杉の林に静ひとつ
靄の立ち込める朝
靄に紛れて時間が漂う
暗闇から聞こえる森の声
林は何を考えている
杉の林に静ひとつ
緑の湿地に隠された
緑の夢と宝物
眠りから覚めた林の向こう
....
窓の外は花の雨
傘もささずに飛び出せば
白い花びらがそっと揺れた
まるで僕の心を知ってるように
どんなにかくしても
走り出してしまったこの想い
いつでも君のことばかり探してた
君 ....
わたしのなかのうたが
青い蝶になって
空の彼方へ飛んで行った
鳴り止まないオルゴール
うたのないまま時は過ぎて
今頃おまえは
どこを飛んでいるのだろう
どこでうたを歌っているの
....
春愁に耽る窓辺に
春の宵は更けて行く
何もかも朧に映るのは
この宵の不可思議のなせる業
月の{ルビ面=おもて}も遙かな山の端も
朧に霞み夢心地にたゆたう
私もまた春宵の魔法に魅せられ
桜 ....
君がまだ言葉をうまくしゃべれなかった頃
青空を指差しては「キー!」と叫んでいた
最初は何のことかわからなかったけれど
君の指差す方向にはいつも
飛行機が気持ちよく青空を滑って行って
....
夕暮れ誰かの輪回しが
カラカラカラと泣いていた
知らない少女の影法師
カラカラカラと泣いていた
だあれもいない街の角
人恋しいと泣いていた
街の広場の古井戸が
カラカラカラと泣いてい ....
さくら さくら
あの人を返しておくれ
さくら さくら
私の元に戻しておくれ
さくら さくら
女の業が咲き乱れ
さくら さくら
今宵私は鬼になる
満開の桜の花の下
額に蝋燭 ....
こわがらなくってもいいんだよ
花は君を食べやしないよ
ただやさしい香りを放つだけ
春はこんなにもあったかいから
生まれたばかりの君にもわかるはず
だって春は君の母さんのぬくもり
ほら大地に ....
星も見えない
どこまでも暗い夜
ごうごうと唸る夜の咆哮と
草原を吹き渡る風の音だけが響く
僕はひとりきりの部屋で
夜が明けるのを
時が訪れるのを
ただじっと待っている
わずかに僕を ....
アネモネの恋の痛みが風に散り
着飾って並んで見てるチューリップ
蒲公英の綿毛に乗って空へ行こう
隠れてもわかっているよ沈丁花
青スミレ君に捧げるサムシング・ ....
雲のように
雄々しく自由気ままに
空という人生行路を流れ行く
時には羊のように{ルビ溌剌=はつらつ}と
晴天の空を駆け巡り
時にはどんより{ルビ鈍色=にびいろ}に
大地を覆いつくす影と ....
卵から孵った夢の中
僕はアリスとお茶会へ
双子とダンスを踊ったら
女王様とクローケーをしよう
にやにや笑いの猫ちゃんと
バタつきパンの蝶を追いかけ
うさぎの穴に飛び込めば
グリフォン ....
あなたから逃れるように
発車間際の列車に飛び乗れば
涙が後から飛び散って行く
誰かここから連れ出して
あなたのいないところへ
愛を確かめるたび悲しくなるの
あなたのやさしさ愛さえも
....
あなたの声が聴きたい
かつて私を魅了した神秘的なあの{ルビ詩=うた}を
あなたの声を聴かせて
そしてまた私を夢の世界へ{ルビ誘=いざな}って
あなたの声は
私の梢を揺らす一陣の風
あな ....
なかなか歩かなかった
かいちゃんが
とうとう歩き始めた
まだよちよちだけど
少しずつ歩く距離ものびて
もう少し歩くのが上手になったら
まあたらしいくつをはいて
お外をいっしょに散 ....
あの頃は誰もが夢を見てた
遠い未来に憧れて
恋に恋していた
だけど今ひとりきり
支えてくれる人もないまま
ただ後ろを振り返らないように
前を向いて歩くだけ
やさしさにかえりたい
素直な ....
この手に触れてはいけない
この手は世界をつかむ手だ
この手は大きなことを成し遂げる手だ
おまえを抱きしめるためにあるんじゃない
この手に触れてはいけない
この手に触れてはいけない
この ....
春は黄色いバスに乗ってやって来る
嬉しそうな顔
不安そうな顔
いろんな笑顔を乗せて
春は黄色いバスに乗ってやって来る
わくわくするね
どきどきするね
もうすぐ春がやって来るよ
....
夜は海
街も時間も
何もかも飲み込んでしまう
私の体も海の底
静かに息をしている
夜空の星たちは海に沈んだ金貨
海賊たちに盗まれぬよう
あんなに高いところにある
ああ もうすぐ夜明けだ ....
オレンジ色に染まる公園で
僕はひとりかくれんぼうをする
ぞうさんのすべり台の上で
数を百までかぞえても
僕を探しに来る子はだあれもいない
風が気まぐれに揺らすぶらんこの
長くのびた ....
ひとひら手のひらに舞い落ちる雪
触れたら溶けて消えるはかない命
かたくなな君の心を溶かすために
僕は幾夜も眠れぬ夜を過ごした
その冷たいまなざしはまるで雪姫
誰も愛することはない
....
雨の降る日は絵の具の匂い
絵描きも今日はお休みさ
いろんな絵の具で塗った世界も
雨がみんな落としてしまう
雨の降る日は絵の具の匂い
空も街も灰色さ
ちょっぴり悲しい色だけど
雨はみん ....
こわいのです
この果てしない草の海が
どこまで行っても地平線しか見えて来ない
この世界が私はこわいのです
風がびょうびょうと吹き荒れる草原のただなかで
私はひとり立ちすくんでいます
絡 ....
真夜中の鳥が鳴く薄汚れた館で
誰かが歌を歌っている
それは私を{ルビ誘=いざな}うような
甘く悲しい声
その声に導かれるまま扉を開くと
どこまでも深い青が広がっていた
闇夜は海のように ....
Happiness
ひとつくちずさめば
あなたの笑顔のように
すべてがキラキラね
Loneliness
ひとつくちにふくめば
あたしの瞳のように
すべてがブルーになる
Addr ....
私の想いは届かない
どんなに胸を焦がしても
あなたは私に気付かない
あなたの前を行ったり来たり
私は哀れな{ルビ自動人形=オートマタ}
涙さえも流せずに
くるくる踊る道化者
....
あきらめました
あなたのことはもう
あきらめました
あなたのために燃やす炎は
もうどこにもないのです
私の前には荒涼とした冬野が
どこまでも広がっているばかり
ここにはあなたの影も
....
雪の中で私は言葉を失う
ただ無垢の白だけが広がり
心の底から静寂となる
絶えず美しい音楽が
私の耳元にほのかに聞こえ
たゆまない白の乱舞の中で
軽やかな旋律だけを繰り返す
どこか ....
パピヨン
七色の翅を震わせ
夢から夢へ
月の花園で白百合の露を吸い
ひらと空の彼方へ
星になる
夢の欠片を残して
パピヨン
私の夢に舞い降りて
花から花へ
星の野原でやさしい{ ....
かいちゃんはくつしたが大嫌い
はかせても はかせても
脱いでしまう
そんなにくつした嫌かなあ
確かに裸足は気持ちいいけど
今は冬
君のあんよが真っ赤なのを
ママは見るにしのびないんだ ....
1 2 3 4 5 6 7 8
0.41sec.