう,あなたと
腕を組んで歩きたいのだ,あなたと
明日は,この体を銃弾が通り抜けるかもしれない
明日は,この体が四散するかもしれない
だが,今は,あなたと歩いている
この静けさが ....
君の思い出を引き連れて
春の陽気の古都をさまよう

新しいものと古いものとが
同居するこの町を

訪れたのは
二十年ぶりか

あの頃の私は
ここにはいない

もちろん
あの頃 ....
投げたき言葉の数だけ
後悔が増えていく。

投げ残した言葉の数並みの
自己嫌悪が積み重なる。

君を
と、言いかねて
笑いで誤魔化す時
誤魔化し切れない
屈折が心中に拡散する

 ....
飛行機が高度を下げ
雲の平原が途切れると
一面の白い大地が現れた
ところどころに
きれいに刈り揃えられた陰毛のような
針葉樹林の群れ
一列であったり、林であったりする
その間をアスファル ....
樹液であったか
あなたの白磁の指先は
四月の風の黄砂に紛れて
鼻腔に忍び込むのだ

だから
あなたの肌の温もりが
触れたそこから
皮膚は波打つ
毛細血管に
タラップが降ろされ
血 ....
遥か高みには
まだ、冬が居座るらしいが、今日の空は
新しい季節の名前を冠せられた
無色の風がひそやかに通り過ぎ
木々を一斉に芽吹かせる

遮るもの一つ無く
高みに向けて突き抜けた

 ....
御岳の向こうに未だ冠雪して眠るは
北アルプスの山々らしい
点在する千切れ雲に囲まれいて
春の前線の便りすらまだ届かない地

その地に住まうおばぁは、
縄結いながら 雪解けを待つ
日もささ ....
ここは、
坂の多い街だ

だからだろうか
気持ちが左斜めに傾いている

喫茶店の中から
土曜日の朝が動き出すのを

流行の曲を聴きながら
見ていると

坂道を
君が下って行く ....
青物横丁を彷徨う

ここには
至る所に路地がある

路地の奥には
飲み屋があったり
寺があったりする

路地の途中に
さりげなく長椅子もある

ある路地の途中に
大きな墓石が ....
さだめし寂しいと思え
その肉体を風にさらして、
歌う苔むした1本の柱よ
カラカラと矢車の舞い、舞う、
舞ううちに時は進み
空を漂浪する魚類の
熱き眼差しも忘れ去る

とりもなおさず、取 ....
降るのではない
吹かれ来るのだ

寒暖の激しい悠久を
安住の地と決め
とどまりいたところを
いきなり大気に持ち上げられ
大空を揚々と移動する雲を抜け,
丸く広がる黄色の大地と,さんざめ ....
待つ事の意味を忘れた
君、恋しと、
河原の小石の乞う
何故に
まだ春は来ぬ
待つ事の意味を
見つけたし
外海の波の荒さ
先に見るが
価値
後より追うは
坩堝

待つ事の意味を ....
桜、咲く
ちらほらと咲く
ああ、春ねと
声に出せずに
唇噛み締め
うつむく
電車の中
楽しげな語らいの声が
通り過ぎる

咲く、桜に
心裂かれ
止まったままの
春を思う

 ....
何故?

と聞かれると,困ってしまう。

逆に聞き返したい,

「何故?」

何故,あなた方は,戦わないのか。

自分の運命や人生に対して,

ギリギリの戦いを挑まないのか。
 ....
風は,
記憶に乗って吹きすさぶ
寒空であれば,あるほどに
記憶だけを頼りに
吹きすさぶのだ

星々の瞬く
張り詰めた夜の中
かつて海であった場所や
切り崩された山の頂を
手探りで渡 ....
あなたの寝息に欲情する夜
疼痛のようなそれを抱えたまま
来る春を想う
開け放した窓のカーテンを揺らし,
夜光虫の群れが舞う
季節外れの風鈴が
時を支配する観覧車の軋みのように
静かに叫ぶ ....
あの方と初めてお会いしたのは,
確か,昭和7年の天神様のお祭りの時
お父様の会社の方のお知り合いとかで,
あの方から声をかけてこられた


怒りながら
呟きながら歩くこのババを, ....
ばあちゃんは、今年七十五歳だ。十人ばかしの小さな老人ホームに住んでいる。亭主の残したラーメン屋を売って、ここに移ってきた。ばあちゃんは、天涯孤独だ。亭主は、十数年前に、息子は、それよりももっと前に .... Dear Fujiko

出がけに大雨だったので,
駅まで車で送れと女房に言ったら,
ブツブツいわれて,
キレタ


(オッ,なんだか詩みたいだなぁ)


タクシー拾おうとし ....
ビルの谷間に
あなたの影が忍び込み始めると,
夜は街を装い
ヘッドライトの灯りが
チラホラ
チラホラ
ワインの赤を
耳元で語るのだ
雨模様の春先の
闇に溶け出した起重機が
密かに企 ....
だから,どうだって言うのさ
別に,いいじゃない,さぁ
そんなこと,どっちでも
何気にしてんのよぉ


行き先を,適当にでっち上げて,
出てきた先は,事務所の近くのいつもの隠れ家で
聞い ....
歴史はよぉ,こねーな乱暴狼藉が生み出すんでにゃーでよぉ

五十六人目と,自らをそう名乗る藤吉郎が言う
泥だらけの顔で,目だけをぎらぎらと血走らせ,
長い旗指物を持ってのそりと立つ
見渡す ....
アスファルトはもちろん
六甲山の山並みも、ヨットハーバーも
歩道橋も、イカリスーパーも、スーパーのトレードマークの
「錨」の横に捨てられている小犬達も
スペイン土産にもらったチョコレートに混入 ....
『国際通り』

ここはカリビアの街
と,思われた。
老若男女全てが,
取りも直さず,
暑気と酒の泡の上に浮いている
その間を,車が駆け抜ける
夜は,いつまで続くか
喧騒は,朝を知 ....
家の間に間に沈む,うすら赤い月よ
発酵よ
若きオイディプスのため息よ
残光よ
名残のみとどめる冬の冷気よ
お前の移り香よ

一つの歴史となるか
二つ目の笑い話となるか
悲哀は,ただそ ....
白状いたします。

あの日,人間の脳味噌の細胞の小さな塊を,口に入れたのは,
私でございます。
ああ,そのように引かれなくても。
そのように,犯罪者のように遠巻きにするのは,
やめて下さい ....
『失せ物,容易に見つからず』と,書いてある。
はてさてと,わが身を振り返り,
ひっくり返しもし,
パタパタと,ポケットなんぞもはたいてみる
失せし物が,とんと思い出せぬ

思い出せぬから, ....
do_pi_can(51)
タイトル カテゴリ Point 日付
2006年夏 暑中お見舞い申し上げます未詩・独白406/8/15 0:12
「男の死 」未詩・独白106/5/9 2:59
歴史は結局,街に吸収されていく自由詩306/4/25 0:28
「腕を組んで歩こう」未詩・独白206/4/23 23:35
金沢にて自由詩106/4/20 22:37
投げたき言葉の数だけ自由詩306/4/20 0:15
北の面影自由詩206/4/17 0:19
四月の恋自由詩106/4/16 9:42
春の微動自由詩106/4/12 2:07
遠望自由詩006/4/9 17:26
半蔵門自由詩206/4/8 9:45
青物横丁[group]自由詩006/4/7 21:29
冬時・幻想の春自由詩006/4/7 2:11
「黄砂」自由詩106/4/5 23:57
「待つ事」自由詩106/4/4 1:33
「桜、咲く、狂う」未詩・独白106/4/1 12:26
ある国の現実   〜モスクワで逝ったチェチェンの女戦士に捧 ...自由詩006/3/19 3:03
風は.....自由詩206/3/19 2:28
「来る,春,狂う」自由詩006/3/14 22:39
この場所に part2自由詩006/3/13 0:18
「ばあちゃんの不思議なラーメン」散文(批評 ...306/3/8 18:29
フジコ,俺は切れる寸前だ自由詩506/3/8 3:58
春・夜・雨未詩・独白404/4/7 1:00
だから,どうだって言うのさ未詩・独白204/3/19 1:20
桶狭間にて, 五十六人目の藤吉郎未詩・独白604/3/17 12:21
「熱射する朝」未詩・独白504/3/13 2:58
「O・KI・NA・WA」未詩・独白204/3/10 16:43
しじまの帰り行く未詩・独白6*04/3/7 10:38
ブレイン・イーター散文(批評 ...404/2/11 18:00
「失せ物,容易に見つからず」未詩・独白004/2/11 17:51

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